2 領民の声
マリエールを領主に押す声は日々高まっている。マリエールを直接呼んで聞いてみた。案の定マリエールには領主になる気はない。
2 領民の声
復興が進むにつれ、マリエールを讃える声は高まる。領民は、
「マリエール様は、我々の女神だ。マリエール様こそが我々が領主と仰ぎたい方だ。」
マリエールは領主の娘ではあるが3女、しかも第ニ夫人の子どもだ。次期領主になる可能性はない。それにしても領民が声高々とマリエールの支持を訴えるのを無視するのも難しい。民主主義の世界ではない。領民の声に一々耳を傾ける必要はない。しかし領民の意思を無視するのは愚策だ。領主にもその程度の認識はある。マリエールを呼び聞いた。
「その方次期領主になる気はあるか。」
マリエールは顔色を変えて、
「滅相もありません。復興支援に関してはただできる事をしただけです。演説も領民がパニックを起こさないためにしただけです。領主になりたいためにした事ではありません。頼まれてもお断りします。」
領主にとってもマリエールは殊更愛らしい子どもだ。マリエールの心ね、行動はマリエールらしい行動だし気持ちは良く判る。幸か不幸かフライという特殊な魔法を所持していたために大事になった。
「お前の気持ちは良く判っている。領主になりたくてやった事ではない事も判っている。領民にパニックを起こさせないために最善な方法だった事もだ。状況は予断を許さない。お前が領主になる事が最善ならばそういう選択もあり得る事は承知しておいて欲しい。」
領民の声。皮肉な事にマリエールの思いとは別にマリエールを領主にするという声を引き起こしてしまった。
「まあ、一部の声だ。心配するに及ぶまい。」
その時はそれで終わった。
大災害だという割りに人的被害が少なかったのは幸いだった。これもマリエールのお陰だと意見が多い。領主の長男も、
「領民がマリエールを領主にと望むならそれで構わないですよ。マリエールは領民思いで誰にでも思いやりがあり親切で公平で賢い理想的な領主だと思いますよ。」
長男のいう事は間違いではない。他兄弟姉妹も、
「マリエールなら問題ないわ。」
それはそうだろうと思う。ただ領主の選択を領民の意見だけで決めるのはどうだろうかと思う。長男がマリエールに劣るかと言えばそんな事はないだろうと思う。
始めは領の東部だけでマリエールを領主に押す意見があった。領内全域でマリエールを領主に押す意見が膨らんだのは意外だった。
領の西部の者がマリエールを押す理由が判らない。領主の側近の一人が、
「マリエール様は、日頃の言動、行動から領民達に愛されています。特に今回の震災の対応で領民達がマリエール様を押す声が高まっているのだと思われます。」
と言った。思い当たる事がある。マリエールの人懐っこさと人を思いやる気持ちは本物だと感じる事が時々ある。他の兄弟姉妹にはない事だ。領主の子ども達と領民達が触れ合うことは少ない。マリエールは積極的に領民と触れ合ったのだろう。
「さてどうしたもんやら、マリエールを領主にする事で全て丸くおさまるのか。」
第一夫人が黙ってないだろうな。
マリエールを領主に押す声は領全域に広がった。領主は被災地以外でその声が広がるのが意外だった。側近は日頃の言動、行動がそうさせるのだろうと言った。




