第六十四章 枯れ木
オリビアの南エリアに枯れた大木がある。
「これが・・・枯れ木か・・・」
エミナはフィアとリタ、アリサと約束していた用事があるらしく何処かに出かけてしまった。
おかげか、隣には一人の男がいた。
「こうしてお前と一緒に依頼行くの、久しぶりな気がするなぁ」
「実際には一度も行ったことないけどな。ヨシュア」
目の前の枯れ木は十メートル程度の高さだった。
枯れ木が何故こうして倒れないのはもしかしたらまだ生きているんじゃない?と、言う人もいるが・・・。
「どうだ?ユウ」
「ああ、あともうちょっとで全体像が把握出来る。俺の魔法でもこんなにも時間が掛かるだなんて・・・は?」
「どうした?」
『索敵』を発動していた俺は木全体を見てしまい、一瞬変な声で反応していしまった。
「この木・・・根っこがかなりでかい」
長さ四キロ、太さは軽く四メートルを超えている。中は空洞になっているのでおそらく何らかの魔力が木全体を支えているのだろう。
「なるほど、中は空洞で最深部には何か怪しいものがある・・・でも、どうやって中に入るんだ?」
「ん~、普通ならここでガバッ!って、、開くと思うんだが・・・」
すると、隣の民家に住んでいた女性が出て来た。
「あなた達、用がないならその木から立ち去っていった方がいいわよ。その木、悪霊が住んでるって、悪い噂あるから」
「あっ、いや用事があるんだ。この木に・・・」
女性の目が鋭くなる。
「なるほど。その用事とは?」
女性に聞こえないような小さな声でヨシュアに言う。
「なぁ、どうする?言った方がいいか?」
「俺に聞くなよ・・・だが、ここは言った方がいいだろう」
「根拠は?」
「だって、美人だし」
「そんなんで決めちゃっていいの?」
「・・・・・・」
「何か言えよ」
「別にいいんじゃねーの?その、この枯れた木の花が必要なんだろ?だった、手段なんて特に選ぶ必要はないだろ」
「納得」
俺は女性に言った。
「俺は、ここの・・・こいつの花――――」
と、俺の首元に鋭い剣が押し付けられた。あともう一押しでスパッ!といっちゃいそうだ。
「何処で知った?」
「え・・・あ・・・いや、その・・・出来ればこの剣を退けてもらえると楽に話せるんですけど?」
「・・・・なるほど。ここで下手に戦いを起すと、私もただでは済まなさそうだ」
そう言って剣を構えているヨシュアと俺を交互に見た。
「彼もそうだが・・・君もかなりの実力者だろ。解った。敵意はない」
剣を腰の鞘にしまう。
「それで、それについて何処まで知っている?」
「ああ、この枯れ木に花が咲くってとこまでだ。俺はその花が欲しい」
女性は重い口調で言った。
「木の中は無数の魔物とトラップが待ち構えているわ。今だ生還者は0。おすすめはしない」
「どうして?」
「私の夫はこの木の・・・あなた達と同じ目的で木の中に入った。枯れ木の花の蜜『命の雫』はどんな死にかけの命でも、一瞬にして治すことが可能なの・・・当時、私の娘は流行り病にかかってしまったの。だから・・・あの人は・・・」
「・・・・・・」
「話がズレしまったわ。一年前にも憲兵団の一個大隊が突入したけど、誰も帰って来てないわ。この道はいつでも私が開けてあげる。だから、覚悟もないままこの木の中に入ろうなんて思わないで・・・」
そう言って女性は家の中に入って行った。
「・・・なるほど。ヨシュアはどうだ?」
「ふっ、ユウ。俺をあんまり甘く見るなよ?これでも幾銭もの修羅場を掻い潜って来た身だ。そんなの、とっくに覚悟なんて出来てるさ」
「そうか・・・俺も、覚悟なんて出来てる。その、『命の雫』がないと俺達は立ち止ったままだ」
「本当に行くの?」
「ああ、俺達はとっくの昔に色々覚悟を固めたんだ。だから、今更どんなことを聞こうと、何も感じはしないさ」
「そう、あなた達は強いのね・・・解ったわ。開けるわよ・・・」
そう言って女性は目を閉じる。
「我が願いを聞き入れたまえ『開放』!」
すると、大きな地響きをしながら木は真っ二つに分かれた。そこに地下へと繋がる階段が出現した。
「これが・・・」
「さぁ、私は道を開いたわ。精々死なないように」
「ああ、生きてお前の顔を驚かせてやるよ」
「んじゃ、行きますか」
そう言って俺とヨシュアは枯れ木内部へと侵入した。
そこから先は、恐怖と絶望が支配していた。




