第七章 ターン
「おいおい、何帰ろうとしてるんだよ?」
「「「「!」」」」
四人は直ぐさま俺が立っている方向を向いた。
「なっ、何で生きてやがる!」
「そんな、私は確実に心臓を貫いた筈なのに・・・」
「それじゃぁ、これなーんだ?」
俺は地面に落ちている茶色のマントを拾って見せた。
「み、身代わりの術!」
「くっ、それを計算に入れるのを忘れていた。だが、今まで測った力を見ると僕達四人で掛かれば殺れる」
シルバとラドが両側から襲って来た。
さて、今のこいつらは完全に俺を殺ろうとしている。が、一つ間違えてはいけないのが、ほんの五分前までずっと俺はこいつらの猛攻を受けていた。
この戦闘がターン制なのだとしたら、さっきまで奴らのターンと言う事になる。
ならば、ついさっき奴らのターンは終了した事になる。体制を整え、本気を出した俺に四角はない。
少し変な話をしてしまった。
結論を言おう。
「悪いな。次は俺のターンなんだ」
シルバのその一撃は確かに強いが、ただそれはシルバの気迫によってビビッてよけれないだけだ。
実際にはただ少しだけ速くて当たるとめちゃくちゃ痛いパンチなだけである。ちゃんと見て、それを避ける。何も難しい事ではない。
俺は腰を低くし、拳を構える。シルバのがら空きの腹に向かって、
「一点集中!『超・正拳突き』!」
体に流れる魔力を右拳に集中し、シルバの腹を思いっきり殴る。
そこからは言わなくても分かると思うが、数百メートル先までシルバはぶっ飛んだ。
「くっ、しかし僕の計算に狂いはない!」
直ぐさまラドとレイが攻撃を仕掛け、矢が飛んでくるが、それをひょいひょいと回避し、レイの両手のナイフを掴む。
「このっ!」
「『腐酸溶解』」
次の瞬間俺の持っているナイフがドロドロと溶け始めた。
「なっ、これは強力な酸!」
「そ言う事。はあっ!」
腹に一撃食らわせる。
「レイ!くっ、だが僕のスピードについてこられた者は誰もいない!」
ラドの本気なのか姿が消えた。
シュッ
ってやつだ。
「けど、空中だと意味ねーよな?『旋風線』」
突如ラドの下から風が吹き荒れた。かなり強い風の為ラドは空中に浮く。
ラドの能力は地面を蹴る。つまり足で動かす事によってそのスピードを上げる。決して周囲を遅くする能力ではないのだ。
ならばこうやって空中に飛ばせば、高速で動く事は愚か。体一つ自由に動かす事もままならないだろう。
「しまった!」
「残念。『炎雷』!」
ラドの真上から炎と雷が入混ざったものが降ってきて、ラドの体を直撃した。
ラドはそのまま地面に落ちた。
「逃げた方が得策だと思うけどな」
俺は左から飛んできた矢を握りながら言った。
「つ、強い!けど、こんな所で!私は!『奉納』!」
最後に残っているエミナは自身の覚悟を決め、攻撃を仕掛けてきた。
エミナの弓は光り始め、矢の威力は増していた。
なるほど、超遠距離からの攻撃はこのせいか。
「『奉納』!」
次は矢が同時に三本同時に打ってきた。
にゃるほどね。あの『奉納』をする事に矢の威力などが上がる訳か・・・。
「『緋炎・炎龍』!」
飛び出した炎の龍はそのままエミナに向かって飛んでいった。が、
「バカにしてないでくれる?『奉納』三度の『奉納』をした私にもはや死角はない!」
次の矢はかなりのものだった。
龍の炎を掻き消し一直線に俺に向かって飛んできた。その速さもバカに出来ないものだった。
「マジか」
俺は矢を何とか避ける。
エミナの弓は微妙に蒼い光りを帯びていた。
俺のさっきの魔法は一応上級魔法に値する。それを簡単に潰してしまうとは、それ以外も全て潰されてしまうのかもしれない。
そうしているうちにエミナは次々と矢を飛ばしてくる。この矢が上級魔法に匹敵する力を持つのなら俺も当たってしまえば、危ないかもしれない。
「ちょろちょろと!」
さて、そろそろしないと。
と、肩と足をかすり血が出た。
それでもエミナは攻撃の手を緩めなかった。
「所詮傭兵!」
まるで何かに突き動かされる感じだった。
「私は!守る!家族を!皆を!」




