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11 激闘(一掃)

登場人物

グロウ:男主人公。剣の国ブライダの魔法戦士。

エレナ:女主人公。聖獣の国セレスの元公爵家令嬢。

ユゼス:グロウが領主を勤めるスロウ村の神官。

 村の神官ユゼスは一人で見張り(やぐら)に登っていた。彼は村のすぐ外で、領主が放った魔術を目にする。


「ゲーッ! あれは雷撃系の高等呪文【エレクトロサンダー】! それにしてもあの効果範囲と威力は!?」



 グロウが一条の電光を空へ放つと、空から数条の雷撃が返って来て敵の頭上へ降り注いだ。着弾地点にいた魔物達がまとめて吹き飛ばされる。矢をつがえていた物も、その後ろで盾を構えていた物も、その側で突撃の命令を待っていた物も。

 一発の呪文で百を超える魔物兵の過半数が致命傷を受けたのだ。

 戦闘可能な兵の半減……それは部隊としては壊滅と言っていい損害である。



「領主殿は自分のレベルを50だと言っておられたが、これでその程度の筈が無い。失礼ながら……」


 ユゼスは呪文を唱えた。【スキャニング】……調査系呪文の一つであり、視界内の対象がもつレベルやステータスを詳しく映し出す魔術である。



 この世界にもレベルやステータスの概念はある。

 だがそれは内在するパワーを特定規格に基づいて計測した数値で、その規格は人類が役立てるために自分達で作った物だ。

 よって何か叫べば宙に浮き出る……という事はなく、呪文やその効果を持つ道具を使う事で表示される数値なのである。


 冒険者ギルドに行けばステータス調査のアイテムも必ず有るが、詳細に調べれば多少の時間が要る。また利用者が常にいるので待ち時間もある。

 呪文で調べるといちいちMPを消費する。

 よって大半の冒険者は新たなアイテムやスキルを手に入れた時のみ詳しく調べ、普段は簡易アイテムや呪文で手っ取り早く「現在レベル」を調べるだけで済ます事が多い。



 さて、神官の側に幻のスクリーンが生じる。そこに書かれたグロウのレベルは――


「500ですと! 本人の言っていた値の10倍? 一体なぜ……ああ! もしや!」


 グロウの魔剣【エレクトラー】は持ち主のレベルに応じて強化される、レベルリンク能力がある。

 その剣に何かの力を注ぎ込んでいた飛竜(ワイバーン)……あれで剣が強化されたなら、逆に持ち主に影響を及ぼし、剣の強化に応じてレベルが上がったのでは?

 そんな現象など、神官ユゼスは今まで見た事など無かったが。



 さらにユゼスは列記されたステータスに違和感を覚える。

 strength(筋力)Vitality(生命力)、|Intelligence《知力》、Dexterity(器用度)、etc……その全てが1000前後という凄まじい高数値だ。

 しかしどのステータスも()()()は250から350程度という、高いには高いがレベル500なら納得はできる値が表示されている。

 問題は全ての能力値に「+699」という補正値が発生しており、結果的に1000前後にまで高まっているのである。


 そしてユゼスは気づいた。見慣れた数種の項目の一番端に、見た事が無い数値が……Cosmossenseという能力値が、1つ余分に表示されているのだ。

 そしてその能力値は「699」。


「未知のステータスが存在するだと!? まさか、これこそ魔剣【エレクトラー】が与えている力?」


 人間が持つ能力は本来多岐に渡るが、細かい事を言い出すとキリが無い。この世界で重視される能力に絞った上で、それらを数種類に統合、結果を表記する……それがこの世界のステータスだ。

 見知らぬ能力値が存在するなら、一般的な人間には存在しないパワーだということ。

 グロウにそれが存在するなら魔剣から供給された物だとしか考えられなかった。そしてその能力値が他の全ての能力値に補正値として加算されているのである。それにより全能力値が激増し……グロウのレベル500は他者の500を大きく上回っていた。


 ユゼスは戦慄した。


「恐ろしい強さに『規格外』という表現を使う事はあるが……本当の意味で『規格の外』にいるとは。やはりあの飛竜(ワイバーン)はセレス国伝説の聖獣だったのだろう」



 ――戦場――



 隊長のダークエルフは恐怖で取り乱していた。


「信じられん……こんな事があるわけがない!」


 眼前に広がるのはたった一騎だけが立つ無人の()

 立っているのは一振りの魔剣を握った騎士、そしてその乗馬。

 騎馬の周囲には無数の屍。最初の雷撃で百を超える魔物兵の過半数が倒され、残りの半数は恐れを為して逃げた。

 それでも残る20以上の魔物兵が騎士へ襲い掛かったのだが……一体一太刀。ことごとく一撃で倒され、逆に魔物兵の攻撃は全て避けられ、防がれ、斬り払われて掠りもしなかった。速度に、力に、技量に、全てにおいて差が絶対的過ぎたのだ。


 たった一人に百を超える兵士が蹴散らされる。様々な魔物や魔術、超自然的存在のあるこの世界では全くあり得ない事ではない。

 だがこんな田舎に何の兆候もなく、そんな超存在が潜んでいるとは?


 いや、兆候はあった。

 謎のドラゴンが村に降り立ったからこそ来たのである。

 この異常な騎士が何か関係ある事は間違いない。だがどうやって調べればいいというのか。

 ダークエルフ隊長は悟っていた。戦えば死、逃げても死。実力差が有り過ぎてどうにもできない、と。

 だからどっちを選ぶ事もできず、剣は抜いているものの、動く事ができなかった。

 すると……


「やる気をなくしたなら降伏すればどうだ?」


 騎士が馬上からそう言ってきたではないか。

 魔物兵を率いていた隊長である。降参したからといって命を保証されるわけもないが……絶対に死ぬ道とでは選択肢にはならない。

 ダークエルフは覚悟と諦め半分ずつで剣を捨てた。


「降伏しよう」


 こうしてスロウ村は守られた。

 損害はゼロ。

規格外という単語が近年のライトノベルでよく使われているようなので、自分も使おうと考えた。

どんな能力なら規格外になるだろうか?と考えてこうなった。

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