ほんとうは・・・
「さて、祐馬君も送り出しましたし行きますか」
アイサが出したカップなどを洗い終わり、話かけてくる。だけど私は、
「妃沙奈ちゃ~ん?」
「えっ!あ!ごめん」
「大丈夫ですか?」
そういいながら心配そうに眉を寄せて顔を覗ききた。
「うん。ちょっとぼーっとしてただけ」
「ふふふ。それは愛しの祐馬君のことでですか?」
テンション高らかにアイサが楽しげに問いかけてくる。
「まだ、愛しくはないけどね。あいつのことを考えてたのは本当かな?」
自重気味に言うと、
「まだ!?まだなのですね!!」
しまった。失言だ……。
「いや、ちがっ!」
「いいのですよ。両親の公認なんですから!思う存分校内でいちゃいちゃしてくださっても」
「両親ってあいつの親は……」
「そうでしたね……でも!保護者がいいと言ってるので問題ないでしょう」
「ん~そういうもの?」
「そういうものです」
ニコッとアイサが微笑む。そうかそういうものなのか……って私はなに介入されかけてるんだっ!!?
「ほら、またぼーっとして。妄想の中ではお二人はどこまで進んでるのやら」
心底楽しそうにアイサは笑っている。
いや、確かに頭の中があいつでいっぱいなのは確かだけど、
「ねぇ、あいつは本当にレベルⅠ程度だったの?」
「え?はい。レベルはⅠで間違いありませんよ。でも言ってたじゃないですか、力を隠せるって。それによると私が初め妃沙奈ちゃんと戦ってる時に見たらⅩⅠくらいありましたよ」
「なっ!それ本当?」
おかしいな……?
「妃沙奈ちゃん私の力が信じられないのですか?」
「そうじゃないんだけど、あいつの家は未来予知の家系だよね?」
「はい。峰島祐馬。これは父方の性を名のってはいるのですが、間違いなく月夜見家直系の日本最強の予知家系です。そもそも日本最強でなくては妃沙奈ちゃんと許婚の関係なんて無理ですし、何より私が許しません」
ペラペラと知っていることを言い並べられるのを聞きながら、やはり腑に落ちない。
「そうなのよね~」
「え?なにがですか?」
「あいつ私とテレポートで戦ったのよ?」
そうなのだ。一人が2つ以上の能力を持ってることは時々ある。だが、2つの能力どっちもが高いレベルにあるなんてことは非常にレアであるのは確かだ。いや、ほぼないと言っていい。
「あ!」
やっと気づいたか。
「テレポートの力は私と渡り合えるレベルで予知は日本最強ってなんなのよ……」
これで考えるなと言う方が無理な相談である。
私はアイサの片付けが終わって雑談に突入する前に生徒会室を出た。
これから向かうのは学園理事長の部屋。
内容は峰島祐馬のテスト結果。この分だと軽くOKが出そうだけど。まぁ、一応ってやつだ。
そして会う人物は私の母。社御寺 渚。
「さて、では行きましょうか」
「うん」
アイサが私に続いて部屋から出てきた。
そのまま歩みを止めずに実質この学園最強の所へ向かうのだ。
「ところで妃沙奈ちゃん」
「ん?」
学園の広く長い廊下をカツカツと2人分の足音響かせ歩いていく。
「お母様にはどういう報告をするのですか?」
「どういうって……戦ったら相打ちでしたとしかないんじゃないの?」
あのままやってたら絶対に私が勝ってたけどね。ここはアイサに免じてそうしておこう。
「そうですか……そうですね」
一瞬何か迷った素振りを見せたが私にはその真意にはたどり着けない。精神感応の力は私には皆無だからね。
学園のとある場所。教室表記は理事長室。
コンコン。
とドアを叩くと乾いた音が返ってき、返事を待たずしてドアノブを回して中に入る。
そして、そのまま部屋に一歩を踏み込み。すると体が重力を忘れたようにフワッと浮かび上がっる。
これって初めてならさぞいいアミューズメントでしょうね。
なんて心の端で思いながら自分でサイコキネシスを使い前に少し進む。
そうしたら後ろからアイサが付いてきて、自分についでフワッと浮かぶ。私はアイサを自分の力で包み込むとサイコキネシスでドアを閉め、浮かび上がったまま前進する。
部屋の中はデスクやら書類やらペンやらなんやらがフワフワと宙を舞っている。
「相変わらず凄いですね」
アイサが呟き私に話を振ってくる。
「まぁ、日本最強を謳うだけはそりゃあるわね」
この部屋には常にあの人の力が満ちている。
サイコキネシスや風使いの能力が無ければ自力で前に進むことは叶わずただただ宙をさ迷うことになるだろう。まるで命綱なしに宇宙に放り出されたかのように。
「そろそろですね」
学園の大きさは規格外でも一つ一つの部屋の大きさまで規格外ではない。部屋の奥は最初から見えているし、奥の方に浮かんでる豪華絢爛ないかにもな社長机とそのさらに奥にある革張りの社長椅子。
「母さん」
と私が一言かける。すると浮かび上がった椅子がくるりとこっちを向いた。
「あら、アイサちゃんも来たのね」
と、来るのがわかっていて待ってましたと言わんばかりに澄ました答えが返ってきた。
「あ!どうもこんにちはです」
「こんにちは」
ニコッと母さんは微笑みアイサに返す。
そしてその視線を私に向け、
「で?どうだった?」
「強かったわよ。アイサが止めなければ私が勝っていたけど、引き分けって形で一応片はついたわ」
あらかじめ決めて置いた事を口にした。
「いやいや妃沙奈、そっちじゃなくて、祐馬君とは少しは話したんでしょ?」
だが、母さんの反応は芳しくなく、
「え?」
ってなってしまった。
「だから、鈍い子ね~強いのなんて最初からわかってるわよ」
なんでそんなこともわからないのよ?的な顔。大変だ。自分の母親に殺意が湧きそうなる。
「じゃあどういうことなのよ」
それでもかなわないのはわかってるので普通に受け答え。
「ズバリ!自分の将来の伴侶としてよ~」
「えっ!」
これ冗談とかならスルーに持ち込んでもいいのに、昨日の話聞く限り本気に聞こえるから困る。
「渚さんそのことは全く心配いらないみたいですよ」
「あら?そうなの!」
「はい!妃沙奈ちゃんはきっともうラブラブになっちゃってます」
「えっ!?ちょ……!!」
なに言ってんの!!?
と言おうとしたらアイサが、
『悪いようにしませんからここは私に任してくれませんか?』
と、心に直接テレパシーを使い伝えてきた。そう言われると私はもう黙ってるしかないじゃないの。
「へ~」
母さんは私を含みある笑いで見てくるし、さっきの焦ったのが照れ隠しにでも見えたのだろうか。
「ということで渚さん。このまま少し様子を見た方がいいのでは?」
母さんはフルっと顔を上げアイサに視線を向けると、
「そうね。変につついて祐馬君に秘密が漏れたら傷つきそうだし」
秘密とは祐馬の出生のこと。つまり、家の血目当てで自分が巻き込まれたと知ったら本人が傷つくからとの配慮みたい。実際そうみたいだし反論の余地はないらしいけど。
「では、また私達は祐馬君の学園の案内などを続けるのでこれで」
ぺこりと頭をアイサが下げた。
私は私でこの状況下から脱出できるならなんでもいいかと思っていたからそのまま部屋を去ろうとした。
「じゃあね母さん」
ま、誤解されたままだけどいいだろう。
なにを言ったって変わるわけでもなさそうだし。様子を見るのが正解。
そう折り合いをつけそのまま、フワフワと浮きながらドアを目指した。
まさかのヒロイン一人称っていうw
まあ主人公に隠し事があって、それを書くならこうかな?っとw




