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ブレイク!  作者: ぞえ
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第三十二章 さよならは言わない

 物語には必ずと言っていいほど、最後がある。

 もし、それを俺に例えるならば、今日はその日かもしれない。


 約十万の骸骨兵はこちらへと向かって来る。

 それを目の前にしている俺は、これからこれに突撃しに行こうと思っているのだ。

 自殺しに行くようなものだ。


「はあ・・・」


 ため息を吐く。


「うっし」


 頬を叩く。

 装備を整え、剣を引き抜いた。

 右手には剣。左手には魔力を集中させる。


「さて、行こうか・・・」


 俺は覚悟を決めた。

 

「エミナ・・・」


 溢れそうな涙を思わず拭き取る。

 骸骨兵の一歩一歩は骨なのに重く、異様な雰囲気を醸し出していた。

 魔力を溜める。


 これは、もう復讐ではない。

 俺は今までずっと復讐を誓って来た。しかし、エミナと会って、皆と会ってそんな感情が何処かに消えてしまった。

 自分の中では決して失ってはいけないと思っていた。

 けれど、それ以上に彼女を、エミナを愛してしまった。

 だから、彼女に生きて欲しいと思った。そして、俺はここにいる。彼女を生かす為に。

 

 ただ、君を皆を守りたいんだ。




 右手に持った剣を強く握り直す。


「死ぬなら、せめてかっこよくだな・・・」


 行こうか・・・。


「行っくぜえええええええええええええええええええええええええええっ!!!」


 地面を蹴る。

 体を前に飛び出させる。

 骸骨兵は俺に気づいたようで、弓を構えた。幾千もの矢が飛んで来る。

 俺は大きく上に飛ぶ。脚に魔力を溜めこんで、思いっきりジャンプしたのだ。

 こうすれば矢は届かない。

 敵の真ん中に着地した。


「はああああああああああ!!『七星天』」


 俺の周囲にいる骸骨は光の中へと葬り去る。

 少しばかりしてから、一番近くにいた奴の首を飛ばす。更に続いて来た三人の体を真っ二つに斬り、


「『爆炎と連鎖』!」


 巨大な爆発が起こる。


「『水竜・大津波』!」


 骸骨達を無数の水の龍が飲み込む。


「『腐酸溶解』!」


 少しばかり巨大な体を持つ骸骨の隅から隅まで溶かす。


「『旋風線』!」


 体制を立て直した骸骨兵が一斉に周囲から襲って来たが、俺の周辺は風によって上空に舞い上がる。

 その一人一人に狙いを定めた。


「『炎雷』!」


 上空に舞い上がった骸骨共は雷と炎に打たれ、地面に音を立てて崩れ去った。


「『緋炎・炎龍』!」


 骸骨の集団は灰と化す。


「がっ!」


 矢を放たれ膝と背中をかする。


「舐めんなよ!『超・正拳突き』!」


 弓隊を殴り、骸骨の姿を一片も残さない。

 更に続いて魔法が飛んで来る。

 骸骨でも魔法は使えるようだ。


「・・・『破邪・一点』!」

 

 全ての魔法を打ち消し、その衝撃波は魔道士達を飲み込んだ。


「『氷結山』!」


 巨大な氷柱は骸骨達を粉砕し、


「『凍る世界』」


 更に周辺の骸骨を蹴散らす。

 俺は敵周辺の上に舞い上がり、


「『破邪と輪廻の弓』」


 周辺骸骨はほぼ全滅したが、まだ数え切れない程の軍が展開している。


「はあ・・・はあ・・・はあ・・・やっぱ、全力でもこんなもんか・・・」

 

 俺の魔力はそろそろ底を尽きそうになっていた。

 これ以上は・・・。

 剣を今一度握り直す。


「はあああああああああああああああっ!!」


 俺は残った力を振り絞って敵に斬り込む。 骸骨共を蹴散らして行く。が、時たま剣がかすり、矢が腕に刺さる。


「・・・くそが!」


 体制を立て直そうとした瞬間大量の矢が飛んで来る。あまりにも範囲に俺は避けれずにいた。


「らあっ!!!」


 俺に飛んで来る致命傷以外の矢を全て弾く。

 凄まじい速さについていき、その一本一本の矢を弾く。

 攻撃が終わると、俺の全身は傷だらけであった。体力はほぼ尽きており、立っていられるのもやっとだった。


 エミナ・・・。


 歩く度に血が地面に落ちる。


「エミ・・ナ・・・」


 かすれかすれの声で彼女の名を言う。


 この少ない日々。とても楽しかった。

 嫌な事嬉しかった事、色々な事が起こった。その中に俺は、生きる意味を見出せないでいた。

 けど、結果。生きる意味が見出せていた。いつの間にか気づいていた。

 

「やっぱ、死にたくはないな・・・」


 まだ、死ねない。

 俺にはたくさんやり残していた事がある。成すべき事が他にもある。

 エミナに言った。

 また、会う日まで。

 エミナにまた会うまで、会う日まで。俺は・・・俺は・・・。




 馬車がオリビアに到着した。

 同時にエミナは目を覚ました。周りは既に戦闘態勢に入りつつあり、友人のリタやフィアが不安そうな顔でいた。


「ど、どうしたの?」


 リタが言った。


「帝国の軍隊がこっちに進軍しているのよ。かなりの数がね」

「・・・あ・・・そうだった。ユウ君は?」

 

 エミナはヨシュアに言った。


「ユウ君は?どうしたの?ねえ!!ユウ君は・・・」


 ヨシュアは言った。


「あいつは、残ったよ・・・俺達の為に・・・」


 エミナは頬に一筋の涙を流した。


「どうして・・・こんな事って、ないよ・・・」


 エミナは走り出した。が、ヨシュアやフィア。リタに捕まる。


「離して!!私は!!」

「バカ!お前まで死にに行ってどうするんだよ!!」

「ユウ君!ユウ君!!」


 


「はあ・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・・」

 

 血が流れる。

 体力も底を尽き、膝立ちで敵を睨む。


「上等だ・・・」


 もう全身がボロボロだ。

 死ぬかもしれない。けど、まだしも・・・まだ・・・絶対に・・・。

 俺は・・・。

 

 立ち上がる。

 

「エミナ・・・ありがとう」


 まだ、死ねない。

 この心臓の鼓動が止まらない限り、この頭が考える事を止めない限り。

 俺は生きる。

 

「エミナ・・・俺は、お前が・・・・」


 笑ってくれればそれでいいんだ。


 握力もクソもない手で剣を握る。最後の力を振り絞り、大軍に向かって、俺は突撃した。


 

 またな、エミナ・・・。



ユウううううううう!!

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