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15 敵指揮官の処分(温情)

登場人物

グロウ:男主人公。剣の国ブライダの魔法戦士。

ユゼス:グロウが領主を勤めるスロウ村の神官。

 ――村外れの空き家――



 そこは牢屋代わりに使われており、捕虜のダークエルフがいる。

 その日、グロウはそこへ、数名の村人と共に尋問のためにやってきた。


「大人しくしているようだな」

「一応な。俺などいつ逃げても構わんという意志なら感じているが」


 グロウにそう答えるダークエルフ。

 彼は武装こそ解除されているが、その武具はなんと家の隅に樽へ突っ込まれた状態で蓋もせずに置かれている。

 ダークエルフは縄で縛られているが、胴体と家の柱を繋いであるだけで、手も足も自由である。

 これにより、戸の隙間から差し入れされたパンをとって食べる事もできたし、家の隅にある便壺で用を足す事も、隙間を開けられた窓から中身を捨てる事も、その隙間から手を伸ばして尻をふく葉っぱを近くの木から取る事もできた。

 戸も窓も隙間しか開かないように細工はしてあるものの、攻撃呪文の1つでも使えるなら、破って出る事は容易だ。


 監禁しようという意思に恐ろしく乏しい状況だが、村人達が誰も皆、魔物の側に長時間いたくないからこうなっている。

 村人達は、もしこのダークエルフが脱走しても圧倒的に力の差のある領主様の村からは逃げるしかないだろう……とタカをくくり、むしろさっさとどこかへ消えて欲しいとさえ思っていた。


 そんなダークエルフに話しかけるグロウ。


「お前の言う通り、建造途中の砦らしい物はあった。無人になっていたが」


 ダークエルフが砦の事を話したので偵察に行ってみたが、基礎ができたあたりで放置されており、誰一人いなかったのだ。

 ダークエルフは肩を(すく)める。


「そりゃ兵士が全滅してしまえば作業員も逃げるさ。今頃は本部に報告している頃か」

「……新たに現れた魔王という奴か」


 苦々しく呟く、村の神官ユゼス。

 ダークエルフはより大きな魔物集団に属していると自白した。その集団の首領こそが、次の時代の魔王を名乗る存在なのだという。


「正体はまだ公表されていない。恐らく人類へ宣戦布告する時に明かすのだろう。既に地下で勢力を築いているので、俺のいた里は一早く傘下に入ったが」


 ダークエルフのその話を聞いてグロウは訊いた。


「お前の里はどこだ?」

「人類の勢力範囲で言うと別の国になる。警戒には及ばん。詳しい位置は流石に話せんな」

「ならば魔王軍の拠点は?」

「俺が知っているのはネメア山の地下ダンジョンだ。俺はそこで新魔王軍12真将の一人から指令を受けてここへ砦の建造に来た。他の拠点や魔王本人の住居は、行った事もないし知らん」


 ネメア山は隣国セレスの辺境だ。この村から近いわけではないが、だからこそ前線基地を造りたかったのかもしれない。

 無論、ダークエルフが本当の事だけを喋っていると断定はできないが……連れていた魔物の数や武装度、砦を建築しようとしていた資材や資金がある事から考えて、大きな組織が後ろにいる事は信じる事ができた。


 グロウは腕組みして悩む。


(何やらキナ臭くなってきた……こちとら新妻とどう歩み寄っていくかに専念したいのになぁ。そのためにも、さて、この件をどうしたものか)


 しばし考え、グロウはダークエルフに提案する。


「この情報を、人間の国の有力者相手に伝えたい。共に来て知る事全てを自ら直接話すなら、ここから出してやれるが……」


 だがそれを聞くとダークエルフは溜息をつく。


「人類側国家の都市へ俺を連れて行くと? 俺は話の後で処刑されるだけだろう」


 この世界のダークエルフはれっきとした人類の敵である。やっている事は他の魔物と同じだし、人類からの扱いも等しい。

 それはグロウとてわかってはいるが……


「とはいえ現時点では突飛な話だから、お前の証言も欲しい。だが情報を吐かせるだけ吐かせてから用済みになれば始末する……というのは俺の好きなやり方じゃない」


 ここら辺の「やり方」には前世が地球の日本人である事も影響していた。

 この世界の冒険者には、倒した魔物に情報を吐かせてから始末する者も少なくないし、それを批難する奴は滅多にいない。

 そんなグロウは剣を投げ渡した。ダークエルフの持っていた物ではない、新しい剣を。


「俺の家来になって仕えろ。それなら処刑を拒む言い訳も立つ」

「「「ええっ!?」」」


 驚きの声をあげたのは共に来た村人達だ。そろそろ処刑するのかと思っていたのだが、まさか魔物の命を救うとは予想外。

 ダークエルフ本人も意外な提案に呆然とする。それでもやがて言われた事を理解し、戸惑いながら聞き返した。


「えらく寛容だな。お前も他の人間に嫌がられるかもしれないぞ。そこの村人達も明らかに困っているが。それに……俺の同胞や一族を裏切る提案でもある」

「こちらの事は気にするな。まぁお前が裏切り者になるという指摘はその通りだ。だから無理にとは言わん。だが何でもかんでもお前の都合良いようにはしてやれんのだ」


 頭を掻くグロウを前に、ダークエルフは「フッ」と笑った。


「それはそうだ。となると……断ればここで処刑か。さりとて一軍を失う大敗を喫した以上、もし故郷に逃げ帰れても間違いなく責任を問われて処刑。そんな俺が生きていたければ、従うより他に無さそうだ。今さら負け犬がプライドに拘るのもおかしな話か」


 新たな剣を拾うダークエルフ。

 村人達は成り行きが信じられず、互いに顔を見合わせていた。

 そんな中、ユゼスは「コホン」と咳払いすると、自らに言って聞かせるかのように発言した。


「グロウ殿のおかげで村は被害無く救われたのだ。その意思に、助けられた我らが余計な事は言えまいよ」



 このような成り行きで、ダークエルフを捕えていた空き家が、そのままグロウの従者・名はオニクスの家となった。

主人公が男一人ならこのダークエルフも女にして主人公にメロメロになる展開にすべきだったんだろうが、新婚でいきなり愛人とか邪魔にも程があるので男にしておいた。

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