5 重鎮たちの反乱と魔王の「仕分け」2
「はっはっはっ!まことに素晴らしい仕分けにございますぞ、ユージン閣下!」
後ろに控えていた宰相モランが待ってましたとばかりに、邪悪な禿頭を光らせて前に出た。
「おい、憲兵隊!ここに居る不良債権(老害貴族)どもを今すぐ連行なされ!速やかに隠し口座の資産調査、および国家反逆罪の調査書作成に入りますじゃて!ふははははっ!」
「まっ、待ってくれ!助けて下され、レッ……レティシア様―――っ!」
貴族たちが縋るように見上げた先には……。
玉座の傍らで、美しい髪を揺らしながら現れたレティシア王女は、ひきたてられていく罪人たちなど一瞥もくれず、ただうっとりとした至福の笑みを浮かべてユージンを見つめていた。
(うふふ……やっぱり最高だわ。剣を持たせても、ペンを持たせても貴方は世界で一番格好いい『私の魔王様』ね。ロドニアの膿も、これですっきりするわね)
例の約束通り、ガムテープを口に張り付けたように一言も彼女は話さなかった。モランは彼女の態度に満足し、残りの文官たちを睨みつけた。
「――それから、こちらの文官一同ですが……」
モランが冷酷な手つきで突き出したのは、かつてオーギュスト陛下が自らの権力を誇示するためだけに宮廷に集められた、無能なイエスマンたちの名簿だった。彼らは主人の顔色を伺い「御意」「さすがにございます」と太鼓持ちをするしか能のない、いわば組織の完全な余剰人員である。
(……『ごもっともです野郎たち』……ふん、こいつらは完全にアウトだな。実務能力ゼロ、長年蓄積された不正の片棒を担ぐ才能だけはある。ロドニアの宮廷費からこいつらの人件費は今後一切――)
と数字を弾くユージンにふとあるプランが浮かんだ。
(待てよ?……こいつらをロドニアの地下牢にぶち込めば、それだけで維持費という名の無駄な固定費が永続的に発生する。……ならば、いっそのこと『重大な国家規律違反』としてだな、辺境のアステリオンにでも国外追放として島流しに処してはどうだろう……)
閃きが確信に変わる。ユージンの目が、この日の一番の輝き(希望)を帯びる。
(そうだ!こいつらの身柄をアステリオンへ島流しするという名目を作れば、俺自身が『護送責任者』として、堂々とロドニアを出国できる!うまくやれば、そのままアステリオンでガストンやバザル達に、こいつらを押し付けて、どさくさに紛れて俺は表舞台から消える……『あれ』から逃げるルートにも使えそうだ!よし!)
ユージンはいい案を思いついたと、わざとらしく冷徹な声を張り上げた。
「モラン、こいつらをロドニアに置いておく価値はない。直ちに財産没収の上、辺境地アステリオンへ―――」
「まあ!なんて素晴らしい情けなのかしら、ユージン」
背後からレティシアが、ユージンの肩にトントンと指を這わせて、その耳元で悪魔のように囁いた。




