アトリエの死闘、鏡の魔法(?)炸裂!
「ふん、電磁警棒か。この世界の『雷撃魔法』は、ずいぶんと短くて不格好だな」
俺はアトリエの椅子に深く腰掛けたまま、迫りくる武装集団を冷めた目で眺めた。
『日食』の私兵たちは、タクティカルベストに身を包み、訓練された動きで俺たちを包囲する。
「無駄口を。……排除しろ」
リーダー格の男が合図を送った瞬間、三人の男が同時に踏み込んできた。
一人は警棒を振り下ろし、残る二人はスタンガンに近い射出型兵器を構える。
「アイゼン、予定通り『反射陣』だ!」
「御意ィィッ!!」
アイゼンが懐から取り出したのは、先ほどダイソーで買い占めてきた『防犯用凸面鏡』と『強力両面テープ』だ。
彼は神速の動きでアトリエの四隅にあるイーグル(画架)に鏡を貼り付け、角度を調整した。
バシュッ! と、男たちが放った電磁ワイヤーが空を切る。
だが、それは俺に届く直前、アイゼンが掲げた『金属製の手鏡』に接触し、あらぬ方向へと弾かれた。
「なっ……!? ワイヤーを鏡で逸らしただと!?」
「驚くのは早いぞ、人間。現代の兵器は『直線性』に頼りすぎている。光も、電気も、そして貴様らの浅薄な正義もな!」
俺は立ち上がり、手に持っていた『大容量モバイルバッテリー(急速充電対応)』を床の「黒い染み」に向かって投げつけた。
「アイゼン、トドメの『導電魔法』だ!」
「はっ! 交通整理の極意……誘導開始!」
アイゼンが『光る棒』の先端をモバイルバッテリーの端子に叩きつけ、ショートさせる。
瞬間、過負荷を起こしたバッテリーから火花が散り、鏡に反射して迷走していた電磁ワイヤーの残響と共鳴した。
ドォォォォン!!
アトリエ内に激しい閃光が走る。
鏡の乱反射によって増幅された光と衝撃が、武装した男たちの視界と電子機器を完全に焼き切った。
「ぐああああっ!? 目が、目があああっ!!」
「フン。たかだか百円の鏡に敗北するとはな。貴様らの『高価な装備』とやらは、ダイソーの知恵の前では無力だ」
俺は転がっているリーダーの胸元を、ダイソーの『マジックハンド(ロングタイプ)』で器用に弄り、一枚のIDカードを抜き取った。
「これがあれば、絵師を連れ去った『研究施設』へ入れるな」
その時。
倒れた男たちの無線機から、ノイズ混じりの声が聞こえてきた。
『……聞こえるか。こちら本部。……「器」の適合率が限界を超えた。これより、「電脳の女王」の強制起動シークエンスへ移行する。……絵師は、もう必要ない。処分しろ』
「なっ……!?」
俺とアイゼンは顔を見合わせた。
モニターの中の少女が言っていた「消された子」の残滓。それが、今まさに本当の意味で消されようとしている。
「アイゼン、急ぐぞ。報酬の『美味いもの』を奢らせる相手が死んでしまっては、万事屋の名が廃る!」
「かしこまりました! 魔王様、タクシーを呼びますか、それとも小田急線で!?」
「このIDカードの裏に書いてある住所……港区のタワービルか。……よし、今回は贅沢に『タクシー(迎車)』だ!」
魔王一行、ついに敵の本拠地へ。
新宿の何でも屋が、現代の摩天楼に潜む「神」に挑む時が来た。




