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ブレイク!  作者: ぞえ
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第四十七章 彼女の事情 

 デリアの城壁にエミナは立っていた。双眼鏡を片手にリードの鉄の巨人が四散する場面をしっかり見た。


「いや~、やられましたね」

「解っている。これも予想の一つ。作戦を次の段階へ移行する。死にたくなければ第三拠点まで一時戻るんだな。敵も一時撤退するだろうが、念の為だ」

「まあまあ、冷たいこと言わずに。一応、少し後退しておきますよ。それと、解っていますよね?」

「・・・解っている。バレないように・・・」

「ええ。その通りです」

 

 そう言って白衣の男は城壁から降りていった。

 エミナは巨大な土煙を見ながら、


「それがあなたの選択なんだね。誰もが安心していられる世界なんてない。現実は残酷。自分で選んで、自分が決める。自分が選択したのなら、それに後悔なんてない。あなたが守ってくれたように、今度は私があなたの為に戦う」




「おい、皆大丈夫か・・・?」


 俺が見渡すと、半数以上がまともに動くことは出来ないだろう。これなら作戦の続行は無理なのかもしれない。

 すると、シュリアの本隊がやってきた。


「作戦は一時中断よ。負傷者をつれて一時撤退」


 


「う~む、どうしたものか・・・先行部隊が壊滅的打撃を受けた以上、ここは他の部隊を投入するしかありませんな・・・」

「はい、敵も予想を上回る戦力です。しかも、今のがたった一機かどうかも不明です・・・」


 シュリア達はもう一度作戦を練り直していた。

 そこで俺は言った。


「仕方ねぇ。ここは俺が正面を無理やりブッ飛ばすから、そこであんたらが突っ込めばいい」

「そんなことが可能なのか?」

「ああ、俺の魔法で何とかする。後は何とかしてくれ、と言いたいが、敵の指揮官は俺のやらせてくれ」

「やっぱり、気になるの?」


 シュリアが覗き込んで来た。


「まぁ、あいつは・・・エミナは、俺の・・・俺の最後の希望なんだ・・・」




 作戦はその一時間後に発動した。

 俺を先頭とする全部隊が一直線に荒野を駆ける。


「常に最高速度を維持しろ!」


 全ての馬は密集隊形のまま前進する。今度は面倒なものは何一つなかった。おかげか敵の砲撃が始まった。


「師匠直伝『アースリ・バインド』」

 

 光の輪が騎馬隊全てを囲む。

 次の瞬間、砲弾は何かの壁にぶつかったように、目の前で爆発した。


「!」

 

 敵から見れば光の柱が迫っているようにしか見えないだろう。

 これは物理攻撃を全て遮断する防壁の役割をしている。更に対象に対して自在に動けるので通称動く要塞とも言われている。


「行くぞ!『超・正拳突き』!」

 

 魔法を解除し、馬を飛び降りる。同時に構えを取って、魔法を強固な正面を扉に浴びせる。

 扉は壁と固定している部分が破損し、扉がぶっ飛ぶ。

 同時にフィディアスの全部隊がデリアへ突撃した。

 

「突撃!!」


 が、突撃した部隊が矢の雨に襲われる。


「エミナ!!」


 矢が降って来た方へ俺は飛び出す。相手はもちろんエミナである。

 

「また会ったな!」


 やはりエミナは俺のことを忘れてしまったのか?

 洗脳されている・・・のか?

 俺の頭の中では何度も同じ考えが順繰り順繰りしていた。

 とにかく、戦闘不能になれば何とかなるだろう!

 すると、エミナは空に向かって弓を一気に何本も放った。


「一体、何を・・・」


 次は俺に向かって何本も放って来た。おそらく『千本桜』の小規模版だろう。

 だが、その程度で俺を捉えるには役不足だ!

 俺は構えを取り、矢を避けようとした。が、

 

「がっ!」


 いきなり上から矢が降って来た。

 なるほど、さっき放った矢か!

 正面と上からの同時攻撃に俺は可能な限りの回避行動に出た。しかし、腕、腹、頬に矢がかする。肩に至っては矢が刺さっている。

 

「痛・・・いつからこんなの考えていたんだよ・・・」

「ま、まだ立っていられるのか・・・」

「どうした?俺が今ので立ってちゃいられないのか?」


 エミナは少しだけ動揺していた。が、


「ふんっ!」


 次は三本放った。


「『火炎・車輪火』!」


 矢は炎を纏い、形状を車輪のような輪に変形した。加速力、破壊力、ともに矢とはくらべものにならないくらいだった。

 迎え撃つ俺は、


「『氷魔・斬鉄剣』!」

 

 氷の大剣が横から炎の輪が薙ぎ払うが、最後の一つを破壊しようとすると剣が砕け散ってしまった。

 氷の破片が宙を舞い、消えていく。

 体を何とかズラして回避するが、車輪は直前で曲がり、腹を直撃して後方にぶっ飛んだ。


「がっ!」


 痛・・・やばい、かなり痛い・・・。

 俺は腹を摩りながら立ち上がる。若干痛いが、この程度ならまだ戦えそうだ・・・。


「嘘・・・これ食らってまだ立てるの・・・本当に、信じられない・・・」


 エミナは更に驚いた表情をした。


「・・・本当に俺のこと、知らないのか?」

「うっ・・・知らない!あんた何て知らない!」

 

 どうも様子がおかしい。何だか、動転しているようだ。

 

「ち、近寄らないで!!」

「やっぱり、お前は俺の知っているエミナじゃないのか?」

 

 洗脳。俺の知っている洗脳とは異なる形だ。

 洗脳なら、洗脳で、もっと・・・こう、心がないようなもんだろう。今のエミナからそんな感じがまったくしない・・・。


「お、おい・・・エミナ、何だろ?」

「・・・・それが?ええ、そう。私はエミナ。ユウ、あなたが知っているエミナよ!どう?恋人がこんなのになって、幻滅しちゃった?」

「何か、理由があるのか?」

「もう一度言う。これは、私の意志が、私が決めたこと。今更、あなたには関係ない。次に会う時は、覚悟を決めて・・・」

 

 そう言ってエミナはその身のこなしで後ろに下がった。

 一人残された俺は、その後姿をただ見てるだけでしかなかった。


 その後、奇襲作戦は成功し、フィディアスはデリアを奪還することが出来た。




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