表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

13 聴取

 私の感想なんてどうでもいいので続きを読もう



 ---

 中央署に到着して受付と思われるカウンターに向かう。近くにいた制服の警察官の方が私に気付き立ち上がってカウンターに来てくれたので、刑事さんの名刺を出しながら自分の名前を言った。

「そちらのソファーでおかけになってお待ち下さい。」と言われソファーに座った。

 ほんの少し待っただけで、スーツ姿の男性二人が私の方へ近づいてきた。

「皐さんですね。」

「はい。」

「連絡を頂いた服部です。遠くまでありがとうございます。」名刺に書いてあった名前を名乗られた。

「はい。」

「こちらへどうぞ。」エレベーターがある方を手で指し示されたので、その方向へ歩き始めた。

 エレベーターに三人で乗り上の階へ、ドアが開きさらに奥へ、扉がいくつかあるのだが、その中のひとつの部屋へ服部刑事さんが入り、そして私も招き入れられた。

 テレビの刑事ドラマで見るような取調室だ。

 奥に机と椅子がふたつ。入ってすぐ右側にも机と椅子がひとつ。

 ただ、テレビと違うのは椅子が奥側と手前ではなく、横向きにあって、入口側の机は入口側の壁に着けてあった。

 入口側の机が反対となる方側へ座るように促され、静かに座った。

 向かいには服部です。と名乗られた刑事さんが、入口側の机にはもう一人の刑事さんが座った。

「〇〇〇〇が逮捕されたのをご存じですか?」

「はい。昨日ニュースで見ました。」

「そうですか、●●●●さんもご存じですか?」

「??? いえ、知りません。」聞き覚えのない女性の名前だった

「そうですか。では写真を見ていただけますか?」

「はい・・・」

「こちらです、ご存じの方ではないですか?」


 あ!彼と一緒に腕を組んで高級ブランド店から出てきて、そしてあの部屋から出てきて姉だと私に説明された女性だ。


「〇〇さんからお姉さんだと聞いていた人です。名前も聞いていなくて、見かけたのは数回です。」

「そうですか。()()()()()()聞いていたんですね。」

「はい。姉と一緒に住むって言っていたし、部屋から出て来たのを一度だけ見たことがあるので。」

「そうですか、そのアパートについてもお聞きしたいんです。」


 なぜ私がこの警察署へ来るように言われたのか察しがついた。


「私は、その部屋の前でこの方と出くわしたのを最後に〇〇さんとは別れたんです。」

「別れた?それはいつでしたか?」

「2月です。日にちまではっきりとは…」

「間違いないですか?半年以上前ですが。」

「はい。バレンタイン前と覚えています。それからは一度も会っていません。」

「そうですか。」


「では次に、その中に入られたことはありますか?」


 やっぱり。その質問がくるだろうとは予想していた。


「あります。数回ですが行ったことがあります。」

「中の間取りは覚えてらっしゃいますか?」

「はい。玄関入って左手にお風呂と洗面所、トイレがあって、その奥にダイニングキッチンがあって、奥にドアがふたつあって部屋が並んでいました。」

「どちらの部屋にも入られたことはありますか?」

「左手にあるのが彼の部屋だと言われて、そちらの方だけですが、右手の部屋のドアが少し開いていて中を見たことはありますが入ったことはないです。」

「そうですか、申し訳ないのですが、指紋の採取にご協力を願えますか?」


 えっ指紋って・・・


「私、何も悪い事に身に覚えがないのですけど・・・」

「申し訳ないですね、捜査にご協力願えませんか?」


 この事件に何も関係なくても部屋に入ったことがあるのだから私の指紋が採取されていてもおかしくないのか・・・

 この事件に何も関係ないのだから拒む理由もない。

 逆に本当に関係がないってちゃんと証明しなきゃ。


「わかりました。」


 黒のスタンプ台と、四角い枠が書いてある紙が机に出された。


 服部刑事さんから、指の横の指紋がある部分からスタンプ台に着ける動作と、四角い枠に入るように横からゆっくりと押す動作の見本を見せられた。


 私の全ての指紋の採取が行われた。

 ウェットティッシュとティッシュを出してもらい、指の黒いインクを落とした。


 そこからは彼との出会いから別れるまでの話を重なる部分があるけど全部話した。


 あの高級ブランド店から出てくる二人を見てちょっと不振に思った事。

 部屋の間取り、調度品、彼の部屋にあった物、ドアが開いていて見えたお姉さんと聞いていた人の部屋の中にはダブルベッドが置いてあった事も。

 部屋の前で出くわしても姉だと言われ、姉弟じゃないないとすぐに分かったから、別れると言いそこから逃げ出した事も。


「そうですか。なぜすぐに別れると決めれたんですか?」

「え? 二股をかけられて騙されてるって分かって付き合い続けるっておかしくないですか?」

「そうですね。でも、揉めませんでしたか?」

「揉めてません!すぐに逃げ出したんですから。」

「あーそうでしたね。」


 服部刑事さんは少し考えてから

「何度も聞いてすみません。その部屋に何回くらい行かれたのか覚えてますか?」

「回数なんて覚えていませんが、週に1回くらいで数ヶ月後には別れたのでそんなに多くはないと思います。」

「その部屋で調理をされたことはありますか?」

「調理ですか?」

「ええ、何か料理を作ったことはありませんか?」

「あります、サラダとかお味噌汁とかですけど。」

「そうですか。包丁はお使いになられましたか?」

「使いました。」

「どんな包丁でしたか?」


 やだ、包丁を聞かれるって、それでどうにかしたってこと?


「その包丁が関係あるのですか?」

「いえ、参考までにお聞きしたくて。」


 包丁は数回使ったけど、普通によくある包丁だから、そんなに覚えていない。


「木の柄で、包丁側が黒い金具があったように覚えています。」

「ありがとうございます。」


 また服部刑事さんが考えてから

「それと、そちらにあった敷物を覚えていらっしゃいますか?」

「え… 敷物ってラグとかですか?」

「そうですね。」

「私が彼にプレゼントした物なら覚えています。」

「ほう。あなたがプレゼントされたのですか。どんなラグですか?」

「黄緑と言うかパステルグリーン。淡い色のものです。」

「淡い色のものですかぁ。毛足はあるものでしたか?」

「毛足は長くはないですがありました。」

「そうですか、毛足がありましたか。」

「ありました。」

「どれくらいの長さの?」

「これくらいの。」指で表現しながら見せた。

「2cmくらいですかね?」

「はい。それくらいですね。」

「そのラグは見ればわかりますか?」

「見ればわかると思います。」

「色が変わっていても見分けられますか?」


 色が変わっていても?

 ピン!ときた。

 ご遺体が包まれていたんだ・・・


「嫌です。見たくありません。」

「そうですよね。いいですよ。」


 また考えてる・・・


「ほかに何かそのラグだと見分ける特徴はないですか?メーカー名とか。」

「あ・・・」

「ん?なにか覚えてみえるんですね。」

「部屋の横幅には大きくて横を切りました。そこを折り曲げて使っていました。」

「切りっぱなしで使っていたんですね。」

「はい。私が切りましたから。」

「ありがとうございます。」


 包んであったって確定だ・・・


「それとこの県内にある※※山ってご存じですか?」

「はい、夜景が見えると有名なので行ったことがあります。」

「そうですか。〇〇とも行かれたことはありますか?」

「あ、はい。〇〇さんは関東出身だと聞いてて、この辺りはあまり知らないって言うので、※※山はこの平野が見えるから私が案内しながらドライブで夜景を見に行きました。」

「そうですか、あなたが道を教えられたんですね。」

「私はまだ免許を持っていないので案内しかできないので。行きたい場所のほとんどは私が教えました。」


 あ・・・ ※※山で遺体が発見されたんだ

 だからこの〇〇県警に呼ばれてるんだ

 私が行き方を教えたから、そこへ持っていったんだ・・・


 また考えてから

「〇〇とは喧嘩したりしませんでしたか?」

「いえ、喧嘩はなかったです。軽い口論はありますけど。」

「喧嘩にならなかったんですか?」

「はい、口論というか話し合いをしました。」

「話し合いで?激高(げっこう)したりしませんでしたか?」

「いえ、全然そんなことは一度もないです。」

「そうですか、話し合いで解決していましたか・・・」


 また考えてる。

「ちょっと失礼な質問ですが、色んなことをよく覚えていらっしゃるようですが、なんでそんなにはっきりと思い出せるのですか?」

「あ、私は・・・ ()()()()なんです。」

()()()()ですか。それは珍しい。そんなに覚えているものですかね?」

「4歳の頃に祖父が亡くなった場面、葬儀の風景がビデオの様に頭の中で再生できるんです。」

「4歳の記憶ですか?」

「はい。その前に祖父が連れて行ってくれた場所も再生できます。」

「そんなに小さかった時のことまで?」

「はい。」

「それはすごいですね。でもそれは昔の事だけではないんですか?」

「昔の事だけではなくて、最近の事も同じです。」

「最近の事もですか?」

「あちらにいらっしゃる刑事さんの服装も覚えています。」

「壁に向いてますが、そうですか、どんな服装でしたか?」


「紺色のスーツで、シャツは白襟で胴の部分は淡いブルーで細いストライプが入っていてネクタイはスーツより少し明るい紺色の無地、タイピンをされていて何かマークがついていたのですが小さくて見えませんでしたが、ベルトにはジバンシーのマークがありました。靴は革の黒色、先は尖っています。」


「うーん。周りをよく見られているんですね。」

「受付に迎えに来られた時に見た映像を再生したんです。」

「そうですか。」

「服部刑事さんのベルトはグッチですよね。服部刑事さんはこの部屋に入ってから一度も席を立たれていないので、その時に見た映像です。」

「ほぉ~これはこれは驚きました。わかりました。ありがとうございます。」


 今もその時の映像を再生させながらこれを書いている。

 良い事も悪い事も思い出そうとすると再生できてしまう。

 嫌な記憶方法だ・・・


 服部刑事さんは部屋から出て行った。


 もう一人の刑事さんは何も話しかけてこられないし、何かずっと書き物をしているからとても静かな部屋だ。


 服部刑事さんが戻ってきた。

「もうこの事件をお分かりだと思いますが、〇〇が●●さんの殺害も認めていまして。もし貴方が〇〇と別れる時に激高して、貴方が犠牲になっていたかも?と思ったらどうですか?」

「え?そんな、激高するとかなんて全くなかったんで思ってもみません。」

「いえ、もしもでいいんです。」

「別れる時も逃げ出したので、もしそこで喧嘩になっていたらって考えたら・・・」


「怖いです・・・」


「そうですか。何も無くて良かったですね。」

「でも、喧嘩にはならなかったと思うので、もしも?だったらの気持ちです。」

「そうですね。お気持ちが聞きたかっただけですので。」

「はい。」

「お聞きしたい事は以上です。ありがとうございました。」

「はい。」


「〇〇はこれから裁判となります、証言を頂くご協力はいただけないですか?」

「嫌です!できません。」

「あなたはこの件に関わっていないようですので、証人としてですが駄目ですか?」

「はい。もう〇〇さんと関りは持ちたくありません。」

「そうですか。残念です。」

「ごめんなさい。」

「いえいえ、ここまでありがとうございました。」

「いえ。お役に立てなくて本当にすみません。」


 入口側の刑事さんのところへ服部刑事さんが行き、紙を持ってまた机に戻られた。


「今日の貴方の証言を書きとったものです。目を通して下さい。間違いがなければ、ご住所と生年月日、署名をお願いします。」


 調書


 そう書き始められていた。

 内容は出会いの時期から、服部刑事さんからの質問、私の回答がほとんどで、別れた時期が書いてあり最後に

「もし私が犠牲になっていたらと思うと怖いです。」そう書かれていた。


「ここは違います!質問されてそう思っただけで、そう感じたことは一度もなかったんです!」

()()()()()()()のは間違いではないですよね?」

「あ・・・ そうですね・・・」

「では署名をお願いします。」


 署名をした。


「それと、事件が事件なので、雑誌などの取材があるやもしれません。それには応じなくていいですからね。」

「取材ですか・・・ そんな・・・」

「何も答えなくていいですからね。」

「はい・・・」

「では、もうお昼を過ぎてしまいましたが大丈夫ですか?」

「え?もうお昼を過ぎているんですか・・・」


 あっという間にしか感じていなかった


「長い時間ありがとうございました。」


 立ち上がったらフラッとした。

 昨日から一睡もしていないのだから仕方がない・・・


「大丈夫ですか?緊張されましたよね。」

「大丈夫です。自分で歩けます。」


 家に帰ったとたん泥のように眠った。


 その日の新聞を翌日になってから読んだら地方欄にこの事件が掲載されていた。


 それから二日間、家から外に出なかった。

 取材など全く来なかった。

 とても安心した。


 そしてバイトへ出勤して、その日から輔くんの部屋に戻った。


 週末に刊行される週刊誌にもその記事は掲載された。

---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ