13 かつての仕事仲間の苦境(仕方なし)
登場人物
グロウ:男主人公。剣の国ブライダの魔法戦士。
シグルド:グロウがかつて所属していた冒険者パーティの戦士。
ディエン:グロウがかつて所属していた冒険者パーティの盗賊。
レイ:グロウがかつて所属していた冒険者パーティの魔術師。
グロウを追い出した酒場で、傷つき疲労困憊した【ユグドラシル】のメンバーが酒を飲んでいた。
メンバーを代えてから魔物討伐の依頼を一つ受けたのだが、失敗して逃げ帰って来たのである。
戦士のシグルドが乱暴に酒瓶をテーブルに置いた。
「クソッ! なんでこうも上手くいかねぇ!」
「なーんかツキが無かったよなー」
革鎧の破れを気にしながら言う盗賊のディエン。
なんとか討伐対象のブレイズパイソンまで辿り着いたものの、そこまでの障害や戦闘で疲弊しており、命からがら逃げ帰ってきたのだ。
「この稼業、どうしても運が絡む事はありますからね」
魔術師のレイが肩を落として言うと、新メンバーの女僧侶ファムは疑いの眼差しを他の三人へ向けた。
「運だけ? 本当に?」
「おいおい、どういう意味だよ? まさか俺達の実力を疑っているのか!」
声を荒げるシグルド。
だがファムは怯まずに言い返す。
「能力はレベル相応なのかもしれないけど、なんとなく背伸びしている感じがあるわ。このレベルだとかなりギリギリ……少しのミスで失敗する魔物の討伐を迷いなく選んでいたけど」
「今までならなんとかなったんだよ」
ディエンは顔を顰めてそう漏らした。
ファムはそれに頭を振る。
「慎重にいけばそうかもしれないけど、なんだか雑だし」
今度は彼女へレイが険悪な目を向けた。
「感情論でないなら、具体的に指摘してもらえますかね。できるならですが」
「じゃあ言うけど。戦闘中のフォーメーションがおかしいでしょ? 4人いるのに前衛は一人だからそこに攻撃が集中しがち、なのに特に防御重視の装備でもなし。敵が多いと容易に後ろへ流れてくるけど……」
そこまで一気に言うと、ファムはディエンへと振り返る。
「盗賊は射撃で戦うスタイルなんで、接近されると対処に一苦労。それどころか逃げ回って、私が敵に襲われた場面もあったわ」
そしてシグルドに指摘した。
「なんて言うか……メンバーが変わったのに戦い方を合わせてないというか? 前衛で敵を半分受け持って回復もしてくれる人がいる前提のままよね?」
レイが苛々と言い返す。
「私達のせいにばかりしていますが、僧侶もそれなりに近接戦闘ができる装備が可能な筈でしょう?」
それにファムはまた頭を振った。
「そこら辺はスタイル次第よ。私は回復魔術重視で、重装備で戦うスキルは無いわ。シグルドに声をかけられた時、そこも説明はした筈よ」
「ああ。前衛が俺一人でも、専業の回復魔法ならダメージを消してくれると期待してたんだよ。でも中級の回復魔法ってあんなもんなのか? 初級とそう変わらないじゃねぇか」
不満を露わにするシグルド、
それにファムは驚く。
「えっ……このレベル帯の僧侶としてはそれなり以上の自信はあるんだけど。もしかして……グロウさんだっけ、追い出された人は回復魔法の威力を上げる装備でも持ってたんじゃないの?」
(ヤロウ、魔剣のバフってのはアイツにしか効果が無いのかよ! 話が違うじゃねぇか、騙したな!)
シグルドはそう決めつけた。
結果的にはその通りの効果だったが、グロウ本人もわかっていなかったので仕方の無い事ではある。
だがそれを悪意による物だと、この時のシグルドは決めつけた。己が相手を認めていなかった事は棚上げしたままで。
ファムは席を立つ。
「私も命は惜しいから、このパーティではやっていけないわ。さようなら」
女僧侶は自分の代金をテーブルに置くと、もはや振り向きもせずに去って行った。
冒険者には命がけの仕事も多い。よって入ったばかりのパーティが駄目だと判断すれば、早く切り替えていく者もまた多いのだ。
「クソッ!」
苛々しながらテーブルを蹴飛ばすシグルド。酒のグラスがやかましく倒れた。
近くのテーブルの冒険者が怒鳴る。
「うるせーぞ!」
「なんだと!? 誰に言ってやがる!」
シグルドは怒鳴った冒険者へ怒鳴り返し、肩をいからせて立ち上がった。
相手も青筋を浮かべて立ち上がる。
腕っぷしで食っていく仕事ゆえ、荒っぽい者も多いのだ。
ただ、【ユグドラシル】は3人だったのに、相手パーティは4人だった。
結局、叩きのめされて酒場から蹴りだされたのは、数も少なく疲労もしていた【ユグドラシル】だった。
通りに大の字になって転がり、シグルドは歯軋りする。
(チクショウ……魔剣を手に入れて俺は強くなったのに。なんでこうも上手くいかねぇ?)
そんな無様な【ユグドラシル】に声をかける者があった。
「上手くいっていないようね?」
「なんだと!?」
見上げるシグルド。
露出の多い赤いドレスの女だ。水商売だろうか?
女は蠱惑的な笑顔を浮かべた。
「傭兵や冒険者から、見所のある人を集めているんだけど。話に興味はあるかしら?」
能力さえランクに不釣り合い、という設定をちょくちょく見かけるので、こいつらはステータス的にはレベル相応という事にしておいた。




