第十六章 大好きだから
サシャの目は光りがなく、ただ操作されているだけみたいだ。
「もう、サシャは死んだんだ!」
俺はサシャの攻撃を回避し、ネスに斬りかかった。が、サシャは一瞬で俺とネスの間に入って来た。
「・・・あれ?・・・私、死んだはずじゃ・・・ユウさん?」
俺はサシャの胸で剣を止めた。
「え?何で?」
「くっ」
俺は大きく後ろにバックする。
・・・・くそっ、どうして。
「あれ?体が勝手に・・・」
サシャの体はまるで誰かに動かされているように動き始めた。右手に持っているナイフを使って攻撃して来る。
「に、逃げて!ユウさん!」
どうすれば!
「はははははははっ!愛しい彼女に殺されるがいい!」
「うるせえ!ていうか何で俺の事知ってんだよ!!」
ネスの高笑いに俺が答える。
するとネスは答えた。
「フィリス帝国第五研究室。解らないのか?」
俺は首を傾げた。
「・・・第七秘密研究室、コードD・・・」
俺はようやくそこで奴の正体に気づいた。
「フィリス帝国魔法研究第一人者、ネス・ブランド博士」
ネス・ブランド。
二年前の戦争中の魔法研究者。大量殺人兵器を戦場に投入した第一責任者である。俺も何度か会った事があるが、方向性の違いから会わなくなった。
「てめえか・・・」
「いや~、苦労したよ。君のあの力は何処からやってくるのか?全然解らなかったよ。とうとう君は二年前に消えちゃうし、一応フィリス帝国じゃ死んだ事になってたよ。それで、今になって君の姿を見たと言う人がいてね。そしたら案の定君がいてね。けど、観察するには一週間と身近かったな」
「じゃあ、サシャが死んだのも黙ってみてたっていうのか・・・」
「ああ、そうだね。帝国が作戦実行しちゃったのをただ黙って見てただけだね。元々どうでもよかったし、そしたら君とこの娘がいい感じになってるじゃないか。人の弱みに漬け込むのは趣味でね」
「最低だな」
「ほんの一週間前、帝国から君の抹殺命令が出た。君を殺す。これは僕にとって最高の命令だったね。そうして、この娘を蘇らせて君を殺しに来た訳」
「そうか・・・だからどうした!!」
俺は二度目となるパンチをネスに食らわせた。
「くっ!」
サシャが再び目の前に現れた。
「・・・・・」
「どうした?殺さないのか?」
「・・・・・」
「君、女に弱いもんな」
「・・・・・」
「所詮は君も人間だ」
「・・・・・」
「傭兵として生きる事が出来ない」
「・・・・・」
もう、奴の言葉は俺には届かなかった。
「ユウさん・・・」
サシャがこちらを見つめている。
「サシャ・・・」
サシャは言った。
「大丈夫・・・私は」
笑ってみせた。
彼女のなりの強がりなのだろう。
「死んだんだ。私・・・だからね、大丈夫」
「大丈夫じゃねーだろ!!」
「うんうん、大丈夫だから」
サシャは続けた。
「ユウさんと初めてあった時は、怖い人だと思っていたけど、一緒に暮らすようになったらもっと会いたいって思うようになって、それが恋って気づくのは遅くなかったの。それで、あの時殺されて、最後にユウさんに会えてとても嬉しかった。だからね、私を殺して。私の事を思うなら」
「サシャ・・・」
次の言葉が俺の意思を決定させた。
「ユウさんのこと、大好きだから」
気づいた時には駆け出していた。
愛するが故に、好きだから。
この手で終わらせる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
俺の剣はサシャの体を貫いた。
「ありがとう」




