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ダンジョン探偵  作者: 桜岡かなた
はじまりの事件
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3/11

第一話 はじまりの事件(3/6)

階段へ向かう。

思った以上に時間がかかってしまった。とりあえず、情報だ。

岩の陰からのぞき、様子をうかがう。

…どうやら、初動の警察官たちは、すでに現場へ向かったあとらしい。

階段のほうから、物音が聞こえる。

『ザーこちら、第三階層初動現場。被害者発見。いやー...すごいな...血まみれだ...これより遺体を搬送する』

どうやら、現場からの無線を受けたらしい。

「第三階層中継。了解。第二階層へ伝達する」

『ザー頼んだ』

階段にいる警察官は別の無線をに呼びかける。

「こちら、第三階層中継。初動現場より連絡。被害者発見。これより遺体搬送を開始する」

『ザー第二階層中継。了解した。上層へ伝達する』

なるほど。各層に中継員を配置して上層と連絡と探索者の通行確認を兼ねているのか。やはり、上に行くことはできないが、ここである程度情報が集められる。

第二階層にいる中継員からとみられる無線から音声が流れる

『ザーこちら、第二階層中継。中継地に応援部隊到着。現着予定は10分後』

「こちら、第三階層中継。了承した。現場へ通達する。」

再び、現場の警察官とつながっていると思われる無線を取り出すと

「こちら、第三階層中継。応援部隊第二階層中継通過。現着まで10分」

『ザーこちら、第三階層初動現場。応援部隊第二階層通過の連絡受領した。それと、そろそろ、仏さんがそこを通る頃合いだ。あまり見ないほうがいいぞ?』

無線が切れると別の通路から、二人の警察官が赤いシミのついたブルーシートの乗った担架を担いで来た。担架の下から、ぽたりと赤い雫が地面に落ちる。...まだ血が流れているのか。

警察官同士の会話が聞こえる。

「例の少年は通過したか?」

「いえ、そのような人物どころか、いまだに誰も通っておりません。もうこの階層にはいないのではないですか?」

「いや、間違いなくこの階層にいると思うぞ?」

「なぜそう思うんですか?」

「受付の職員から聞いただろ?『その少年は第四階層に行ったことがない』と。だったら、下手に第四階層に向かうよりも、何とかして入口に戻ろうとするだろうよ。第四階層に行く度胸が無いんだろうからな。応援部隊が到着すればすぐにこの階層の捜索がはじまる。それで発見されるさ」

階段から足音が聞こえる。

「ご苦労様です。こちらが今回の仏ですか?」

応援の警察がもう到着したか。これ以上のぞき見るのは危険だ。

「お疲れ様です。こちらが今回の被害者です。確認されますか?」

「ああ。よろしく頼む。」

「おそらく、首の傷が致命傷でしょう。ほぼ即死だったと思われます。」

「…でしょうね」

「現場は血の海でしたよ」

「仏を運ぶのは、こちらの人員に任せて、現場まで案内してくれますか?」

「かしこまりました」

これ以上ここにいるのはまずいかもしれない。すぐに捜索が開始されるだろう。そうなるとこの階層に逃げ場はない。

「他の者は、この階層の捜索を開始しろ」

ヤバい。まずは、見つからないことだ。

ゆっくりとその場を離れる。

しかし、どこに逃げるか。さっきの警官が言っていた通り、この階層は一番に捜索される。逃げ場はない。二階層への階段にはすでに警官がいる。

となると、四階層...か...

さっきの会話から考えるに、四階層の捜索は二階層を捜索した後になる可能性が高い。だが、地形を把握していない階層に進むのはハイリスクだ。どちらにしても、今は奥に逃げねば...


さすがというべきか、当然というべきか、完全に逃げ場は消えつつある。

いまだに、俺が犯人でない証拠もない。

犯人を示す材料もない。

もう残された道は、一つだけ。


地形も敵情報も持ち合わせていない場所で、逃走なんて分の悪い賭けだ。

だが--。

今は、その未来に賭けるしかない。

四階層への階段がいつも以上に暗く、深く見える。迷って考えている暇はない。すぐそこまで、包囲網は狭まっている。

振り返ることをせず、四階層へ続く階段を駆け下りる。

目の前が開ける。

一見すると、部屋のつくり、壁の材質は三階層までと同じだ。とはいえ、敵の種類、強さまで同じとは限らない。地形の知識もない。だが、階段のある場所にとどまるのは、見つかるリスクが高い。ある程度は進まなくては。

しかしどうする。

手元にある遺留品はこの血まみれのナイフだけだ。

一度情報を整理しよう。

使える情報はなんだ。

血まみれだった遺体。

俺を見た男女二人組。

首を切られて亡くなっていたこと。

そして、この遺体の横に転がっていた凶器と思われる、血まみれのナイフ。

--待て。

血が…違う。

警察が運んでた遺体の血はまだ液体だった。

だが、このナイフの血は固まり、乾き始めている。

しかし、なぜこんなめんどくさいことを?

まさか、このナイフは凶器ではない?

いや、これ以上はわからない。しかし、逆転は可能だ。もう四階層にいる必要はなくなった。


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