第四十三章 旅の続き
銃弾を盾で弾き、装甲車を炎の弾が襲う。辺りは敵だらけで、俺も必死になって戦った。
正直、骸骨兵相手の方がどれだけ楽だっただろうか。
何も考えずに、敵をただ斬るだけの存在と、生き残る為に必死な兵士。どちらが一体大きな力を持っているのだろうか。
それは言わずとも解っていると思う。
『ふはははははははっ!フィディアスの兵士よ!我らバラスへまだ抵抗するのか!!』
前方にある全てを破壊し、前進して来たそれは俺達の目の前に現れた。
『見よ!これがバラス帝国の研究の成果だ!』
前には巨大なキャタピラを備え付け、頑丈な装甲を身に纏った戦車が、こちらを狙っていた。装甲盤には他にもガトリング砲が備え付けられていた。
『主砲!放て!』
巨大な戦車が放った攻撃は前方に展開している部隊を消し飛ばした。
文字通り、消し飛んだのだ。
ほんの数秒、隣に並んでいた者が一瞬で消えた。
ただ、地面ごとえぐり取られたものが、そこにはあった。
「な、何だあれ!」
「あんな物が・・・・」
「こんな技術、あったのか?」
「ひ、ひいいいいいいいい!!」
周囲の兵士が怯えながら徐々に後退し始める。
確かに、この威力は尋常ではない。俺も、こんなのは初めてだ。
『ふははははははははははっ!恐怖!絶望!嘆き!美味だ!これ程までにも美味とは思わなかった!!』
戦車の中からそんな声が響く。
兵士は死に、大人は子供を庇い、子供は野垂れ死に、形ある物は全て破壊し尽されている。
しかし、これも戦争の一部と言うものだ。
傷つける者と傷つけられる者、望む者と望まない者、生きる者と死ぬ者。戦争がそうであるように、人も必死なのだ。
自分自身を守る為に、仕方がないで済まされるものではない。
今、この一瞬にも戦争によって多くの命がこの世からいなくなっている。それを聞いて、見て、誰かはきっとこう言うだろう。
いや、この先、遠い未来かもしれないが、仮に誰も争いのない世界が出来ていたとしよう。もしくは、全てが穏やかな世界があったとして、その世界にいる人間は声を揃えてきっとこう言うだろう。
「可哀想・・・」
それは、何もかもが平和で、裕福な、そんな世界の意見だ。
自分自身がそうであるように、この世界は酷く残酷なのだ。誰かを守ろうとする者よりも、誰かを傷つけようとする者の方が圧倒的に有利な世界。
弱い者は弱い者らしく、この一瞬を懸命に生きているのだ。
『何だ、貴様?』
だから、俺は何があっても足掻き通すと決めた。
「『岩石封殺』!」
戦車の下の地面が崩落し、戦車は身動きする事が出来なかった。
『なっ、しかし!この程度!吹き飛ばしてくれるわ!!』
俺は上から見下ろしながら言った。
「それは・・・どうかな?『爆流波』!」
空中に出現した巨大な水の塊を凹みとなっている部分に流し込む。
『なっ!水が!!』
数分後、バラスの兵士が息絶え絶えで浮かんで来た。
「いや~、先程の戦い。お見事でした」
シルバが言った。
「でしょ?傭兵の割には、以外とやるもんねぇ」
「傭兵の割には・・・余計だぞ。そう言えば、シルバ。エミナという女性を知らないか?こう、銀髪の長い髪の子なんだけど・・・」
「・・・解りませんね・・・」
「そ、そうですか」
「すみません、力添え出来ず・・・」
「いや、こちらが頼んだ事ですし」
街の会議室で俺達は集まっていた。
街はバラス軍が撤退した為、復興作業が始まっている。が、敵がいつ攻めて来るのか解らないので、シルバとその部下はこの街に残るそうだ。
「それでは、姫。ご武運」
「ええ、あなたも。アリアのご加護があらんことを」
シュリアが先頭になって馬を走らせた。俺もその尻を追うように走らせた。
丘の上まで行くと、街からは活気に満ち溢れた声が聞こえる。
「・・・何だかんだで、皆頑張っているんだな・・・」
「そうよ、あなたの世界はどうなの?」
「・・・・俺の世界は・・・まあ、いいだろう。別に、俺は帰るんだ。自分の世界に」
再び走り出した二頭の馬は、そのまま丘の向こうへと消えて行った。




