第十二章 赤髪
黒騎士はその体をゆっくりと動かし始めてだ。
リタの剣技は『戦乙女』、このオリビアの中でも最強を誇っていい程の腕前である。その迫力は敵も感じている筈だ。
黒騎士も例外ではなく肌で感じていた。
それだけ、本気になれる。それは強者にとって最高の気分でもあったのだ。
「らあっ!」
黒騎士の一撃を回避し空中に逃げる。
「我が剣技に死角はなし!」
黒騎士は空中で迎え打つリタを簡単に斬り返した。リタは後ろに着地し、直ぐさま攻撃を仕掛けて来た。
その無駄のない動きは獲物を確実に捉える剣技であった。しかし、
「くっ!」
「ほらほら!どうした!人間!!」
次の瞬間黒騎士はラッシュを仕掛けて来た。速さは互角でも力がなければ、意味のない戦いである。
圧倒的な力の前にリタは翻弄されていた。
「あ・・ぐ・・・くそっ」
「強かったぞ。人間」
と、黒騎士が剣を振り下ろした瞬間リタの剣とはまったく違う剣がその剣を弾いた。
「それはないんじゃないの?それと君、速く後方へ退避した方がいいよ」
「す、すまに・・・」
リタはその男の助言に従い後方へ下がっていった。
「ふん!」
「おっと」
ヨシュアは黒騎士の剣を避け、剣を構える。
いつもの調子のいい感じではなく、どうやら本気のようだ。
「俺の名はヨシュア・グレイス」
「何故名前を聞く?」
「何故?んなもん決まってんだろう。俺の武勇伝に載せる為だろうが」
「いいだろう。ネス博士直属部隊、黒騎士だ。それ以外の名はない!」
「黒騎士ね」
ヨシュアは思いっきり地面を蹴り、剣を片手に突っ込んだ。
正面から剣を振り下ろし、そのまま下から斬り上げる。黒騎士はガードしてそのまま横に薙ぎ払った。
が、剣で受け流し、そのまま回転して右足を斬った。
「ぬう!やるなぁ・・・」
「まあ、あいつはもっと凄いけどな。こっからだぜ・・・」
ヨシュアの剣をよく見ると、かすかだが赤い火の粉が舞っていた。
「魔剣『紅蓮』」
ヨシュアの剣は魔剣『紅蓮』へと形状が変化していた。いや、もともとある剣の能力を開放したと言えるだろう。
「ま、魔剣!」
流石の黒騎士も後ずさりした。
「甘く見ると火傷じゃ済まないぜ」




