表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/21

19 敵の正体(危機)

登場人物

グロウ:男主人公。剣の国ブライダの魔法戦士。

オニクス:元魔王軍のダークエルフ。グロウに敗れて従者となる。

レイ:グロウがかつて所属していた冒険者パーティの魔術師。

 ――湖のほとり――



 オニクスは山道を歩いて湖に来た。

 途中でほとりの半分以上を囲む森へ入り、木陰から湖を窺いつつ移動する。

 その方法は正解だった。漁師が小舟を停めてある桟橋の側に、巨大なワニが上陸している。その背には人が何人も乗れるカゴがあり、ワニの周囲にはゴブリンやオークが何匹もいた。

 それらに何やら指示を出している人間が()()。武装した戦士とローブを着た魔術師だ。

 そして魔物どもが装備している鎧を見て、オニクスは内心で毒づく。


(新魔王軍の支給品! そうか……俺達が蹴散らされたので、この地の偵察に来たのか)


 しかし数は10程度。壊滅した一軍団の報復には少なすぎる。


(あくまで偵察、本腰を入れて戦う気は無いらしい。ならいっそ、グロウ様の強さをなんとか伝えて怖がらせるという手もあるが……)


 重要な地点でなければ、危険度が高いとわかればここに寄り付かなくなるかもしれない。

 しかしそうならなかった場合は――


(強敵を討ち取るための策を練って、厄介な計略をしかけてくる可能性もあるな。やはり掃討しておくのが正解か)


 そこまで考え、オニクスは迷った。

 慎重に行くなら村へ戻ってグロウに報告するべきだろう。

 しかし不意打ちを仕掛ければオニクス単独でも十分に勝てそうな連中だ。


 強さがとかく尊ばれるのが魔物の世界。ダークエルフのオニクスには、弱い敵を前に臆病な態度をとりたくない……という考えが生じた。

 グロウ相手に戦わずして降伏したという事も、実力を見せる機会があれば見せたいという欲求に繋がったのかもしれない。


(最初に範囲攻撃の呪文を叩き込んで、雑魚を殲滅してしまえば……)


 戦い方を考え、木陰で機を窺う。しかしオニクスは盗賊や暗殺者ではなく、隠密や潜伏がさほど上手いわけではなかった。物陰にいる間も微動だにしないというわけにはいかない。


 集団を観察するうちに木の枝を踏んでしまい、パキリと乾いた音を立てた。

 何匹もいれば小さな物音を聞きつける奴もいる。


「おい誰ダ!?」


 ゴブリンの1匹が甲高い声で喚き、武器を手にずかずか近づいてきた。その後ろには他のオブリンやオークどもも。


(ええい、ままよ!)


 オニクスは相手が側に来る前に火球(ファイアーボール)を手の中に作り出し、木陰から放った。

 飛来した火球(ファイアーボール)が爆発し、ゴブリンとオークを何匹か巻き込む。


「「「ウギャー!」」」


 断末魔をあげて吹っ飛ぶ下級の魔物兵。破壊の呪文により周囲の細い枝葉が焼き払われ、オニクスの姿が露わになった。


「ダークエルフ、だとう? なぜこんな所に?」


 抜刀したダークエルフの魔法戦士を見て驚く人間の魔術師。

 側にいる人間の戦士が「むう?」と唸った。


「もしかして……お前、新魔王軍の砦建築を担当してたオニクスって奴じゃないのか」


 そう問われてオニクスは気まずそうに目を逸らす。


「……知らん。人違いだろう。ダークエルフなんて何人もいるからな」

「人里にはいねーだろ! しかも俺達を攻撃するって事は人類側についたんじゃねーのか!」


 それを聞いて内心で舌打ちするオニクス。


(しまった! 味方のフリをして近づけば、不意打ちのチャンスもあったかもしれん……!)


 オニクスが後悔していると、人間の戦士に変化が生じた。

 体が一回り膨らみ、全身が剛毛で覆われ、顔が獣に変化する。戦士は人間ではなく獣人――熊獣人(ワーベア)だったのだ。


「そいつを叩きのめせ! 知っている事を吐かせるんだ!」


 そう叫んで熊獣人(ワーベア)の戦士はオニクスへ突撃してくる。ゴブリンやオークの生き残りもそれに続いて野蛮な声をあげて武器を振り上げ、オニクスに殺到した。



 湖畔の森で激しい戦闘が始まった。

 戦いの中、オニクスは自分の迂闊さを叱咤する。こんな所にさほど強い魔物はこないだろうとタカをくくってはいたが、それは油断で楽観だった。

 敵の総合戦力は自分とほぼ五分である……下手をすれば自分が不利か。


 熊獣人(ワーベア)の戦士は剛腕で斧を振り回してくる。その技量はオニクスの剣技とほぼ互角だった。

 とはいえ相手は純粋な戦士、オニクスは魔法戦士だ。武芸の技量で互角なら、魔法があるぶんオニクスが(まさ)る。

 しかし下級とはいえ魔物兵どもがいて、ゴブリンやオークが横から攻撃を繰り出してくる。頭数があるので攻撃は絶え間なく、常に対処を要求されていた。不意打ちに成功していれば一掃できていたのだが、それに失敗したのが痛い。

 そして敵の魔術師……レベルとしては中堅程度だが、後衛から矢継ぎ早に攻撃呪文を飛ばしてくる。この状況では十分に脅威だ。自分を守るワニの背から降りず、強引に近寄っても容易く討ち取れそうにはなかった。


 その魔術師がかつてグロウと同じパーティにいたレイだという事は、オニクスが知る(よし)の無い話だ。


(やむをえん。無様ではあるが……)


 敵と切り結びながら、オニクスは【幻覚(イリュージョン)】の呪文を唱える。下級の、動かない映像を作るだけの物を。

 呪文が完成し、森の上空にたった3つの文字が映し出された。


『SOS』と。

素直に「助けて」でもいいかも知れないが、人語が読める奴が敵にいたら救援要請した事が即バレしてしまうからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ