第三十七章 大切な何か
俺は来た道を通り、あの門へと辿り着いた。
そして、その門を開けた。
「よっ、一皮剥けたって感じだな」
「死にそうになりましたけどね」
師匠は笑いながらそう言った。
「それで?お前の好きな相手を賭けて勝負しに行くんだろ?」
「ああ、時間は今日の午後からだ。行って来るよ」
「精々頑張れよ!」
師匠に尻を叩かれて、俺は急いでオリビアに戻った。
時間は丁度だった。
「エミナ!ヨシュア!戻ったぞ!」
『紅の星』のドアを開ける。
そこにはヨシュアが俺をポカンとした顔で見ていた。
そして、言った。
「お前、何やってんの?」
「はあ?」
ヨシュアは次に驚愕の一言を言った。
「決闘日、昨日じゃん」
「え?」
頭の真っ白になった。
昨日?嘘、マジで?
「まったく、変な冗談言うなよ」
「バッカじゃねーの?それと、エミナから渡された」
ヨシュアは俺に手紙を渡した。
『ユウ君へ
まずは謝らないといけません。
あの人は強いです。私達が思っていた以上の存在です。いくらユウ君でも勝てない、と思います。
だから、わざと間違えました。
ごめんなさい。
けど、解って下さい。
ユウ君を守るにはこうするしかなかったんです。迷惑をかけてしまうんです。
今まで、ありがとうございました。
エミナより』
と、書かれた手紙だった。
「・・・・・・・」
ヨシュアは何が書かれてあったのか、知っていたようだ。
「結婚式は今日の午後一時から・・・だ」
「ヨシュア・・・」
「俺が出来るのはこれぐらいだ」
「悪い・・・」
それだけ言うと、俺はギルドから飛び出して行った。
場所はオリビアで一番大きな教会だと予測した。その通りに教会に人々が集まっていた。
「新郎、ラスク・ブラットはその健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦、エミナ・エスカートはその健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか」
「は――――――」
「待ったああああああああああああああああああああああああああっ!!」
教会に俺の声が響き渡る。ドアを突き破って俺が出て来た。
「な、何だ!」
「無礼者!この方々を誰だと思っている!」
周囲の連中が騒めき始める。
「うるせえ!それはこっちのセリフだ!」
俺は息を吸って、
「エミナ!俺を誰だと思ってる!」
エミナはその場にへたり込む。
「おやおや。これは、決闘日に逃げたユウ・アサマ君じゃないか?」
「だから?てめえをブッ飛ばしに来たぜ」
「いや、それは無理だ。勝負は既についている」
と、言うと、
「まあまあ、いいではありませんか」
マユさんが言った。
「彼は有名な傭兵です。あたなの家に代々伝わる聖剣と、一つ手合せをしてもらえませんか?」
「・・・別にいいでしょう」
「俺が勝てば、エミナは返してもらう」
「ふん、貴様が勝てばな。そんな時は永遠に来ない事を証明してやる!」
すると、エミナは言った。
「ユウ君・・・どうして?」
「俺がお前を愛してるからだ。それだけだ。それだけの為に、ここにいる」
俺とラスクは魔法結晶によって、魔法で作られた空間に移動する。
闘技場と同じように作られており、全員が見られるようにしてあった。
「見ろ、これが我がブラット家に代々伝わる聖剣!」
ラスクは鞘から黄金に光る剣を抜き取った。
「滅びろ!!」
エクスカリバーから放たれる光の塊は複数出現して、俺を襲って来た。
俺はそれを華麗に避け、剣で弾く。
「これならどうだ!!『セイント・レイ』!」
剣から膨大な光線が放たれた。
「『魔心』!」
剣で光線を真っ二つに切った。
この技は体内の魔力を練って体に送り込む事で、通常の何倍もの力を出す事が可能なのだ。
俺は一気に接近して、剣を振るう。が、流石と言った所だろ。ラスクの剣裁きも中々強かった。
「やるじゃないか!だが!この聖剣の力には勝てない!」
更に眩しい光の塊を上空に放つ。
次の瞬間、その光は大量の光の渦を纏いながら落ちて来た。それは小規模隕石の衝突に近いものだった。
「『ロスト・ホーリークリア』!」
「があああああああああああああああああああああああっ!!」
光の球体に閉じ込められる。
「それは破滅の光。対象を破壊するまで止まりはしない」
光の渦は止まらず、俺の体を破壊し始める。
『魔心』も解け、俺は身動き一つ出来ない。
これが、聖剣の力なのか・・・。
俺は魔力を溜めて反対に放出するが、直ぐに押し戻されてしまう。
「無駄無駄。お前はその光の中で消えていくのさ」
くっ、ダメだ。もっと、強い力を!
魔力を溜めようとするが、体力にも限界が来たのか魔力すら溜める事が出来ない。
「これで、俺とエミナは結婚出来る。まあまあ、強かったんじゃないのか?だが、この聖剣の前では無力に等しい」
俺は自分の為に戦って、金の為に力を尽くした。
けど、サシャ、エミナ、フィア、アリサ、リタ、ヨシュア・・・皆に会えて、大切なものが変わった気がする。
今までの自分がどうでもよくなってしまうぐらい、狂ってしまった。
しかし、修行をしてそれも悪くないと考えた。
だから、俺は今ここにいる。こいつを倒さないといけない。
エミナを奪い返す為に、
あの時そう決めたいじゃないか?
もっと、力を。更なる力を。
「ほらほら!もう直ぐ君という存在が消えるぞ!」
と、光の球体が真っ二つに分かれる。
「なっ!」
「悪いな・・・」
渾身の一撃を下から食らわす。ラスクは剣でガードするが、上空に吹っ飛ばされる。
「バカな!!聖剣が!聖剣が負ける筈がない!伝説の武器なんだぞ!!」
「だからどうした?聖剣だろうが、伝説の武器だろうが、何だろうが!そんな事は知らねぇ!!」
両手に魔力を集中させる。
だから、俺はお前の一生横にいる。
「真・火炎魔法『朱雀』!」
両手から放たれた巨大な炎の鳥がラスクを捉える。
「何故だ!何なのだ!この力!!」
不死鳥はそのままラスクを包んで爆発した。
一応は生きている程度に加減はしたつもりである。
視界が揺れ、元の世界へと戻る。
「ユウ君!!」
エミナにいきなり抱き着かれる。俺も手を背中に回す。
「ごめん・・・」
「いいって。けど、二度とこんな事するなよ?」
「うん・・・」
「俺もちょっと前まで揺らいでたんだ。けどさ、一度死の恐怖を感じたら、大切なものを感じとった気がしたんだ。もっと大切なものがどうでもよくなるぐらい、エミナが好きになったんだ」
体を離すとエミナは頬を染めながら目を外していた。
「愛している、エミナ」
俺の唇をエミナの唇に重ねる。
一度離すと、
「私も」
次はエミナからキスをして来た。
甘く、熱く、そしてエミナの気持ちが全て伝わった。
お互いを傷つけ合い、やっと繋がった一つの気持ち。
自分達のあるべき場所を見つけたのだ。




