第五十八章 彼女の事情
「なぁ、機嫌直してくれよ」
アリサと俺が抱き合っていたのが原因なのか、エミナはさっきから不機嫌であった。
取り合えず、先にちくわを探そう・・・。
俺は城の奥まで探しに行った。すると、アリサ達が地下に何かあると言って、呼んで来た。
地下には頑丈な檻があり、そこにはたくさんの人が入っていた。
「話を聞く限りでは、ここの村人らしいですよ」
「なるほど。おそらく次のモルモットにでもされそうになったんだろう。とにかく、出してやろう」
地下牢に監禁されていた村人達を解放し、村へ帰る。
すると、その中の村長が一歩前へ出て来て長細い箱を持ってきた。
「ありがとうございます。これは、少しばかりのお礼です」
中を開けると、何とちくわが入っていた。
「ちくわ?」
「はい、この村に伝わる伝説のちくわと言われている物です。せめてものお礼にと」
「あ、ありがとうございます!」
俺はちくわを掲げた。
ちくわは嬉しいのか、少しだけ輝いて見えた。
「エミナ、いつまで怒ってるんだよ」
「別に、怒ってないけど?」
家に帰り、二人で食事をしていた時の事である。
「・・・・でも・・・・」
さっきから俺の食べている肉が異様に辛いのは何故だろうか?
エミナ・・・料理上手いのにな・・・。
食事を終え、自分のベットに転がる。
不意に隣の壁を見る。隣には今現在エミナがいるのだ。やはり、ここは男して謝りに行くべきなのだろうか?
「・・・・・・」
そんな事を思いながら天井の染みを数える。
そして、俺は決めた。
「やっぱ、謝りに行くか・・・」
男が女に謝るのはいつの世も当たり前の事だ。
俺は意を決して部屋から出た。
「・・・何やってんだ?」
廊下の隅にエミナを発見した。
「別に」
プイッ!
と、頬を膨らませながらそっぽを向く。
「エミナ、アリサと抱き合っててごめん。けど、あれは不可抗力というか、とにかく俺の本意ではないんだ。せめて、それだけエミナには解ってほしい。エミナ、大好きだから。それじゃぁ・・・」
とにかく言いたいことは言っておいた。
明日には・・・機嫌よくなってるといいんだけど・・・。
「・・・・?」
ドアを開け、自分の部屋に入ろうとすると、後ろの服を引っ張られる。
「エミナ?」
後ろではエミナが俯きながら俺を服を引っ張っていた。その頬は微妙に朱色に染まっていた。
「最近さ・・・何か、忙しく毎日が回ってて・・・私達、何にも出来ないないじゃん?」
「な、何をって・・・ん」
振り向いた瞬間、エミナの唇が俺の唇と重なる。
「・・・ん・・う・・・・うん・・・・」
長いディープキスの後、俺をベットに押し倒してエミナは言った。
「私だって!ユウ君のこと大好きだし、だからアリサちゃんがユウ君に抱き着いていたのを見て、少しだけ怒っちゃって・・・」
「わ、悪い」
「もう、いいよ。好きって、言ってくれたし」
エミナともう一度キスを交わす。
「もっと・・・もっと・・・」
互いを求め合い、激しさを増す。
「いいよ・・・ユウ君」
「エミナ・・・」
二人の声は、夜の空へと溶け合い、消えていった。




