表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何でも屋を開業する魔王  作者: ラーメン四郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/14

魔王、SNSの拡散力に翻弄される

「魔王様、ついに我らの時代が来ましたぞ。見てください、この『ばず』という現象を!」

 アイゼンが興奮気味に、格安SIMで契約した中古スマホを突き出してきた。

 画面に映っていたのは、先日俺が『コロコロ』を片手に若者の背後を掃除(除霊)していた時の隠し撮り映像だった。

『新宿の路地裏に、謎の除霊コスプレイヤー出現w 動きがガチすぎて草』

『後ろの工事現場の人、ガタイ良すぎて本物の騎士かと思った』

 添えられた数字は、驚異の「5万いいね」。

 俺がかつて放った最上級魔法『終焉の業火エターナル・フレア』でも、これほどの人間を一瞬で注目させることは不可能だった。

「アイゼン……この『SNS』なる魔術、恐るべき伝播力だな。我が魔王軍の広報担当として即刻採用する」

「はっ、既にアカウント名は『万事屋・マオウ』で登録済みです! すると早速、DM(文通)にて依頼が舞い込みました」

 その依頼は、ある女子高生からのものだった。

『最近、最寄り駅の無人駅で、変な視線を感じるんです。誰もいないはずなのに、スマホの画面に知らない人の顔が映り込む気がして……。助けてください』

 ——無人駅。

 この世界の「駅」という場所は、人々の行き来が激しく、想念が溜まりやすいポイントだ。特に人の目が届かない無人駅は、異質な邪悪が巣食うには絶好の場所と言える。

「よし、出陣だ。アイゼン、移動手段はどうする?」

「この『小田急線』という鉄の龍に乗ります。魔王様、dカードのチャージは万全ですぞ!」

 俺たちは電車に揺られ、神奈川の郊外にある閑静な無人駅へと降り立った。

 時刻は黄昏時。空が不吉な血の色に染まる頃だ。

「……いたぞ。アイゼン、あそこだ」

 ホームのベンチ。そこには誰も座っていないはずなのに、空間が歪み、周囲の温度が急激に下がっていた。

 女子高生の言っていた通り、そこには「現代の覗き魔」とも言うべき、電子機器を媒介にする新種の怪異『スクリーン・シャドウ』が潜んでいた。

「ふん、コソコソと隠れて女子の端末を覗くとは……。かつての魔界の痴れ者以下だな」

 俺は懐から、今日のために用意した「新兵器」を取り出した。

 ダイソーで購入した、強力な『鏡面仕上げの防犯シール』と『スマホ用除菌シート』だ。

「アイゼン! 物理的反射リフレクションの陣を敷け!」

「御意!」

 アイゼンがホームの柱に次々とシールを貼り付け、怪異を「鏡の迷宮」に閉じ込める。

 実体を持たない影の怪異にとって、己の姿を直視させられることは最大の苦痛。

「仕上げだ。この『除菌シート』で、貴様の不浄な存在ごと拭き取ってくれるわ!」

 俺は無人駅のベンチを、神速の速さで磨き上げた。

 磨くたびに、怪異の輪郭が薄れ、電子のゴミへと還元されていく。

「……ふぅ。これでこの駅の治安も保たれたな」

 その様子を遠くから見守っていた依頼人の少女が、駆け寄ってくる。

「すごい……! 本当に、あの嫌な気配が消えました! あの、お礼なんですけど……」

 少女が差し出したのは、数枚の野口英世。

 ついに、ついに「現金」という名の勝利の証が、魔王の手に握られた。

「……これが、カネ……。意外と軽いものだな」

「魔王様! これで今月の家賃が半分払えますぞ!」

 俺は夕日に向かって、手に入れた千円札を掲げた。

 世界征服の第一歩は、無人駅の清掃代金から。

 だが、その帰り道。俺のスマホ(中古)に、新たな通知が届いた。

『万事屋・マオウさん。あなたたちの噂を聞きました。私の組織へ来ませんか?』

 差出人は不明。アイコンは、不気味な黒い太陽のマークだった。

 どうやら、現代の闇は想像以上に深いらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ