エピソード13-2
18時ぴったりの時刻になると、一向は駅からぞろぞろと移動を始めた。紺を中心に種々の傘がばさばさと開かれ、駅前からの移動を始める。移動の際、俺は六浦を捕まえて声をかけた。
「なあ、店には既にどれくらいがいるんだ?」
「ひぇっ!? ああ、七瀬君……」
近くに居たので、ちょっと気になってきいてみたのだが、まるで不審者に声をかけられたが如き反応だ。少々オーバーアクションに過ぎないか。一行は二列になって傘を広げ、各々会話に興じている。傘と通行人の関係から、道では二人しかならべないのだ。そのせいで、結構長い列になっている。俺は六浦の隣に並んだ。
「部長がもう行ってて、そのお付きの子が数人かな。もうこれ以上はあんまり増えないから安心して」
ふふ、と笑われる。別に人が増えて不快になるわけではないが。そこで俺は、ふとついさっきの六浦と陸山のことについて思い出してしまった。
「六浦さ、」
「ん??」
「陸山と付き合ってるのか?」
軽い気持ちで尋ねてみたが、六浦は面食らったように口を開けた。その反応を見て、ようやく俺はデリケートな話題を安易に振ってしまったことを悟った。
「あ、ごめん。別に言いたくなかったらいいんだ」
六浦は隣で傘を傾けて表情を隠した。本格的に何か会話の地雷を踏んでしまったような気がする。すると、後ろから声がかかった。
「それは邪推ってもんだ、優太朗」
陸山が、いつの間にか俺らの後ろに立っていた。傘の下の顔は、複雑な笑みを浮かべている。反応に困る誕生日プレゼントをもらったような、そんな顔だ。しとしと降り続く雨の中、陸山の顔には傘の影がかかっている。
「確かに六浦は優しいし気立てもいい。おまけに胸もでかい」
それは本人の前で言っていいのか? 六浦の傘は傾けられたまま。
「だが、俺らは付き合ってないし、今後ともその可能性は皆無だろう、な?」
最後の言葉は六浦に向けられた言葉だろう。そう水を向けられると、六浦も顔を上げざるを得なかったのだろうか。傘を上げて隠していた表情を露わにすると、六浦は笑っていた。瞬時にそれと分かる愛想笑いだったが。
「もう、本人の前で胸が大きいとか。それ、セクハラだよ」
たしかに。言われた陸山も苦笑いである。それと同時に俺も納得する。この二人は、本当にそんな仲ではないのだろう。しかし、ではどんな仲なのか? 無遠慮に尋ねてしまった俺は自身の行動をしっかりと戒めつつ、けれどもこの二人に関して感じるどこかしらの奇妙な違和感は、拭うことができなかった。
教室での目配せといい、何かしら妙に連帯した空気が二人に流れており、何かがあるような気がする。
……まあ、考え過ぎかもしれないが。
店に着くまでに、陸山と俺はしょうもないバカ話を続けた。そこに、時折六浦が混じる。予約した店までの道のりは、思いのほか短かった。




