第六十一章 汚いやり方
闘技場の特別席に座っている金髪の女性が息を漏らした。
「ふふ、あれが天使の血を引く男ねぇ・・・」
女性は数人の男達に命令を出すと、笑いながら言った。
「さぁ、ゲームを始めましょう。ふふ、楽しみだわ」
その微笑は闘技場の真ん中に立っているユウに向かって送られたものであった。
俺は腹に一撃だけ食らっていた。そのせいか、足取りは重く、自分で応急処置をした状態で自身の待合室まで歩いた。
その廊下、複数の男達が立っていた。
彼らは躊躇なく拳を振り下ろして来た。
「がっ!」
先の戦闘で体力が消耗されていたおかげか初撃を食らってしまった。
直ぐに体制を整えて迎え撃つ準備をするが、衝撃が背中を襲う。見ると、後ろにも複数の男達が迫っていた。
向かって来る男達を撃退するが、数が多過ぎた。
それに、彼らの目には光が灯っておらず、何者かに操られていたと思われる。
こうなれば殺しは出来ない。
「ちっ!」
攻撃を受けながら魔法を発動させる。
「『麻酔針』」
数十本の針が男達に当たり、男達はその場に倒れた。
「くそっ・・・」
俺は若干フラフラしながら待合室に戻った。
待合室ではエミナはおらず、自分で回復薬を生成した。
「・・・まぁ、無いよりマシか」
時間になり、俺は会場へと急ぐ。
「僕の名前はカリヤ。大天使リコに使える第一の天使。悪いけど、君は殺させてもらう」
次の対戦相手(男)はいきなりそんなこと言った。
「ルール上、対戦相手は殺しちゃまずいんじゃないのか?」
「それは殺さない程度って意味だよ」
カリヤは右手に持った剣を構えながら走って来た。
「『フォトン・スラッシュ』!」
冗談から光の斬撃が来る。それを後退しながら避け、反撃の魔法を出す。
「『爆炎と連鎖』」
爆発が起こり、爆風でカリヤは吹き飛ばされた。
が、代わりに俺の肩に剣が刺さっていた。
「ぐっ!・・・」
そっと引き抜き、カリヤの方を見る。
カリヤは気絶し、倒れていたが俺にダメージを見事に与えていた。
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
試合が終わり、待合室に戻る。
決勝戦は次の日なので一秒でも多く休みたい。今までの疲労と傷が辛い。
それに、ここ最近いろんな所に行っていた為、体は悲鳴を上げていた。
「これが終わったら一度ゆっくり休むか・・・」
と、一人呟いているとエミナが入ってきた。
「ユウ君、怪我大丈夫?・・・じゃないよね。今、治療してあげるから・・・」
そう言って怪我の治療を行う。
「はい、これでオッケーだよ」
「悪いな」
「うんうん、次は決勝戦だし、頑張って」
「ああ。これで、また一つ素材が集まる・・・」
その日はぐっすりと眠った俺だったが、夜中に襲撃を受けた。
「そ、それはこちら側でも調査しています」
こう何度も襲撃を受けるとなると、俺も主催者側に連絡した。が、その返答は呆気ないものだった。
操られているとなると、ある程度の実力はあるだろう。しかし、一体誰だ?
決勝戦の相手はフラン・ゲイツ。剣士である。
相当な実力者であるが、魔法はおそらく使えない。なら、相手選手の妨害ではなさそうだ。しかし、結果的に俺が勝ち進むのをどうやら嫌がる奴がいるようだ。
・・・天使か。
やはり最終的にはそこだった。準決勝の相手、カリヤの上司にあたる奴の差し金になるのか。
ていうか、何故こんなことをするんだ?
ミファエルの言う俺が天界へ対する最後の勢力なのだとするなら、武器を持たないうちに殺してしまおうと、そう考えたのか?
なるほど、これがあいつらのやり方なのか・・・おもしろい。迎え撃ってやる。
考えがまとまると、エミナが俺を呼びに来た。
「ユウ、そろそろ時間だよ」
「ん、りょーかい」
エミナと一緒に通路を歩く。
「怪我、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。多分・・・」
襲撃を受けた腕の傷がまだ残っているが、大したことはなさそうだ。
「それじゃぁ、行って来る」
「うん、がんばって♪」
不意にキスをされ、俺もお返しとばかりにエミナにキスをし返す。
俺はエミナを背を向けると、扉を開けた。
「上で見てるから」
「ああ、俺の勇姿でも見ていてくれ」
眩しい光と歓声の中、俺の影は消えていった。




