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エピソード18 続

「1組で誰かが倒れたんだって」

 昼休み、陸山と明香と3人で駄弁っていると、明香がそんなことを口にした。陸山の机の周りに集まった俺と明香は、二人して奴の机の端に尻を載せて椅子代わりにしている。明香は、俺の方を見て続けた。

「で、先生たちが今臨時職員会議を開いてるよ。うまくすれば5時間目の授業なくなるかもね」

「ばっか、今更5時間目だけなくなったところで大した恩恵もないじゃん」

 言ったのは陸山だ。俺は軽く奴を睨んで言った。

「お前は窓際でテスト受けたことないからそんなこと言えるんだよ。あそこマジで暑いから。熱中症の人が出ても不思議じゃないね」

「お前がならなくてよかったな」

 陸山のセリフは割と冗談になってない。

「まったくだな」

 心底そう思う。頭脳労働の上に肉体まで消費しながらテスト受けなきゃならないなんて、この学校も早くクーラーを設置するべきだ。

「私立中学ならクーラー付いてるだろうにな。俺、高校は私立に行くわ」

 頭の後ろで腕を組みながら、椅子にもたれて陸山が言う。その様子を見て、明香は小さく笑った。

「私立って、頭いい人しか入れないよ。ここら辺だと」

 それから、明香は俺の方を見た。

「優太朗くんは、どこの高校志望?」

 高校か……もう3年の夏である。高校受験もそろそろ考える時期なのだろうか。

「べつに。俺は入れればどこでもいいや。明香は頭良いから市外の高校だろ? 公立にせよ私立にせよさ。」

 市外には勉強のトップ層が集まる高校がいくらでもある。明香は頭が良いから、きっとそこに行くのだろう。すると、明香は少し顔を曇らせた。

「う、うん……一応、隣町にある県立高校を目指してるけど……」

「けど?」

 そこで、明香は少しはにかんでから言った。

「優太朗くんと一緒の高校もいいかな」

 陸山が「カッ」とわざとらしく呆れたような声を吐いた。

「昼間っから惚気んなよなー。このクソ暑い中に」

「上手いこと言ったつもりかよ……」

 そうぼやいたはいいものの、俺は何と返したら良いか分からなかった。実を言うと、高校どころか夏休みの身の振り方にすら迷っているのだ。具体的に将来を見据えるような余裕は、今の俺にはない。


 丁度そのとき、学級委員の男子生徒が興奮気味に教室に駆け込んできた。教室前方に立った彼に、それぞれの過ごした方で時間を潰していたクラスメート達の視線が集まる。彼は、教室全体を見回して言った。

「みんな、5時間目のテストは中止だって! もう帰り支度していいって先生が言ってたよ!!」

 その瞬間、大きな歓声が教室中に響き渡った。三々五々でそれぞれ談笑に勤しんでいたクラスメートの誰もが一様に喜色を浮かべている。あとにテストを控えているのでだいたいがこの教室内で大人しく談笑かテスト勉強に励んでおり、通達は一辺にクラス中に伝わったことになる。

「やったな、優太朗。これで帰れるぞ。それどころか遊べるぞ!」

 どうでもいいようなことを言っていた陸山までもが組んでいた腕をほどき、前のめりになって嬉しそうに声をあげた。もちろん、俺だって嬉しい。

「残りのテストはどうなるんだろうね?」

 明香が当然の疑問を口にする。が、

「それは俺達が考えることじゃない。実質、これで期末テストが終わったようなもんだし、これから遊びにでもいくか」

「いいな、それ! 行こう!」

 陸山も乗り気だ。

「詳しい伝達事項は、後で先生が来てホームルームで通達するらしいです。とりあえずは、帰り支度をして待機とのことです!」

 学級委員の彼が前で声を張り上げるが、もはや誰も耳を貸さなかった。最後の課題が思わぬ形で去ることにより、皆は何より嬉しそうな様子であった。もちろん、この俺も……




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