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エピソード24

 その後数日間、凜奈は面会謝絶の状態らしく俺は病院を訪れる機会を得ずにいた。意識が回復したのに会うことすら許されないなんて、少し不自然じゃないかと母さんに聞いてみたところ、母さんも首を捻っていた。

「私もそう思って恵に電話してみたんだけど、詳しいことは話してくれないのよね。まだよく分からないみたい」

「ただの外傷だろ?」

「熱中症と併発して起きたから、そう簡単なものじゃないでしょ」

 とにかく、どれだけ時間がかかろうと、凜奈の命に別状はなくて、意識も回復していると言うのが幸いだった。でなければ、不安に押しつぶされていたかもしれない。



 学校はもう夏休み直前で、午前中だけ行われていた授業もほとんどなくなっていた。今は成績表が配られたり、教室の大掃除をしたりという特殊なことしかしていない。

 3時間目の大掃除の時間も終わりに差し掛かり、みんなで隅に運んだ机を元の場所に戻す作業をしていたところ、明香が俺に話しかけて来た。

「ねえ、優太朗くん?」

「うん?」

 誰かの机を元の位置に運び終えた俺は、一息つきながら明香の方を見た。教室の机はみんな大体元の位置に運び終えられている所であった。

「今日も、無理?」

「うーん、そうだな……」

 意識回復を聞いたあの日から、いつでも凜奈の元に面会に行けるよう放課後の予定はずっと空けておいたのだが肝心の凜奈が面会謝絶状態なので、俺はずっと明香の誘いを断らざるを得なかった。

「また、凜奈ちゃんのところ?」

「う、うん……」

 明香は凜奈の状態を詳しく知らないので、面会に行っていると言う風に伝えていた。

「そう……凜奈ちゃん、早く元気になるといいね」

 明香は笑ってそう言ってくれたが、口元が引き結ばれていて妙な印象だった。言いたいことはそれだけだったのか、明香はさっさと別の所へ行ってしまった。


「今日も遊べないのか?」

 ふと声のした方を向くと、陸山が立っていた。誰かの机にもたれかかりながら半眼でこちらを眺めている。

「行ったろ。凜奈の所だって」

「せっかくの放課後なのに? たまには付き合ってやってもいんじゃないか?」

「俺には行く義務があるんだ」

 俺のせいで凜奈はこんな大怪我をしたんだ。合わせる顔がなくても、それでも俺は行かなければならない。もし面会がOKになったら、真っ先に行って謝らなければならないのだ。

「優太朗が今付き合ってるのは六浦だろ。八武崎じゃない」

「どうしてそこで明香が出てくる? 関係ないだろ」

「ある」

 最近、陸山は妙にこんな調子で絡んでくる。確かに今は遊びに行けないが、事が事なので仕方がないのだ。ため息を吐いて見せる。

「悪かったよ、お前にも明香にも。だけどこればっかりは蔑ろにできないんだ」

 陸山は分かったような分かってないような調子で「ああ」とだけ答えた。

 3時間目終了の鐘が鳴る。



 家に帰ると、ここ最近はずっと在宅気味だった母さんが出迎えてくれた。仕事はどうしてるのだろうと疑問に思い始めていたが、母さんの言葉を聞いてそんな些細な疑問も吹き飛んでしまった。

「面会許可が出たらしいわよ……恵から電話が来た。今から車で病院に行くから、早く準備しな」

「ほんと!?」

「ええ。いいから、早く」

 妙に落ち着いた口調で言われる。だが、母さんのテンションが妙に低いこともその内容に浮足立っていた俺にはどうでもいいことだった。


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