第四十八章 レールガン
「一体どいうことだ!まさか、これで終わりだというのか?」
バラス城会議室で王、リュク・バラスは怒りを見せていた。
「まぁまぁ、落ち着いて下さい」
「これが、最後だ。もうチャンスはないぞ?それに、傭兵殿はどうなっている?」
「問題ありません。先程、フィディアスの傭兵と接触しましたが、こちら側の有利は違いありません。それと、そろそろあの計画を実行させようと思います」
と、言って、白衣を着たメガネの男はそう言って会議室を出て行った。
「博士、ではあの作戦を実行するのですか?」
「そうだ。フィディアスも、この国も・・・全てを・・・全てを手に入れるんだ」
「解りました。では、後ほど・・・」
男の手元には一枚の作戦書類が握られていた。
『電磁投射砲開発計画』
「それで、これが異世界ものの歴史的文献?」
「ええ、それとこっちが今までに起こった怪奇現象。向こうにあるのが古代の伝説など」
デリア奪還から数日。
戦闘は大陸中心部で発生しており、取り合えず俺は約束の報酬を受け取っているとこだ。
「ふむ・・・」
一週間かけてそれらの資料に目を通した。が、特にこれといってピンと来るものがなかった。
「ないな~。こんなんだったら、たんまりと金を受け取るべきだったかな~」
「失礼ね。この王立図書館は大陸中の情報が詰まった宝の山よ?それを今だけ独り占めできるんだから、ありがたく思いなさい」
「けど、俺が手に入れたいものがここにはないんだ。他をあたるしかないよな・・・その前、エミナのことも・・・どうしたらいいのやら」
俺の中ではまだ信じられていなかった。
何故?
彼女は俺を裏切っていしまったのだろうか?俺と同時にこの世界に来て、座標がたまたま違い、俺とは違う場所に飛ばされたのだとしたら、
「向こうについてもおかしくないよな・・・」
本の山の中でそう呟く。
「・・・・けど、あの人はユウの大事な人なんでしょ?」
「ああ、そうだよ」
俺がたまたまこちら側についてただけの話か。けど、エミナは何故俺のことを知らないふりをしたんだ?
他にもおかしな部分はある。
エミナのことだから、俺の方に来てくれると思っていたんだが、流石に傭兵の端くれだな。
「それで、ユウは何処までついて来てくれるの?」
「言ったろ?この戦いの行く末までさ。まっ、エミナのこともあるしな」
「ふ~ん・・・」
「異世界人か・・・」
「どうした?急に?」
シュリアが不意にそんな言葉を漏らす。
「今思うと、何でユウってここにいるんだろうって」
「そんなこと俺が知るか。第一、命の恩人だぞ?」
「う、うん。それは解ってるんだけど。なんというか・・・」
「ん?」
「こっちに来た理由が何かあったらいんだけど・・・」
「別に何でもいいんだろ?この世界が、俺を、エミナをきっと必要したんだろう」
「・・・必要か・・・」
シュリアは少しため息を吐くと、図書館から出て行ってしまった。
次の出陣となるだろう日は、それから三日後に訪れた。
「いきなりだな・・・」
「仕方ないじゃない。本当に突然だったから・・・」
シュリアは言った。
「まっ、今は戦争中だしな・・・」
俺達の視線の先には巨大な塔が立っていた。その先端部分には巨大な筒のような物体が装着してあった。
その周辺にはバラス軍が待ち構えている。
「あれが、バラス軍最終兵器・・・電磁投射砲。通称、レールガン」
「あれ知ってんの?」
「ええ、何人ものスパイを犠牲にして手に入れた情報よ。あれは、電磁誘導を利用して、物体を加速させる装置。あれだけ巨大な物になれば、山が消し飛びそうよ・・・」
「それで、勝算はあるのか?」
「とにかく奴らがあれを放つ前にぶっ壊す。これしかないわ・・・」
「なるほど、解りやすく何よりだ」
「けど、問題なのは第一射撃よ」
「つまり?」
「あの第一射撃だけはどうしても阻止は出来ないわ」
「確かに・・・」
既に向こうは準備万全のようだ。ここから俺達がどのような攻撃手段を取ったして、その攻撃は国へと向かうのだろう。
「そこで、ガルド元帥による超防御魔法で初激を防ぎ、次の瞬間全部隊が突撃。情報だと、冷却に三十分はかかるわ。塔さえ破壊してしまえばこちらのものよ」
「なるほど。だが、あんな巨大な塔を建設して、解らなかったなんて言うんじゃないだろうな?」
「・・・地下に、隠してあったのよ。あれは大部分をくっつけただけの塔よ。あの国じゃ、建物一つ、二日もあれば建てちゃうのに・・・これだけ大きくても四日もあれば十分でしょう・・・」
そう言えば、機械が凄いんだっけ?
「さあ、作戦時刻よ。私達は近づいて来る敵の始末」
「りょーかい・・・来いよ、エミナ・・・」
午後五時二十三分 作戦開始
バラスのレールガンはこちらが動いた直ぐに放たれた。既に準備していたガルド元帥の超防御魔法。俺もこの魔法は使えないかもしれない。
青色の光る魔法陣はその役目を終えた。
「くそ・・・わしの魔力を全部持っていきおった・・・」
「今だ!大規模魔法!発動!」
次の瞬間スタンバイしていた中隊から一斉に大規模魔法が放たれた。どれも威力の高い魔法ばかりだ。それを百人で合体して発動させたのだ。
威力は期待していいのかもしれない。
俺達と敵の地上部隊が突撃する前に、それぞれの大規模魔法は塔の衝突した。
「やったのか・・・」
全員が賭けたこの奇襲攻撃。作戦が成功しなければ、一旦引かなければならない。しかし、そうなってしまえば全ては水の泡だ。
今の威力を見ると、ここから国まで届いてしまいそうな勢いだ。だからこそ、この一撃が通らなければ、負けと同じことなのだろう。
その場にいる全員が塔を見た。が、結果は見えていた。
目的はレールガンの無効化。
なので、あの塔さえ破壊してしまえば、一時的にどうにかなるかもしれないのだ。しかし、煙で見えないもの塔が崩落していない以上、作戦は失敗だった。
「そ、そんな・・・」
煙が晴れた。俺の予想通り塔は崩落さえもしていなかった。
『えー、残念だったね、フィディアスの諸君。大変素晴らしい作戦だっと思うぞ。しかし、計算外だったのはこの塔の装甲かな?』
俺達に聞こえるように拡張機を使って声を通してきた。
「この声っ・・・まさか、いや・・・そんな筈ない。だって・・・」
「?」
『こいつは、君達程度の魔法じゃどうにもならない程硬くてね~。けど、重いのが欠点なんだよ。だから、戦車とかの装甲には向かなくて、まあ目的が達成出来てからいいけどね。それでは、第二射撃まで御機嫌よう~』
そこで声は終了した。
「くっ、作戦は失敗した!総員退避!」
「おい!シュリアいいのか?」
「・・・・・」
「このままじゃ―――」
「どのみち国は滅ぶのよ!」
「っ!」
シュリアは愚痴のように言った。
「ユウだって今までの戦闘を見て解るでしょ?この国は、バラスに勝てない。今までの戦いだって、ユウがいたから成功したの!だから・・・もう・・・」
シュリアは全員が逃げる中、一人何処かへ消えてしまった。
俺はその背中に何も言うことが出来ないでいた。
「くそっ!」
木に拳を叩きつける。
今思えば、関わりたくなかったのだと思っている。
これ以上、自分のせいで変わる世界が嫌だ。戦局が変わり、フィディアスが勝利したとしても、それは異世界からきた俺のおかげかもしれない。
そのせいでバラスの民は辛い日々を送らなければならないのかもしれないのだ。
「何やってんだよ・・・俺・・・」
エミナのことも半分諦めている俺が、自分が嫌いになっていた。
「見殺しには出来なかったんだよな・・・」
この国を見て、助けたと思った俺がいたのだ。
だから、シュリアにあんな興味がなさそうなことを言ってしまったのだ。
「俺も、まだまだ子供だな・・・」
俺は木に腰をかけているシュリアを見た。
「最後に、手を貸すよ」
「別に、ユウの手なんて借りない・・・」
「俺は元いた世界でも傭兵だった。クズで、ダメな奴だったよ。ただ、復讐の為に生きていた。けど、あいつが教えてくれたんだ。生きる喜びを・・・だから、俺は戦う。大切なものを守る為なら何でだってやる・・・」
「大切なものを守る為か・・・ねえ、私も守れるかな?」
俺は言った。
「ああ、必ず」




