第六十五章 紅の騎士
枯れ木 内部
「・・・ここ、ホントに木の根っこの中なのか?」
ヨシュアは驚いた様子で言った。
「ああ。それにしても、広いな・・・まぁ、いい。行こう」
俺達は最深部へ向けて歩き始めた。
小一時間歩くと多くの魔物と遭遇したが、苦戦することはなかった。
「んで、このバカでかい門は一体何なんだ?」
俺達二人の前には隙間など何処にもない巨大な門が構えていた。
魔法を数発食らわしてみるが、ビクともしない。
「・・・おい、ユウ。一体どうしたらいいんだ?」
「知らねぇよ。割と強いの何回も当てたんだが・・・ん?」
すると、門が音をたてて、開き始めた。
門の奥からは一人の騎士が現れた。
しかし、その瞳は真っ赤に光っていて、もはや人間ではなかった。
「人間じゃ、ねぇようだな・・・どうする?ユウ?」
ヨシュアは剣を構えながら言った。
それに反応したのは俺ではなく騎士だった。
「我が名は騎士。この枯れ木を何百年も守る聖騎士である。侵入者は排除する」
そう言って黒く染まった剣を抜いた。
「どう考えても聖騎士って感じじゃないけどな・・・」
「考えても仕方ない。行くぞ!『緋炎・炎龍』」
炎の龍は奴に向かって直進する。
「ぬるい!『ホーリーランス』!」
空いている左手には光輝くランスが出現し、龍に向かって放った。龍は一撃で粉砕し、俺達に飛んで来た。
「聖騎士ってことだけは間違いなさそうだな。『フレイムランス』!」
ヨシュアが俺の前に飛び出て、ランスに形状が変化した剣を突き立てた。
眩しい閃光が発生し、互いの力を相殺した。
「・・・ふぅ・・・強いな」
「伊達に聖騎士と名乗ってはいないな・・・どうする?」
「よし、ヨシュア。お前が突っ込んで時間稼ぎをしろ」
「・・・時間稼ぎってことは・・・何か策でもあるのか?」
「ふふっー、奥の手でも使ってやるよ」
「奥の手?」
「ああ、大変エネルギーを使うから控えていたが、別にいいだろ」
「待て待て。そんなに強いのなら、最後のラスボスにでも取っておこうぜ」
「ラスボスって、こいつがそうかもしれんぞ」
「何となくそんな気がするんだよ」
「だったら、こいつどうやって倒すんだ?」
「お前の奥の手と俺の奥の手じゃレベルの差は歴然としているだろう。だから、中ボスクラスの奴には、俺程度の奥の手でいいんだよ・・・下がってな。こいつは俺が倒す」
そう言ってヨシュアは前に出る。
いつにも増してその背中は頼りに出来そうであった。
俺のことヨシュアはユウが後方に下がるのを確認すると、スッと目を閉じた。
今思うと、いつもあいつに助けられてばかりだった。
頼りに出来る奴だと思っているが、同時に悔しいという思いが生まれた。
勝ちたい。けど、いくら修行してもいくら戦っても、俺はユウには勝てない。
だから、ユウ。
この俺の姿を目に焼きつけてくれ。
「どうした?来ないならこっちから行くぞ!」
そう言って聖騎士は突撃して来る。
「おいおい、焦んなよ。俺の折角の見せ場なんだから」
剣を向ける。
「『紅蓮・煉獄装』」
俺の体に炎の鎧が出現する。
「こいつの炎は、俺の魂以上に燃え上っているぜ!『煉獄剣』!」
剣が炎に包まれ、巨大化する。
「行くぜ!」
「おおおおおおおおおおおおおお!」
聖騎士の攻撃を全て見切って避ける。
「くそ!『ホーリーランス』!」
光のランスをたった一振りで破壊する。
「まだまだ!『烈火絶影斬』!」
炎の影が聖騎士を襲う。
「ぐう!」
聖騎士は全ての攻撃を受け流すことが出来ず、鎧にヒビが入り始めた。
「こんな所で!『セイントブロー』!」
聖騎士は巨大な無数の光の矢を放ってきたが、この俺の前にはただのゴミクズである。
「だから、言っただろ?焦るなって・・・『炎帝』」
聖騎士の胸に一撃食らわせる。が、対してダメージはない。
「ふっ、こんな攻撃・・・・ぐぅ!熱い・・・熱い!」
聖騎士の鎧が燃え始め、奴の動きが止まる。
「この技は、相手を内部から燃え尽きさせる技。ホントなら、こんな技は使いたくなかったがな・・・」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
そう言って聖騎士の鎧は解け、そこには何も無くなった。
「す、すげぇよ!」
「ユウ・・・」
「ヨシュア、いつの間にこんな技覚えたんだよ」
「はぁ、ったく。お前が恋人と色々やってる間、俺は俺流の考え方で編み出したんだよ」
「でも、すげぇよ」
と、鎧を解除する。同時に体がプスプスと焦げ臭い。立ち眩みもする。
「どうした?」
「ああ、ちょっとな・・・副作用というべきなのだろう。あれ使うと、こうなるんだよ。まぁ、ちょっと時間あれば大丈夫だから」
「なるほど。んじゃ、少し休みますか」
俺とユウはその場に座り、しばし休憩を取った。




