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ブレイク!  作者: ぞえ
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第二十七章 強さ


 少女が流した涙の雫は、誰もいない学校の廊下にぽたりと落ちた。

 同時に、アリサの全ては石となった。

 アリサはきっと、帝国に騙されたのだろう。精神が不安定な時に声をかけられ、そそのかされたのだ。

 そして、対象と戦う事でやっと自分の心を戻した。が、もはや手遅れ。

 何処まで・・・何処まで・・・。


「何処まで人の命をもて遊べば気が済むんだ!」


 俺はアリアの胸に手をやった。


「こんな不条理があってたまるか!お前は俺が助ける!アリサ!!」


 強く念じた。

 次の瞬間意識は持って行かれた。

 

 目が覚めた。そこは黒の世界だった。真っ暗ではない。ただ、暗いのだ。


「・・・・・」


 見ると、誰か立っていた。


「アリサ・・・」


 アリサだった。

 黒く、アリサの影のようだった。

 魔力を大量に取り込んだアリサの裏の顔だ。体は悪魔化した状態であった。


「行くぞっ!!」


 繰り出した右の拳と、繰り出された拳がすれ違ってお互いを殴り合った。

 

「『緋炎・炎龍』」


 しかし、炎の龍はアリサの手によって切り裂かれる。

 更に続いて放って来る魔力の塊は強い衝撃波と共に俺の体に数発直撃した。


「ちっ!『七星天』!」


 七つの魔法陣がアリサの上空に出現した。が、アリサの放った魔力弾は七つの魔法陣全てを潰す。

 ・・・どんだけ強いんだよ!


「あああああああああああああああああああああああっ!」


 アリサは更に魔力を溜め、放った。


「『月光の鏡』」


 巨大な月の鏡はアリサの攻撃を受けたがヒビが入り、同時に粉砕してしまった。

 強い。ここまでだとは・・・だが!


「まだっ!!!」


 アリサは接近して来て打撃を打って来る。


「っ!」


 その拳は俺の腹を打ち、その衝撃は体を貫通した。


「ごふっ!」


 血が出る。

 ・・・どうする?

 俺のほとんどの防御魔法は通じない。

 なら、まず相手を拘束しねーと!


「氷結魔法『凍る世界』!」


 次の瞬間全ての地面から無数の巨大な氷柱が突き出す。更に氷はアリサの体を拘束した。


「これなら!」

「ああっ!」


 アリサは力任せに氷を壊す。


「誰だって強くなりたいんだ!!」


 同時に後ろに後退して魔力を溜める。


「私だって!強く!」


 だよな・・・誰だって・・・。

 アリサの両手から放たれた魔力の塊は真っ直ぐ俺に向かって飛んで来た。

 かなり巨大な魔力だった為、俺の使えそうな防御魔法は通じない。なら・・・。

 

「我、闇を打ち払いし破邪の剛とならん!『破邪・一点』!」

 

 力の宿った右手の拳をアリサの打ち出した魔力の塊を殴った。

 次の瞬間全てが弾け飛んだ。

 アリサの魔力も、闇の世界も。闇は少しずつ破壊されて行き、白い光の世界へと変わっていく。


「私だって・・・あなたみたいになりたかった・・・」


 アリサは涙を流していた。その涙には彼女の確かな思いがあった。


「だったら、こんな所で泣いてないで、前を向いて生きて行こうぜ・・・」

 

 アリサはそっと目を瞑ると世界から俺は消えた。


 目が覚めた。

 アリサの体を見ると石ではなく、ちゃんとした体であった。

 よかった・・・。

 俺がしたのはアリサの心の中にある大量の魔力の塊である。具現化した魔力を彼女の外に出すのはその魔力自身と戦わないといけない為、かなりしんどい戦いであった。

 それでも成功したのだから、喜ばしい事だ。


「私はただ、強くなりたかった。あなたを殺す事だけが私の生きる意味だと信じていてた。探していたものが見つかったような気がしたんだ。けど、それは大きな間違いだった」


 俺はアリサを抱き寄せた。


「!」


 アリサは一瞬驚いたように体を震わせたが、背中に手を回してくれた。


「これが、人の温かさなんだね」

「・・・そうだな」

「ありがとう、先生」


 そう、潰れる程小さな声で言った。


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