1 女神
大災害で領の東部が被災した。マリエールは積極的に復興支援に取り組む。被災者達を励ますために上空から演説したり被災地を回った。
1 女神
絶望とはこの事だろう。実りの時期を間近にして人々の顔にも笑みがあった。一夜にして状況が変わった。麦穂は枯れ実りは消えた。大災害だ。人の暮らしも農地の実りも根こそぎ奪った。領主令嬢マリエールは駆けずり回った。
「被災にあった人優先よ。食べ物と飲み物配って。仮設住宅の建築急いで頂戴。」
マリエールは救援要請に応えつつ声を上げられない人々にも救いの手を差し伸べようとした。
「物質はあるわ。領民に伝えて、不安に怯えてやけになるのは最悪よ。」
幸か不幸か災害の大きな地域は領地東部の比較的人口の少ない街村に限られた。マリエールの速やかな救援物質の移送で取り敢えず飢えに苦しむ人はいない。
「後仮設住宅ね。取り敢えずテントでも構わないわ。治安悪化しないように見廻りしてね。」
状況は予断を許さなかった。救援物質の奪い合い。医療支援の遅れ、眠る場所のない者、治安の悪化等領民がパニックを起こしかねない要因は幾つでもある。
「マリエール様、我々ができる事は限りがあります。マリエール様が上空から呼び掛けるのが一番効果があります。」
マリエールはそうかしらと思ったが。領民がパニックを起こしたら元も子もない。
「判ったわ。行ってくるわ。」
マリエールは被災地にフライで向かって上空から呼び掛けた。
「被災された領民の皆さん。私はマリエールです。今皆さんをお救いするため領は懸命に努力しています。被災された方が多いため仮設住宅はまだ間に合わないところもありますがテントなどを用意して雨露を凌げるようにします。食料、飲み物は十分あります。衣類については順次支給していきます。不自由おかけしますがしばらくお待ち下さい。領の職員が見廻りしておりますのでお声がけ下さい。領はあなた方を見捨てません。」
拡声器を用いながらマリエールは人々に呼び掛けた。10ヶ所以上で呼び掛けを行い。地上でも呼び掛けた。日々の炊き出しにも顔を出し領が支援を行っている事を伝えた。復興支援がようやく軌道に乗り出した時一番領民が感謝したのはマリエールだった。マリエールは女神のように愛された。その言動、行動もそうだが愛らしいその容姿が女神と言うか天使と言うか人々の心を捉えて離さない。
マリエールは、
「復興支援の状況はどうなの。」
と聞いた。
「ようやく仮設住宅が全て立ち、井戸等の復旧も終わりました。被災者達と協力しながら、当面の作付はできましたのである程度の自活ができると思います。」
一安心と言うところか。マリエールの側近は、
「それにしてもマリエール様の演説は見事でした。お陰で領民はパニックを起こす事なく災害を乗り切ることができました。領民全てがマリエール様をお慕いしております。勿論私もマリエール様をお慕いしております。」
オーバな事だと思った。積極的に指揮や演説をしたのはマリエールだが、自分ができる範囲でやっただけだ。中心は勿論領主だ。勘違いしている人がいないといいけれど。ちょと目立ち過ぎたかな。とマリエールは思う。
マリエールの行いを女神のようだ、天使のようだと言う領民が多い。マリエールは確かに積極的に復興支援に取り組んだし演説もした。できる範囲でしただけだ。




