6 重鎮たちの反乱と魔王の「仕分け」3
「アステリオン国への島流しだなんて、あちらの労働人口を増やして差し上げるなんて、貴方って本当にお優しいのね。でもね、この間のように護送中に『地震があった』なーんて、『ハンスとかいう謎の文官』が急に出てきて、書きあげた書類一枚だけで、貴方に逃げられては困るわね。そうでしょ?ユージン」
「……え?……」
レティシアの反応はことユージンに対してだけは敏感である。
「この者たちは、アステリオンに送るのではなく、――そうねえ……ちょうど今、貴方が再編しかけている『国境鉱山』の最下層で、ガルディアからふんだくる予定の賠償金を掘り出すための労働員として有効活用しましょう。いい考えだと思いませんこと?」
「は?」
「おお、ほっほっほ!……流石はレティシア様。ユージン閣下、これで護送の手間も省けましたな!閣下はこれで、明日からもじっくりとロドニアの財務監査に集中していただけますじゃて!」
モランが声高々に憲兵を呼び、イエスマンたち42名を「鉱山へ連行せよ!」と引きずっていく。
「あ、いや、待てモラン!鉱山の労務管理はコストが掛かる……アステリオンに送った方が国際親善の観点からも―――俺が責任を持ってだな――」
「うふふ……ダメよ、ユージン。貴方の考えていることなんて(実家への脱出)全部お見通しなんだから」
レティシアの可愛らしい満面の笑みと塞がれてゆく退路。アステリオンへの島流しに便乗しようとしたユージンの企みは脆くも崩れ去ったのだった。
さて、ロドニアの重鎮たちを締め上げことによって、彼らが提示した杜撰な書類から、芋づる式に「不審な使途不明金」のデータが浮き彫りになった。その終着点は言うまでもなく、オーギュスト(愛人の為)の秘密口座である。
その日はやってきた。
ユージンは先日の脱出失敗の件もあり、死んだ魚のような目で、オーギュストの部屋をノックもせずに蹴り開けた。
『帰れない怒り』をただ、このタヌキにぶつけているようなものだ。
「オーギュスト様。大変効率的なお報せです。重鎮たちの書類を精査したところ、過去五年間にわたり、年間3000万クラン(約30億円)が『幽霊兵士の維持費』として消えていました。貴方のお小遣いとしては看過できかねます__さあ、全額、今すぐ国庫に返還するか、今ここで国家反逆罪として仕分け(物理)されるか、即答してください。
「ひっ、ひぇぇぇぇっ!……ユージン君、あれは必要経費、いや、わしの命より大事な社交費……」
ユージンは腰の剣を構える。勿論お付きの者たちは、とっくの昔に悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らすように部屋から飛び出していた。
「三秒待ちます。三ッ!!」
「返すっ!返すからそのゼノスみたいな目でこっちをみるなぁぁぁっ!!」
こうして、国費を私物化していたオーギュストの財布まで完璧に仕分けされたのであった。
はっきりいって、これはもう八つ当たり??




