第一話 はじまりの事件(4/6)
「お疲れ様です。」
両手をあげて、ゆっくりと通路から出ていく
「お疲れ…お、お前は!」
三階層の連絡員が急いで拳銃を抜きこちらへ向けてくる。
「はい。あなた方にとって、重要参考人の神坂聡です。」
連絡員が無線で応援を要請する。
「動くなよ?神坂。もうすぐ応援が来る」
「ええ。逃げませんよ。犯人ではありませんし、その証明もできますから。」
「なんだと?」
二階層から複数の足音が近寄ってくる。
先頭で降りてきた、オールバックでメガネのかけた男性が警察手帳を見せる。
「神坂聡さんですね?私は警視庁捜査一課の長良と申します。このダンジョンで発生した殺人事件についてお伺いしたいことがあります。」
「はい。私が、神坂聡です。私もその件についてお話ししたいことがございます。ここではなんですから、ダンジョンの入口でいかがでしょうか?」
「そうですね。逃げるつもりもなさそうですので、入口でお話ししましょうか。では、お腰につけたショートソードとポーチを預からせていただいてもよろしいですか?入口までの安全は警察が保障いたしますので」
この刑事さんは、少なくとも、頭ごなしに犯人扱いするタイプではなさそうだ。
「わかりました。お預けいたします。」
腰からショートソードとポーチを外すと、警察官に渡す。
「ありがとうございます。では、行きましょうか。」
前後左右に一人ずつ護衛の警官が歩き、入口へと向かっていった。
「神坂!心配したぞ!」
聞きなれた声が前から聞こえる。
「養老さん、心配おかけいたしました。」
受付から歩いてくる養老さんを長良が制止する。
「申し訳ございません。彼を心配していたのは存じておりますが、こちらの要件を済ませてからでもよろしいですか?」
「すみません。刑事さん。つい感極まってしまって」
長良がこちらに向きなおし、
「さて、早速事件のことをお伺いしてもよろしいですか?」
「ええ。問題ありませんよ。ただ、最初に言っておきます。私は犯人ではございません。」
そこへ、部屋の角で警察とともにいた男女が会話に割って入ってきた。
「いや、お前が犯人だ!お前が凶器を持って血まみれのあいつの横に立ってたんだ!お前が犯人に決まっている。」
「そうよ!私も見たわ!この人が横に立っているのを!」
その二人は、俺が倒れている被害者を見つけた際に襲ってきた男性と女性が大声で叫んでいた。
「ええ。たしかに、被害者の方の横におりました。しかし、私が犯人ではございません。ポーチに入っているナイフが証拠です。」
ポーチを持っていた警官が慌てて、ポーチからビニール袋に入ったナイフを取り出しテーブルの上に置いた。
「こちらでしょうか?」
「ええ。このナイフです。もし、このナイフが凶器ならば、おかしくないですか?」
長良がビニール袋ごとナイフを手に取り観察している
「何がおかしいというんですか?」
「では、整理いたしましょう。まず、このナイフを拾った、すなわち、私が被害者の方を発見したのは、19時30分頃です。発見する少し前にスマホで時計を確認しておりますので、間違いないです。そして、いくつか確認させていただきたいのですが、まず、通報を受けたのは何時ですか?」
「そこの女性から19時49分に受けた。そして、突入したのは19時53分。一応伝えておくと、俺たちが現場に着いたのは20時10分だ。」
長良の隣にいた、現場で遺体搬送をしていた刑事が答えた。
「ありがとうございます。では、遺体が運び出されたのは何時ですか?」
「たしか、遺体の確認を簡単に行ってからだから、大体20時半くらいだったんじゃないか?」
「その時の遺体の状況は?」
「首を鋭利な刃物で切断されて死んでたよ。仏さんは血まみれで、担架に乗せるのも一苦労だったよ」
「その時、血はどんな感じでしたか?」
「血?もちろん普通だったさ?ただ、ぽたぽた垂れるから、現場から出すのが一苦労だったな」
やはりそうか。これで仮説は裏付けられた。




