第五十一章 そして、伝説へ
目を覚ましたそこには、真っ白な世界が続いていた。
俺のその世界の真ん中に立っていた。
「・・・ここは・・・」
いくら目を細めても、その先はただ白の世界が続いていた。
そして、声がした。
「ユウ・・・」
俺の名を呼ぶ。透き通った美しい声である。
「・・・誰・・・?」
目の前には白のローブに身を包んだ女性が立っていた。顔は髪の毛で隠れて見えなかったが、俺に向かって微笑んでいる。
「あなたはこんな所で立ち止まっている訳にはいきません。さぁ、行くのです」
「待て!訳解らんぞ!」
女性の体は徐々にだが消え始めた。
そして、言った。
「もし、あなたに救いたい者がいるのなら、あなたはこの力を制御しなければなりません」
それだけ言い残し、女性は消えていった。
「力・・・?」
「これで・・・世界は僕のものだ・・・」
「・・・・・・」
「なぁに、心配することはない。ユウ君も、無事に向こうの世界へ送り返してやる」
「・・・当たり前・・・」
ネスは少しだけ笑うと、言った。
「撃て」
その時だった。砲身が大爆発を起こした。同時に固定部分が破損し、レールガン本体は地上へと落下していったのだ。
あまりにも一瞬の出来事に、その場にいる者は状況が理解出来なかった。
一体、何が起こったのか。
「な、何が!」
「あのレールガンを・・・そんなことっ!」
エミナが後ろを振り向いた。
少し感じていた予想が自分の胸に刻み込まれる。
「だよね・・・」
その視線の先には、上からつまみ上げているような状態でいるユウがいた。上半身をぐってりとしているが、今のレールガンの暴発はユウが作り出したものだった。
「くっ!何処まで僕の邪魔をするんだ!」
ネスが銃を向けてユウに撃った。が、銃弾は何かによって遮られた。
「くそっ!」
そして、ユウが上半身を起こした。
その瞳に光はなかった。
眩しい光が放たれる。
彼の背には光り輝く、光の翼が展開していた。
「天使・・・」
エミナが呟く。
神々しく、美しかった。
「オレ・・・ハ・・・・オレハッ!」
ユウの放った光の光線が塔を破壊し始める。床は粉砕し、壁は崩れ始める。
「ユウ?ユウなの?」
意識が回復したシュリアが姿を現す。
そして、塔全体が本格的な崩落を開始した。バラスの地上部隊は撤退を余儀なくされている。
「ユウは、大丈夫だから、あなたは速く逃げた方がいいわ」
「でも・・・」
「速く!」
エミナはシュリアにそう言った。
シュリアは現状を理解したのか、直ぐに塔から脱出した。
兵士や研究員も逃げ惑う中、ネスだけは違った。
「バカな!人間が天使の力など!ありえない!天使の力は人間が使っていいようなもんじゃない!それも、ただの傭兵が!許されないのだ!」
ネスは怒りと憎しみをぶつけるように銃を乱射する。が、ユウの光が胸に貫く。
「がっ!」
その場に倒れ、その命を絶命させた。
「オレハ!マモル!」
それは、ユウの一つの意志と隠された力が彼を暴走させている光景だった。
塔の損傷は全ての階に広がり始めた。
そして、
「塔が・・・」
皆が息を飲んだ。
塔は音を立てて全て瓦礫に変わり果ててしまった。見る影もなく、ただの瓦礫の山がそこに存在していた。
その瓦礫の中の中心に二人の男女が抱き合っていた。
「ごめんね・・・」
「・・・・・」
「私が・・・私がもっとしっかりしないとダメだったのに・・・」
「・・・・・」
「いつの間にか逃げてた。君の実力は私がよく知ってるのに・・・ユウ君を信じようとしなかった」
「・・・・・」
彼女の温もりは徐々に彼を覆い、いつしか彼の目からも一筋の涙が溢れていた。そして、天から光の柱が二人を覆う。
シュリアは悟った。
帰るのだと。
「ユウ、ありがとう。とても、とても楽しい日々だった。あなたと過ごしたこの旅は絶対に忘れない。またね、後のことは任して」
シュリアは光の先に消える二人を見ながら、自国へと帰還した。
二年後、フィディアスとバラスは同盟を結び、大陸一の巨大国家へと成し得た。その後、伝説の傭兵がいたと、彼女の日記に記され、未来永劫幾人にも語り継がれていった。
次は主人公の覚醒についてですねww




