形だけの仲直り
まずはようこそ炯然学園へ!私は高校部生徒会副会長の鏡石アイサ。気軽にアイサって読んでください」
スッと右手を前に差し出された。
俺はそれに答えて右手を差し出す。2つのてが握手を交える。
「よろしくです。峰島祐馬君」
「こちらこそよろしく」どうやら俺は自己紹介の必要はないようだ。
言ってから少し不自然な間があり、
「えっとなにか?」
この空気に耐えられなくなって口を開いたのは俺だ。
「祐馬君と下の名前で読んでも?」
じーっと俺の顔を眺めてたのはそういうことか。
「あぁいいよ」
「ありがとうございます」
ニコッと彼女アイサがはにかむ。うん、いい笑顔だ。
「さて、私の紹介は終わりましたから、次は妃沙奈ちゃんですよ」
アイサは妃沙奈がいるソファーの方へと視線を向ける。俺もそれを追いかけるように視線を向ける。
「妃沙奈です……」
しぶしぶといった風で妃沙奈が言った。
なんて言うかわかりやすく機嫌がわるそうに見えた。
えっと……
「俺なにかしましたか?」
こそっと耳打ちをアイサにする。
そりゃまぁ、いきなり目の前に現れたのは悪かったと思ってるけどさ。だけど、謝るチャンスさえ無さそうなこの雰囲気って……?
「敬語はよしてくださいよ」
と先に一言言われてから、
「祐馬君に会う前に一悶着あってですね、それで機嫌が良くないのですよ……」
どうやら俺に会う前から機嫌が悪かったらしい。
『やっぱり、そうは言っても祐馬が絶対悪いよね~』
今まで黙ってたチェルシーが口を開いたかと思えば、俺のだめ出しだった。
お前はどっちの味方なんだ!
「そうだったのか」
とアイサに答える。
「ところで、祐馬君は転入という話でしたが珍しいですね」
「まぁかなり珍しいらしいな」
ずっと能力は隠してきたからな。たまたま岩崎のヤローに見つからなかったらここにはいないだろう。
「突然能力が開花したのですか?」
アイサから質問がとんでくる。
さて、これの解答はどうしたものか。別に隠し通すつもりはないが、さらっと答えるのは若干気が引けるな。
「力自体は昔からあったんだけどスキャニングに引っかからなかっただけさ」
スキャニングとは俺たちが能力開花してから全国の学校に導入されたシステムで、要するにこの学園に引き抜く為の判断に使われる検査のことだ。
この検査で一定レベルに達するとこの学園に入学する義務が発生してしまう。
何故義務が発生するかと言うと能力の暴走を恐れての措置だからだ。能力者の暴走。特に攻撃性のある能力の暴走の周りへの被害は計り知れず、いっそ同じところに集めてお互いに暴走時には止めに入れるためにとのことらしい。
で、時々俺みたいにって俺は多分例外だと思うが、スキャニングに引っかからない能力者やわざと隠し通す能力者がいる。それでもサーチ系の能力者に見られたら機械で見つからなかった力などか発見されてここに俺のように連れてこられるわけだ。
俺はたまたま跳んだ所を岩崎に発見されて強制送還って流れ。
「そういうことでしたのか。確かに私の目から見ても妃沙奈ちゃんと戦ってる時とは力が全然違いますもの。使用時に本来のレベルにあがると言った感じでしょうか」
「いや、少し違うんだけどね」
「あら、そうなんですか?ではどういう?」
ここは黙っておくのが吉だな。そう判断をつけ俺は本当のことを黙っておくことにした。
「力を隠せるから友達と別れるのが嫌で力を隠していたんだよ」
半分本当の真実だ。
「で、見つかってしまったと」
「まぁ、そんな感じだな」
「そうですか……」
とアイサの顔が一瞬曇ったが、
「ではまず私と友達となりませんか?」
「え?」
どういうことだ?
「前のお友達の代わりというわけにはいかないかも知れないとは思いますが、私を友達にしてみるというのはどうでしょうか?」
あぁ、合点がいった。彼女は友達と別れてしまった俺に気を使ってくれているんだ。
ニコっと彼女が微笑む。
ありがたくその好意を受け取る。
再び差し出された右手をとり。二度目の握手を交わした。
「ありがとう」
「いえいえ。それにもう一人この部屋に祐馬君と友達となりたい人がいるみたいですよ?」
視線の先にはやはり機嫌の悪そうな彼女。妃沙奈がいた。とてとてとアイサが妃沙奈の方に歩いていき、
「ほら妃沙奈ちゃん!祐馬君は悪くないのですからいい加減機嫌を直してくださいよ。まずは友達から初めてしっかり自分で確かめればいいじゃないですか。妃沙奈ちゃんの将来の人に……」
とその続きは言われず、いや言えずに、
「あーわかったから!悪かったわよ!だからそれ以上は言わないで!」
と妃沙奈が割り込んだ。
すくっと立ち上がり、俺の元までやってくると、
「さっきまでは本当にごめんなさい……」
と照れ隠しのように言われた。
何故何に照れてるかはわからないが、彼女とこのまま険悪なままでいるのは正直嫌なので気にせず話を続けた。
俺も立ち上がり。
「俺も急に目の前に現れてわるかった……」
俺には言えることはこれくらいしか思いつかない。
ていうか怒ってる理由がわからない限り謝りようもないのでほとんど言い訳みたいなものだ。
「はい!しゃあ仲直りの握手です!」
俺の右手と妃沙奈の右手をアイサが言いながら掴み、二人の手が触れ合うようになった。
俺は成されるがままに妃沙奈の手を握ると、妃沙奈は手を握り返してきてくれた。
そして、少し恥ずかしくなったので手をどちらからとも言わず離した。
いたたまれなくなった俺はアイサにまた話を振った。
「ところでこの部屋は……?」
周りを見ると部屋の中心より奥の窓際に近い所に立派にしか見えない机が一つ。
で、間隔を空けてそこに垂直になるように長机が連なっている。
そこにたどり着くまでに今俺たちが座っているモフモフソファーがあり、壁に張り付くように置いてある本棚には多数のファイルやらなんやらが、と給仕道具?(ポットとかカップが置いてあるんだよ)が。
ん~推察するにここは……、
っと俺がそこまでキョロキョロしながら思考を進めると、
「あ~ここは高校部の生徒会室ですよ」
とアイサが質問に答えてくれた。
「さっきも言いましたけど私と妃沙奈ちゃんはここの副会長なんですよ」
「へ~ここは副会長が2人も居るのか」
「はい。なにぶん生徒が多いですから」
まとめたり、仕事を分散すると2人が適任なんだとか、とアイサが補足してくれた。
「なるほどね」
ここの生徒は全国から集められた能力者全員だからな。今は数も相当数だろう。
「それに、この生徒会は学校行事を取り仕切るだけでなく別の側面も持ってるので」
「別の側面?」
「そうです。一つは学校のいざこざを解決するトラブルバスター。まぁ要するに風紀委員も兼ねてるのです」
「風紀委員ね~」
一昔前と違って能力がある分いたずらのバリエーションも豊富なんだろうな。ここは。
とか考えてしまった。
「だからというわけではないのですが、生徒会に入る際には高い能力レベルが要求されるのです」
「そうなんだ」
確かに高いレベルの能力者はそこいらの軍隊なら壊滅させられると聞いたことがあるな。
「ちなみに興味本位なんだけど石鏡さんの能力はなんなの?」
思ったことが口をついてしまった感じだ。答えてくれるだろうか?
「さんを取って下の名前で呼んでくれたら教えてあげます」
片手を腰に、下から見上げられる。
まだ馴れないから呼べないんだよな……。
だが、俺は勇気を絞り出して、
「じゃ、じゃあ……アイサの能力はなんなの?」
「はい!私の能力は通称天秤秤と言ってですね、大体のことの歩合を数値化して見ることが出来るのですよ」
下の名前で呼ばれたアイサは嬉々とした様子で自分の能力について解説してくれた。
「歩合を数値化?」
「はいです。例えば妃沙奈ちゃんのレベルはⅩⅡのQクラスなのに対して……」
と俺がそこで話を切ってしまった。
「ⅩⅡだって!!?」
「えっ、あ!はい……」
ここにきてずっと冷静というか落ち着いてたアイサが取り乱した。それほどに俺は驚いたのだ。
「私たちは馴れたから驚かないけどやっぱり普通の所からきた人は驚くのね」
と、妃沙奈からのコメントがあった。
ちなみにと言うか能力にはレベル認定がある。
トランプになぞらえて作られた段階でⅠが弱くⅩⅢに近づく程強くなるということだ。
全国に能力者は数多くいるけど、その全てがこの学園に集まらないのはこのレベルのせいと言うかおかげでレベルⅤ未満の能力者は入学義務が発生しないからだ。
そのくらいまでの能力者なら暴走もたいしたことないし、出来ることも限られる。
ただ、本人が望むならⅤ未満の能力者でもここに入学することは出来るし、実際そうしてるやつも結構いるという。
「と、とりあえず妃沙奈ちゃんのレベルのことは置いといて、妃沙奈ちゃんがⅩⅡだとすると今の祐馬君がⅠ程度にしか見えないってことです。もしこのレベルで妃沙奈ちゃんと良い勝負をしたのなら驚きです」
と、さらりと流して話の続きを語りだす。
「Ⅰねぇ……?」
と妃沙奈が俺を品定めするかのように食い入るように見てくる。さっきまでの険悪な空気が消えてホットはするがこれはこれで耐えにくい気がする。
全く不思議な子だな……。




