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ダンジョン探偵  作者: 桜岡かなた
第一話 はじまりの事件
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2/12

第一話 はじまりの事件(2/6)

そして数時間後

放課後を告げるチャイムが鳴った。

それと同時に、前の席で机に突っ伏して寝ていた関が鞄をつかんで立ち上がる。

「じゃあな!」

そういうと、関はあっという間に教室を飛び出していく。あいつの頭の中はゲームのことでいっぱいなのだろう。

俺は、鞄を肩にかけ、教室を後にした。

学校を出た俺は、そのままいつものダンジョンに向かった。

学校から15分ほど歩くと、町のランドマークにもなっている巨大なコンクリート製のダンジョン管理施設が見えてきた。

ダンジョン入口に入ると、受付から聞きなれた声が聞こえてきた。

「よう、神坂(みさか)。今日も探索か?」

「こんにちは、養老(ようろう)さん」

俺は、財布から探索者証を取り出すと、養老さんに探索者証を差し出した。

「しっかし、ここんところ毎日潜ってるな?たまには、友達と遊んだらどうだ?」

受け取った探索者証を俺の目の前でひらひらさせながら茶化してくる。

「養老さんも毎日いるじゃないですか」

「俺は仕事だからいいんだ」

「じゃあ、俺も仕事のようなものなので大丈夫ですね」

ほぼ毎日潜っている。俺の中では、もうバイトみたいなものだ。

「お前の本業は学生だろうが。学生のうちは、もっと友達と遊べ」

「いえ、学生の本分は勉強です」

「かぁー、優等生みたいな回答しやがって。勉強もそうだが遊びも今しかできないんだぞ?」

そういった話は、養老さんに限らず時折言われる。多分、その通りなのだろう。

「否定はしません」

「だろ?だったらたまには、遊んで来い。ほらよ。受付終わったぞ。今日も三階層まで行くのか?」

養老さんから探索者証を受け取る。

「はい。いつも通り、三階層まで行って戻ってくる予定です」

「お前の腕なら、四階層くらい誰かと組めば行けると思うんだがな?」

「そうかもしれませんね。でも、チーム組みますと日程を合わせるのが面倒なんですよ。では、行ってきます」

「けがせずにちゃんと帰って来いよ」

養老さんのいつもの見送りの言葉を背中に受けて、ロッカー室に向かう。ロッカー室の中には、俺と同じ年齢くらいの探索者が何人か装備を整えていた。

俺は、自分のロッカーに向かうと、中に入れていた革製の胸当てと籠手を制服の上から手早く身に着ける。腰にポーチとショートソードを差し、最後に装備に異常がないか確認した。

問題なし。

俺はショートソードの柄に軽く触れると、ダンジョンへ向かって進んだ。


10体目を倒し、魔石だけを回収すると、剣を納めて時計代わりにスマホを見る。

19時30分

今から最短距離で戻ると、入口で20時。家に着くのは20時半ごろだろう。

魔石もいつもより多めに集まった。

「今日はこのくらいにするか」

息と一緒につぶやく。

頭の中で、地図と現在位置を確認し、

「戻る階段はこっちか」

入口への最短ルートを進む。

地図の目印となっている、この階層内で最も大きい空間が見えてきた。しかし、違和感に足を止める。…匂いだ。久しく嗅いでいなかった、鼻につく鉄のような匂い。血だ。

匂いのする脇道へ音を立てずに進む。

ここは、たしか、モンスターのルートになりやすい小部屋だったはずだ。

ゆっくりと小部屋の中を覗き込む。

やはり人だ。しかも血まみれだ。息が詰まる。

このダンジョンで?こんな階層で?

まだ、間に合う可能性もある。

周囲にモンスターは居なさそうだ。

生きている、死んでいるにかかわらず、報告したほうがいいだろう。慎重に近づく。

かがむと、膝に何かが当たり、金属音が響く。

反射的に視線を落とす。

血がべったりと付いたナイフだ。遠目では気が付かなかった。

報告のため一応回収しておこう。それよりも、生きているか確認しなくては。

ザッ

背後で小石を踏む音がした。そして、女性の悲鳴。

「この人殺し!」

振り返るとほぼ同時に、男が叫びながら、剣を振りかぶって突っ込んできた。

「待ってくれ、俺は殺してなどいない!」

「血の付いたナイフを持ちながら何を言ってやがる!」

男は剣を振り下ろしてきた。

とっさにバックステップで回避する。

「違う!これは、横に落ちていたのを拾っただけだ!」

そう抗弁するが、男は激高しており、話を聞いていないようだ。

「うるさい!問答無用!」

振り下ろし、地面に当たった剣を今度は横なぎに切りつけてくる。

これでは、らちが明かない!一度逃げるしかない!

男のいる方とは逆の通路へ逃げ込む。

走る。

クソッ!これでは、犯人にされてしまう!このまま、入口へ走って行くか?いや、それは無理だ。2階層への階段は反対方向だ。俺より先に、あの男が入口に着くだろう。

ダメだ。これでは、犯人にされてしまう。どうする。ここからでは、スマホで連絡もできない。それよりも、あの男だ。追ってきているか?

後ろを確認する。人影や、物音は聞こえない。どうやら、撒くことができたようだ。

しかし、ここからだ。連絡もできない。戻ることもできない。戻れば、最悪、殺人犯だ。やってもいないことで犯罪者になるのはごめんだ。どうする。

とりあえず状況を整理しよう。

あの男か女かのどちらかが入口に戻るまで15分。

通報から警察の突入まで5分後。

三階層に来るまで15分後。

……合計35分。どうする。

そこで、右手に違和感を覚えた。そうだ。俺はまだナイフを握ったままだった。このまま握っていても邪魔になるだけだ。それに、誰かに見られれば余計な誤解を招く。しかし、捨てるのは痕跡を残すことにつながる。仕方ない。とりあえず、ビニール袋に包んで、ポーチへ入れておくか。

次の行動だ。現段階で見つかれば間違いなく犯人だ。最低でも、それをひっくり返せる証拠を見つけなくては。

ならば、戻るか?いや、途中であの男と鉢合わせる可能性が高い。クソッ情報が足りない。

…待てよ?初動で来る警察はおそらく、4~5人。本格捜査が始まるのは、さらに10分はかかるだろう。それまでに、警察官から情報を盗み聞くことができるかもしれない。

で、あれば、二階層へつながる階段。そこは必ず通るはずだ。ここで、何か情報を得られればいいが...リスクはある。しかし、何もせずにいるほうがリスクだ。

別ルートを使用すれば、遠回りになるが階段近くまで行くことはできる。30分はかかるが警察が到着するころにはちょうど階段付近には付けるはずだ。


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