第四十九章 最後の殺意
「『黒式・漆黒砲』シュリア・・・耳、塞いでた方がいいぞ」
片手に持った巨大な銃の引き金を引く。
一番近くにある重戦車を破壊する。シュリアの手を引いて黒煙を利用してその中を飛び抜ける。
「『風速・二〇〇』」
人と機械の間を駆け抜け、門をぶち壊す。敵が侵入しないようにすぐさま魔法で塞ぐ。
「・・・ふう、これで何とかなった・・・だが、こっからだ」
「ええ、行きましょう!」
シュリアと一緒に階段を駆け上がる。
しかし、俺達の行く手を阻むように敵兵が上から降りて来た。
「ちっ、入り口にはいなかったのに!」
敵兵を次々と倒していき、丁度塔の中盤に差し掛かった所だった。
「ふう、少し休憩しよう」
「う、うん・・・私も疲れた・・・」
二人して壁にもたれかかる。
「これで半分か・・・」
「発射まで時間がないし、行きましょう!」
「元気いいな」
シュリアの背中を追いながら更に上へと駆け上がった。
「再装填に残り十分・・・急がせろ。僕の計算が正しければ、もうじき来るぞ・・・」
同時に最上階の扉が爆発したのは同時だった。
「ちっ、少し速かったか。まあ、何にせよ、久しぶりと言おうか。ユウ君」
俺の目の前にいたのはメガネをつけ、白衣を身に纏っている男だった。
「あんたも、随分と生命力が高いな。ゴキブリみたいだぜ?」
忘れるはずがない。
俺は百パーセント憎しみを込めて言った。
「ネス・ブランド」
俺の目の前に立っているのはネスだった。
メガネの奥から見える青の瞳は、まるでこの世界の神でもなったかのように俺を見下していた。
「シュリア・・・あいつは俺に殺らせてくれ・・・」
「え?」
シュリアの返答を待たずに俺は奴に近づく。
奴の数十メートル後ろにはレールガンの一部分が見えた。
あれを壊せば・・・だが、その前にお前だけは殺させてもらう!
「『緋炎・炎龍』」
炎の龍はそのままネスへと向かった。が、一本の矢が龍を掻き消した。
「この攻撃は・・・」
「悪いけど、ユウ。あなたの相手は私よ!」
エミナが後ろから出て来た。
「『ホーリーアロー』」
エミナを数十本の光の矢が襲う。
「くっ!」
全て見事に避け、攻撃の元を見た。
「ユウ、私の存在を忘れないで。あなたはそいつの相手だけをしてればいいわ。私は、この人を!」
「・・・ああ、任せた!」
シュリアをエミナに任せ、俺はネスへと向かった。
「お前を二度も殺さないといけないなんてな」
「くく、面白い。だが、前回の僕だと思わないことだ。君の攻撃を受けた時、死ぬと思ったよ。目が覚めればこの世界だった。理由はどうあれ、この世界の技術を取り入れ、僕は前回とは全く異なった形で進化した!」
ネスの後ろの床が開き、下から巨大なロボットが出現した。かなりでかい。この最上階もそれなり大きいが、あれが天井に向かって手を上げればついてしまう程に。
ネスはそれの胸部に乗り込む。
「さあ、究極の科学と究極の魔法。お手合わせといこうか」
シュリア達を見ると、俺らが邪魔なのか下の階で戦闘を繰り広げていた。
「・・・究極か・・・」
そんなものの為に、俺達はたくさんの犠牲を生んできた。
究極、それがこの手の中にあるのなら、もう少しだけ付き合ってもいいのかもしれない。ただ、エミナやシュリアはどうか生きてほしい。
俺はそれだけを祈った。
「これが、お前に対する最後の殺意だ」
不穏な空気が満ち溢れる中、戦いの権化は双方の攻撃によって始まった。
「『波動弾』!」
「『黒式・漆黒砲』!」
大爆発が起こり、煙から出てきたのはネスだった。
「『黒雷・雷帝砲』!」
右手に出したガトリンが火を噴く。更にその弾は電気属性を帯びていた。
弾は俺を狙わず、俺の周辺に着弾した。
「どうした?目でも腐ってんじゃないのか?」
「その強がり、何処までもつかな?『重雷方針』」
次の瞬間床に着弾した部分が光り、真っ直ぐ俺に向かって雷が向かって来た。
「ちっ!『七鍵守護神』!」
七本の柱が俺の周りに出現し、それ以外を全て断絶した。
「『拡散砲』」
次から次へと奴の攻撃が始まる。俺はその度に反撃魔法しか発動していなかった。
くっ、奴のペースに持っていかれている。持久戦になればこちらが不利だ。速くどうにかしないと!
「ほらほら!焦りが顔に出ているぞ!」
手をナイフのような刃物に変形させ、左右をうまく使って攻撃して来た。
この程度なら、
「それにしても、何故君はそちら側にいるのか、聞きたいね」
「うるせえ!」
「だって、君は帰りたいんだろう?だったら、手を貸さずに帰る方法を探せばいい。けど、何故そうしなかったのか?僕が教えてあげよう。それは、君が偽善者だからさ。目の前の人間が傷つくのは怖い。だから、平気で人を殺す」
「・・・・・」
「ん?間違っていないのかい?」
「ああ、そうだ!俺は偽善だ!偽物だよ!」
それでも・・・。
ステップを取りながら攻撃をかわす。
「『竜輝砲』」
肩から龍のような弾丸が俺を襲う。これをチャンスとして、俺は脚力魔法で上へ飛び上がる。
この位置なら向こうも手が出しにくいはずだ。
「食らえ!・・って!」
奴の姿は消え、代わりに隣にいた。
「『ジェットパンチ』!」
俺を地面に向かって叩きつける。
「がっ!!」
体が床にめり込み、悲鳴を上げる。
駄目だ。体が言うことを聞かない。上手く、動かせない・・・いてーーー。
指一本を動かす度に体がきしみ、激痛が走る。
かなりの攻撃力だった。
「ふふ、流石の君もあんな防御も取れていない状態での一撃は重かっただろうね」
「・・・・・」
俺は声も出せず、その場にいた。
「ったく、君を殺すのはこの国が目茶目茶に崩壊してからかな。うん、そうしよう」
そう言ってレールガンの再装填を急がせる。
時間にして残り五分。
止められないのか?俺は、大事なところで役に立たない。こんな世界に絶望を抱いた。それでも前へ進もうとした。
立ち止まらない限り、俺自身がそうであるように、世界もきっとそうなのだ。
紙切れ一枚に描いた物語も、終わりを告げる。
「終わっ・・てんじゃねーよ・・・」
「・・・感動したよ。その傷でまだ立てるなんて!素晴らしい!だから、人間は面白い!」
巨大な機械の塊の右手は巨大なガトリング砲に変形していた。
「少々惜しいが、君と別れを告げようか」
何が俺をここまで突き進めるのか?
一年前の俺ならここで黙って動かなかっただろう。では何故?理由は簡単だ。俺がそうしたいから。俺が望んで動いているから。
そうするしかないのだから。
この世界に来て色々学んだこともある。
傭兵として、男として、様々なことを学んだ。
偽善などと言われようと、それでも手を差し出す者を誰が偽善と言えようか。むしろ半回転して正義だと言われてもおかしくはない。
しかし、俺が正義と呼ばれるのは嫌だ。
俺はいつだって自分の為に動き、いつだって思うように動いた。そして、今この場に俺はいる。
俺の存在が何を意味するのか。それは誰にも解らない。きっと、気まぐれな神様にも解らないだろう。いや、解られたくない。
揺るがないもの。
これを、信念。と、呼ぶのかもしれない。
「鉄の紋章よ『LK・コンバット』」
そこには、砲台が鎮座していた。
右手と左手に巨大なガトリング砲が出現する。
これの一番の難点は移動できないことである。重すぎてというのもあり、砲台といっても過言ではない。
俺と奴が引き金を引いたのはほぼ同時であった。
ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
甲高い音共に銃弾が放たれ、奴の銃弾とぶつかり合う。時折抜けた銃弾が近くに当たる。
「ぐっ!」
肩、腕をかする。
残り五パーセント程の体力で立っている俺にはもはや死んだ方が楽。そんな考えが浮かび上がってもおかしくはない状態であった。
が、それは奴も同じであった。
奴は俺とは違って的が大きい為、俺よりもかなりダメージを負っていた。
「くそっ!こんなはずではない!」
お互い譲れない状態であった。
「お前が!お前が先に朽ちろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「負けるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、何かが外れた音。
同時に巨大な機械の塊はその動きを止める。重いからだを床に倒れふせた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
「ぬぐぐぐぐ、この僕がっ!」
機械の残骸からネスが体を起こすが、彼自身もかなりダメージがあったのか、足を引きずっていた。
奴はこれで戦うことは出来ないはずだ。だから、確実に奴を殺す。
俺もふらふらの状態で奴に手を構えた。
「『氷結・連弾』」
長さ五十センチの氷柱が無数に放たれた。
「こ、このぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ネスが叫ぶが、氷柱は止まらない。そのままネスに当たると思われた。
「・・・ホント、よくやるよ。お前は・・・」
氷柱は放たれた矢によって相殺された。
「・・・私は、あなたを・・・ユウ、あなたを倒す・・・・・・」
そこにはボロボロになったエミナが立っていた。後ろにはシュリアが倒れている。矢が肩に刺さっているようだが、シュリアから感じる魔力が彼女の生存を俺に知らせていた。
「来いよ、エミナ。全力で叩きのめしてやる」
えーっとですね
まぁ、何と言うか
この異世界編もそろそろクライマックスですね
次ぐらいで決着がつきそうですww
\(゜ロ\)(/ロ゜)/




