第三十一章 また、会う日まで
すげーことになりました。。。
「ガリア王!あれを、使うのですか?」
「はんっ!もはや我が国の兵士では奴を殺す事は出来ん!ならば、あの傭兵と一緒に各国を攻め落としてくれる!」
「わ、解りました」
「なら、速く準備をせい!」
「はっ!」
ガリア王は参謀のムイに言いつけて、死霊計画を最終段階に持って行った。
フィリス帝国の周りにはかつての大戦の後の荒野が広がっていた。そこには約十万の兵士の死体が埋まっている。
死霊計画とは彼らを使った戦力拡大の実験であった。
「魔力一九四パーセント」
「術式全て展開出来ました」
「死霊魔法、詠唱終わりました」
ガリア王は言った。
「うむ、では死霊計画を発動せよ」
フィリス帝国周辺の荒野。
その土から一本の手の骨が出て来た。それは地表に上がり、次に頭が出て来た。そして、一人の骸骨が姿を現した。
骸骨は剣を天に上げた。
それを合図かのように大地が鼓動をし、大量の骸骨兵が土から姿を現した。
約十万の兵士。
しかも、死んでもこちらには何の支障もない。
「ふはははははははははははははははははははははっ!見よ!これが、我が軍団!」
彼らは中心部にあるオリビアへ進んで行く。
「行け!!各国を攻め落とせ!手始めにオリビアからだ!!」
骸骨兵達はそれぞれの武器を持って、進軍し始めた。
ほどなくして、俺達はオリビアに帰った。
オリビアに帰る途中にある街。ゲンナと言う街に立ち寄った。すると、街の中は慌ただしく動いていた。
「おっ!ユウ!エミナ!」
「ヨ、ヨシュア!一体、どうしたんだ?何か、憲兵団の姿と見知っている傭兵の姿が見えるんだが・・・」
ヨシュアは息を飲んだ。
「よく聞け。フィリス帝国がとうとう各国へ進軍し始めた。宣戦布告もなしにだ。更に、本国の兵士ではなく、ネスの使っていた死霊魔法を使って、二年前の大戦で死んだ兵士を蘇らせたんだ!」
「・・・嘘」
「いいか?さっき、偵察によると骸骨兵は真っ直ぐオリビアに向かっている。進軍が遅いのが唯一の救いだが、こちらの戦力が整わない。だから、途中にあるこの街を中心に防衛線を張って、少しでも時間稼ぎをしようとしているんだ」
「なるほど、事情はよく解った。それで、今の時点の戦力は?」
「オリビアにいた傭兵が来たんだが、それでも憲兵団と合わせて約五千。到底時間稼ぎにすらならねえ」
五千・・・。奴らとまともに戦争をしようって言うのなら絶望的な数字だ。
天才的な策士でも、厳しすぎる戦いになるだろう。
「ヨシュア、やっぱりオリビアに引かせた方がいいんじゃないのか?」
「だ、だが、他の国の援軍が来るには三日以上かかる。騎馬隊でも一日と半分だ。その間、俺達が踏ん張らないと、オリビアが戦場になっちまう」
「・・・・・・」
ヨシュアに言う通りだ。
民間人が多いオリビアでやり合うのは犠牲が出るかもしれない。しかし、俺にはまだ何とかなる一手があった。
それには、覚悟が必要になると思っている。
「ヨシュア、敵がここに到着するのはどれくらいだ?」
「大体、三時間ってとこだ」
「三時間か・・・五時間あれば、ここからオリビアまで何とかなる距離だな?」
「あ、ああ。だが、こっちには民間人もいる、直ぐに追いつかれるだろ?だから、俺達がここで踏ん張るんだ」
「いいや、もっといい方法がある。犠牲も最低限で済む」
「マジか」
「ああ、大マジだ」
ヨシュアは期待の眼差しで俺を見た。
正直、俺自身はあまり俺の口からは言えなかった。言いたくなかった。が、
俺はエミナを見た。
「?」
首を傾げる。
「ヨシュア、確かにオリビアで戦うのはリスクが大きい。更に、今からオリビアに逃げたとしても、民間人が徒歩で逃げるには追いつかれてしまう」
「あ、ああ。そうだな」
「だったら、民間人が逃げれる時間を稼げばいいんだ」
「それを、俺達が作るんだろ?」
「ここで、俺達が死ねば、オリビアで戦う戦力の大半を失ってしまう。各国の援軍もギリギリになるだろう。それまでの犠牲者はどうしても出てしまう」
「・・・・・・」
「しかし、お前達が逃げれて、時間を稼げる方法が一つだけある」
ヨシュアは暗い表情になる。エミナは心配そうな目で俺を見た。
「もう、答えは解ってんじゃねーのか?あの数相手に、時間稼ぎが出来そうな奴の事を。お前は知ってるだろ?」
エミナも理解出来たように、表情を強張らせる。
「ユウ君ダメだよ!」
「だけど!これからの事を考えると、これが最善策なんだ。ヨシュア、必ず時間を稼いでみせる。頼む」
「ユウ・・・」
ヨシュアはきっと俺を理解してくれる。
「頼むから、今すぐ傭兵と憲兵団を連れて、民間人の後を追ってくれ・・・」
俺は彼の言葉を待った。
「解った・・・」
「・・・エミナを頼む」
「いやっ!私もユウ君と残る」
「エミナ・・・」
「だって、もしかしたら生き残れるかもしれないのよ?だったら、一人でも強い存在が必要でしょ?」
エミナには生きて欲しい。俺にはそれ以外の思いがなかった。
「ダメだ。エミナはヨシュアと一緒に行け」
「いや・・・一緒にいたい」
エミナ・・・。
「頼むから・・・行ってくれ。俺だったら生きて返るから」
「嘘。そうやって、いつも嘘をつく」
エミナはそう言う。
「いいか、俺はお前の事が好きだ。愛してる。だから、お前には生きて欲しい。頼むから」
「だったら、私だってユウ君の事愛してる。あなたに死んで欲しくない」
ここまで頑固だとはな・・・けど、エミナの言いたい事もほんの少し解るかもしれない。好きな人が死ぬかもしれない戦場に行かせたくはない。
けど、それでエミナまで死んだら意味がないんだ。
「エミナ、俺はお前に会えて嬉しかった。エミナを好きになれて、本当に嬉しい。俺にも生きる意味が出て来た。けど、俺の復讐は終わってないんだ」
夕暮れ時のオレンジの光が街を包む。
「ありがとう、エミナ。好きになってくれて、本当にありがとう」
俺はエミナが反応するよりも速くに睡眠魔法で眠らせる。
「ユウ・・・」
「悪いな・・・後は頼んだ」
ヨシュアにエミナを任せる。エミナは直ぐに馬車の荷台に寝かせられる。
「バカ野郎・・・お前がいなくなれば・・・」
「泣くなよ、男だろ?それに、相手はたかが十万程度の骨だ」
「ユウ・・・」
「エミナが起きたら伝えてくれ。俺は生きて帰って来る。と」
「ああ。絶対に帰って来いよ。お前も、任せた」
「任せてくれ。じゃあな」
そう言って、エミナとヨシュアを乗せた馬車は走り出した。
「それじゃあな、エミナ。また・・・また、会う日まで」
俺の視界から全ての馬車や馬が消え去ると、街の丘へと向かう。
日は全て沈み、丘から見えるのは鎧に身を包んだ骸骨の大群だった。所々に松明が光っており、真っ直ぐこちらに向かって来ていた。
次回!
主人公の運命は如何に!




