第六十八章 天使対傭兵
俺とこの天使の戦いは壮絶を呼ぶものだった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
闇と光が入り混じって反発する力が爆発する。
『天使化』はこの前使ったので、当分は使えない。少なくともこの戦いでは無理だ。天使に対しては炎や雷系の魔法を使っていても倒せたが、この天使に余裕は見せられない。
天使に対して最も有効的な魔法のみを使うしかない。
「『黒式・漆黒砲』!」
近づいて来るアリエルに向かって撃ちまくるが、高速で回避して近づいて来る。
「ちっ!」
「私からは逃れなられない!『ホーリーアロー』」
エミナと同じ技だが、ホーミング性能付きであった。
「くそっ!『旋風線』!」
矢はそのスピードを失い、空へと弾かれた。が、空中で方向転換し、俺に向かって飛んで来た。
「がっ!」
ギリギリで回避したが、膝と肩に刺さる。
「さぁ、これで解ったでしょう?あなた以外の者は見逃します。大人しく捕まりなさい」
「『牧場計画』。そんな計画を企んでいる連中に、素直に捕まると思うか?」
「『牧場計画』・・・。私もそれは不本意な計画だと思っています」
「だったら!」
「しかし!今の人の世は腐りきっています。腐敗した政治。金しか頭にない貴族。この世界の支配者は人だと言うのに・・・」
「・・・あんたにはあんたの思うことがあるんだろう。けど、俺はそんな計画を見過ごす訳にはいかないぜ」
「ユウ・・・どうしてもというのなら、全力で私を倒しなさい!」
アリエルは再度剣を構える。
その瞳に何の迷いも無かった。
「いいぜ。四の五の言うより手っ取り速い。それに、今までだって、そうして来たからな。誰も、誰も自分の知らないところで死んで欲しくないんだ!」
「知らないところで・・・・・・くっ!」
アリエルは一瞬戸惑ったような表情になったが、直ぐに戻って飛んで来た。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺の攻撃とアリエルの攻撃を衝突しようとした時、
「ヴォォォォォォォォォォォォ!」
俺とアリエルは今現在、死龍の谷の中間。入り口付近にエミナ、リタ、フィアがいる。距離的には十分こちらが見える位置にある。
そして、この叫び声は、
「龍が!」
俺とアリエルの間に叫びながら骨だけの龍が出現した。
「なっ!こんな所で魔力を使い過ぎたせいか!」
「こんなのと戦うなんて、嫌だぜ!」
ただえさえ天使と戦っていたのだ。
それに、このバカでかい龍となんて戦えるか!大きさ的にも赤龍、白龍のどちらかだ。だって、牙無いもん。
「皆!逃げるぞ!」
「ド、ドラゴンじゃん!」
「私達が抜いた牙の持ち主ってことか!」
「ユ、ユウ君も速く!」
エミナ達は先に逃げ始めている。
俺はそれに必死に追いつこうとしているが、龍の方が一足早く、その尻尾が俺を後ろから襲った。
「しまった!」
ガキンッ!
痛くない?
「あなたを助けた訳じゃありませんが、こいつのせいで戦いが無駄になるのは不本意です。私が一時的に抑えますから、今のうちに!」
「す、すまん!」
俺はその場をアリエルに任せて走り出した。が、
「きゃっ!」
龍の攻撃にアリエルが地面に落とされる。そして、その巨大な足で踏みつけようとしていた。
俺は一瞬立ち止った。
助けた方が!けど、相手は敵なんだぞ!
だけど!
「エミナ!悪い!直ぐに戻るから!」
「う、うん!」
俺はエミナ達に背を向け、ドラゴンの足の下に滑り込む。そのまま、巨大な足に両手を向けた。
「な、何を!」
「『超・正拳突き』!」
ドラゴンの足を少しだけ押し上げる。その僅かな隙を突いてアリエルを担ぎ、飛び出す。
「か、間一髪!」
「前!前!」
「え?」
次の瞬間、目の前にもう一体のドラゴンが出現した。
やばい!このモーションは鉤爪による薙ぎ払い!
「『七鍵守護神』!」
鉤爪は盾を簡単に破壊し、俺達を吹き飛ばした。
「ぐっ!」
あっ、こんな所に鉱山が・・・。
「アリエル!付いて来い!取り合えず、この中に!」
「ええ!」
俺達が入り口を通過した時点で龍が攻撃をしたので入り口は塞がれた。奴らの攻撃も奥までは通じないだろう。
「はぁはぁはぁはぁ・・・良かった」
「き、危機一髪でしたね」
が、俺達も外に出る方法が無くなった訳だ。まぁ、さっきよりかはマシな状態と言えるだろう。
それに、生憎この天使は今までの天使と違って話が通るようだ。
「と、とにかく、ここから出るまで一時休戦といこう」
「わ、解りました。問題はありません」
そう言ってアリエルは坑道を歩き始める。
その後姿は本当に、本当に馴染み深いものを感じた。
「どうしたんですか?」
「何でもない」
俺はそう言ってアリエルの隣を歩く。
ったく、何でこんな風に思うんだ。こいつは、敵なんだから。
「それしても、この坑道何処まで続くんだ?」
小さく光る球体を出現させたので、三メートル前はよく見える。
見ると、アリエルの右手にはあるべき物が無かった。
「お前、剣どうした?」
「天使をお前呼ばわりなんて!」
「はいはい、天使殿。剣は?」
「・・・何処かに落としたようで・・・」
「あー」
何と言うか、こんなドジをする奴はあいつぐらいだと思っていたが・・・。
「私の顔に何か付いているのですか?」
「そういう訳じゃないが・・・。いや、何でもない」
アリエルを見て不意にサシャを思い出してしまった。
ったく、もっと緊張感持てよ。俺。
「ふぅ、少し休憩しましょうか?」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・そうしてくれると嬉しい」
前の戦闘があったせいか、俺は体力的に限界に近かった。
なのに、この天使は平然としている。
何て言うか・・・・くそっ!
俺とアリエルは地に座り、壁に背中を預けた。
この後!
アリエルとユウの間に!




