エピソード18 続々々
駅前通りの商店街を学校帰りにぶらつきながら、俺は前を行きはしゃいでいる陸山と明香の様子がどこか別の遠い世界の話のように思えた。平日の昼間だからか、人通りはあまり多くなく、高齢者や主婦層の人達がよく目につく。俺は、陸山と明香の数歩後ろをついて歩きながら思わずにはいられなかった。
唐突にかち合った凜奈に、いったいどう接すれば良かったのだろう。母さんは俺を恩知らずと詰る。陸山はそれでいいと肯定してくれた。しかし肝心の俺は。凜奈に勝手に想いを寄せて勝手に裏切られた俺が、また勝手に凜奈を避けていると言うのは、自分勝手な話なのではなかろうか。
しかし一方で考えずにはいられない。もう、あの場面を目撃したその時から、凜奈に対し遠ざかりたいと言う感情が渦巻いていた。早く忘れてしまいたい。保健室でああ言ったのも、その一心からだった。いつまた過呼吸と眩暈が現れるか分かったもんじゃない。凜奈にはもう、関わらないんだ。彼女の顔を見たとき、俺は仄かな敵対心すら覚えた。それは、好きだった気持ちが裏返ったものだった。そうだ、全部凜奈が悪い……
「優太朗くん?」
ふと我に返ると、目の前に心配そうな顔をして覗き込むようにしている明香の顔があった。その背後には陸山の呆れたような顔がある。
「体調でも悪いのか、優太朗? お前まで倒れないだろうな」
「まさか、そんなわけない」
かぶりを振って思考の渦を振り払う。目の前の明香はまだ心配そうな様子だった。
「気が付いたらはるか後ろにいるんだもん。何か考え事でもしてたの?」
「そんなところだ」
二人の視線から逃れるように脇の店に目を移してみると、果物屋の店頭に半分に切られた大きなスイカが赤い実を露出して置かれていた。冷却器の台の上の真っ赤な実は、危ういバランスの上に置かれて今にも落ちてしまいそうだった。
と、丁度俺が見ている最中、店員が装置の角に体をぶつけ、半月型のスイカが振動で揺れて台からはみ出した。
「あっ!」
声をあげた時には、既に真っ赤な実を持ったスイカは地面にぐしゃっと言う音をたてて落ちていた。果実が溶けだしたみたいにして崩れ、地面に散乱する。
陸山と明香も、横の店の騒動に気が付いたらしい。
「あーあ、だからスイカってやっぱ丸ごと売った方が良さそうなのにな」
「まあ、丸ごとだと余っちゃうこともあるから、半分にして売るのも需要があるんだよ」
俺は、そんな二人の会話には加わらず、落ちたスイカを眺めていた。店の奥から店主らしき人が出てきて後処理に加わっている。スイカは、地面に赤い果実を投げ出し地熱と太陽光に晒されながら無残に飛び散っていた。まるで、水分をたっぷり含んだ肉片のように。
空からは、ぎらぎらと真夏の陽光が照り付けていた。




