第五章 それも出会い!
クラーケン退治から一週間が経とうとしていた。俺はそれから家賃七万バルの家に住み始めた。
取り合えずギルドの依頼を達成し、時折『紅の星』にも顔を出している。その度に酒を飲まされたりするものだから、しんどのなんの。
俺は街に繰り出し、昼飯を買う事にした。オリビアではクラーケンが名も無き傭兵に退治されたと大きく伝達されていたが、別にそれが俺だとはまったく知らされていなかった。
「あの、すみません。少し訪ねてもいいですか?」
目の前にお姉さんが現れた。
服装は普通の布を服である。
「はい、何でしょうか?」
「このクラーケンを退治した傭兵さんって、今何処にいるんですか?」
「ああ、それなら・・・」
ちょっと待て。
この人、よく見るとおかしい。何と言うか、こう威圧的な感じ?他の言い方をすると何か俺に隠している事があるような?そんな感じだ。
それと匂いもおかしい。
このオリビアでは香水をつける人は貴族などが多いが、この人は貴族でもないのにこの服装だ。一般市民でも香水はつける人もいるが、何故だろう?こう、俺の中の第六感が不思議そうな顔をしている。
「あ、あの・・・」
それに、この人は腰にナイフを隠し持っている。つまり、市民に変装し、ナイフを隠し持っている。この手の仕事は暗殺の他ありはしない。
それにクラーケンを退治した傭兵の名前ではなく、所在地を聞いたのなら既に俺の名前は漏れている。
結果、この人は俺を狙っているのだ。が、暗殺者は必ずしも一人と限った話ではない。一人目がしくじったように二人目三人目が必ず何処か見えない所に潜んでいるのだ。
「あの?」
「あっ、すみません。その人、全然知らないんですよ」
「そうでしたか。ありがとうございました」
そう言って立ち去っていった。
なるほど、つまりそれが俺だと言う事。外見はバレていないと言う事だ。まあ、普段から顔が見えないようにしているせいでもあるのだろう。
・・・・・・。
考えても仕方なく、その怪しい人物を追う事にした。
お姉さんはそれから数十分程、歩く人を時折呼び止めては傭兵について聞いていた。
残念だったな。この街で俺の名前を知っている人は数少ないんだよ。
「あの、クラーケンを退治した傭兵さんの場所解りますか?」
「ああ、それじゃったらあんたの後ろにいますが」
「後ろにですか?」
お姉さんはそっと振り返り、扉から覗いている俺を見た。
しまった!
と、言う言葉今この為にあるに違いない。
俺のミスとはこの時点で二つあった。
まず第一にこの『紅の星』のギルドマスター。ギルドが俺の名前と姿を知っている事だ。第二に俺が彼女を尾行してしまった事だ。そのおかげでギルドマスターが俺のいる場所を知らせてしまったのだ。
「戦略的撤退!」
俺は直ぐさまギルドを出た。布で頬までを隠した。一応顔は見られていないが・・・。
「ちっ」
俺は人混みの中をスルスルと抜け出し、自分の家に戻った。直ぐに扉と窓に鍵を掛け、カーテンも忘れずにしておく。
バレたか?
彼女がプロの暗殺者なら見逃すはずがない。
仮に俺だと確信していたなら、何故さっき自分だと答えなかったと考えるはずだ。答えは簡単。自分自身の正体が既にバレているからだ。
ならば下手に近づいて殺すよりも、正面から殺しに来た方が合っているのだろう。
相手が自分の正体を知りながら尾行までしていたのだ。そんな小細工は通用しない事ぐらい誰だって解るはずだ。
さて、奴のターゲットはまさしく俺。昼間は目立ち過ぎる。恐らく、仲間を引き連れて夜中を狙って襲って来るに違いないだろう。
ギルドマスターはこの事を知らない為、俺の家はバレている。既に下っ端あたりが監視をしているとしたら、下手に外に出たり、この街から逃げるなどは逆に危ないだろう。
ならば静かに自分の家に隠れてカウンターをお見舞いすればいいだけだ。
それにしても、何故俺なのだ?
まさか、帝国を潰すと言う目的がバレたのか?いや、そんな筈はない。相手に世界中の人間の心読む魔法石があれば別だが、
多分、クラーケンをあの海に放り込んだ奴らの一味なのかもしれない。怒って、俺を殺しに来たとか、もしかすると未来に驚異になりえる存在とか言ってかもしれない。
きっと、一人で倒した。というのが実際効いているのかもしれない。
そうこうしているうちに真夜中が来た。
別に今夜襲ってくる訳ではないが、夜まで俺は外と接触していない。つまり奴らがあの後どういった行動に出たのかは解らないという事だ。
敵は五十人前後。
家の周りの民家の影に隠れているが、少し離れた地点に四人の男女二人ずついる。この四人が暗殺部隊の本隊だと言っていいだろう。その周りは威力偵察や俺を家から炙り出す為。もしくはこれが決着つくなら、別にいいんじゃね?的な奴らだ。
あの四人とは全くのザコ。と言ってもいい程である。
こうして俺は一人一人の魔力を感じ取り、誰がどの程度の奴なのか大体解る。
まあ、精密な事は全然解らんが。
すると、影に隠れている暗殺者達が一斉に俺の家に向かって来た。
ドアを小さな道具で開け、静かに入って来た。そして、ベットに向かって数人がナイフを振り下ろした!
が、血は全く流れなかった。
「ざんねーん、ここでした」
「「なっ」」
最初から天井に張り付いていた俺は降りると同時に三人に軽くラリアットを食らわす。
「ちいっ!」
「バレたぞ!」
その声と同時に窓やドアから一斉に暗殺者(下っ端)がなだれ込んで来た。
うわっ、むさい男達ばっか。
う~ん、面倒だから魔法でもいいんだが、部屋の修理代だなぁ。まあ、今は大量に金があるから・・・いっか。よし、うん。大丈夫。足りなかった、あの『鉱山の悪魔退治』にでも行こ。
あっ、これ家が壊れて周りの民家も巻き添えちゃって、お金が足りないフラグね。
「『爆炎と連鎖』!」
次の瞬間には家が半壊になったのは言うまでもない。
これで、ある程度は倒せたかな?しかし、家の中で使うと若干俺も煙をかぶってしまった。
次は本格的に戦っていきますww




