第四十五章 決意の朝
そこには、エミナが立っていた。
「私はお前を知らない」
「俺はお前を知っている」
更にエミナは言った。
「そこを退け。退かなければ射殺す」
「そんなのになったのは・・・理由・・・でも、あるのか?」
「質問の意味が解らん」
俺の知っているエミナではない。
「なるほど・・・洗脳なのか?」
「私は洗脳などされていない。私の意思で、私が決めたことだ」
困った・・・少し嫌な予想をしていたが、敵にまわってしまうとはな。味方にすれば心強いが、敵にまわすと厄介な相手だ。
「退け!これは脅しじゃない!死ぬぞ!」
「もう、何度も死んださ・・・それに、この手で何百人と殺してきた。自分の場所を、自分の仲間を守る為に」
すると、俺の力を感じたのか、
「・・・なるほど、お前は只者ではないな。強い・・・解る。一度だけ、部隊を撤退させよう・・・その間に尻尾を巻いて逃げかえるがいい」
そう言ってエミナは部下を引き連れて、一時戦線を離脱した。
「おい、お前ら。大丈夫か?」
「は、はい・・・」
「・・・・」
「ありがとうございます」
三人は静かにそう言った。
「凄い気迫だった・・・今の人。きっと、バラスの将軍ね」
「そうかもな・・・」
「すみませんが、シュリア姫ですか?」
赤髪の女が言った。
「ええ、そうよ。あなた達、第四中隊ね・・・ごめんなさい、助けるのが遅くなって・・・」
「いえいえ!私達こそ、こんなにも派手にやられて・・・」
「・・・なら、いいんだけど」
「それよりも、この人。一体、誰なんですか?凄い、強かったんですけど・・・」
「ああ・・・ほら、挨拶しないと」
そう言って、俺の腕を掴んで三人の前に押される。
「ったく、俺の名はユウ・アサマ。傭兵だ。この姫さんを国へ護衛する次いでに元の世界に帰る情報を探している」
「・・・異世界からの来訪者と言う訳か・・・」
メガネの男が呟く。
「なるほど・・・悪いけど、俺達は異世界について何にも知らねーわ」
「そ、そうか。ならいいんだ」
金髪の男の答えに頷く。
「それよりも、あいつが来るまでに逃げないと。次は徹敵に殺る気だ。やつらの気が河原にうちに行くぞ」
「けど、ここを落とされれば国はお終いです・・・」
弱気な赤髪の女にシュリアは言った。
「なあに、心配することはない。戦略的撤退というやつだ。おそらくグラン将軍がこの都市の奪還作戦でも考えている頃だろう。ただ、時間がないだけだ。一度だけ、戦線を離れる。それだけだ。だから、今は生きることだけを考えよう・・・」
シュリアの説得に動じてくれたのか、三人とその他生き残った者達は本国へと帰還した。
フィディアス王国 戦術会議室
「デリア奪還作戦は敵の裏を突いた奇襲作戦になります。まず、傭兵率いる部隊が正面から攻撃。敵の注意を引きます。同時に、ジル将軍率いる別動隊が地下から侵入。城内の中央の間から一気に攻撃を仕掛けます」
一通りの説明を聞いて、俺は少しだけため息をした。
何故なら、俺の仕事はシュリアを国へ送っただけで終わりの筈だった。が、ダッシュで王立図書館に向かうと思ったところをシュリアに捕まったのだ。
要件は当然。
「それで、準備はいいの?」
部屋にシュリアが入って来て、いきなりそんなことを言った。
「準備?」
「覚悟のことよ」
「ああ・・・別に、問題ないさ」
シュリアが言いたいのは、知り合いと今から殺し合う事になるが、いいのか?ということだろう。
「もし、ユウが嫌だって言うのなら・・・別にやめてもいいよ・・・」
「・・・アホか。ここが落とされればゆっくりと情報が見れないだろう?だから、少しの間だけ、この話の行く末に付いていってやるよ・・・」
「ありがとう」
シュリアはそう一言言って、部屋を後にした。
デリアのテラスからはエミナと白衣のメガネの男がいた。
「まったく、フィディアスも無謀な戦いに出るとは・・・」
「無謀かどうか解らない。ただ、敵も本気よ。それに、向こうには・・・」
「?」
男は首を傾げたが、
「何でもない、部下を招集する・・・」
そう言って階段を下りていった。
エミナはその後自身のテントに戻った。
「ふぅ・・・本当に久しぶり・・・」
自身の目的の為に彼女は一人戦っていた。
「半年ぶりだね・・・本当に・・・良かった・・・」
彼女は立ち上がり言った。
「だから、あなたと戦う。ユウ君」
彼女の眼は、ただ真っ直ぐで、決意の目をしていた。
丁度、日が開けたある朝のことであった。




