第九章 あの時の傭兵
ここに来てエミナの攻撃力は更に増してきた。さっきまでの余裕は見せず、ただひたすら俺を殺す為の攻撃を仕掛けてきた。
「私は!」
それにしても、エミナは何処かで見た気がする。遠い夢に出てきそうな。
俺は記憶を思い出す魔法で何とか見つけ出した。
「あっ、思い出した・・・」
「な、何を・・・」
そう、彼女は二年前、フィリス帝国に進軍していたバルディス王国の兵士に狙われそうになった娘だ。
「あの時の、兵士に殺されそうになった時の・・・」
「まさか!あ、あなたが・・・私の家族を・・・母さんを・・・父さんを・・・」
え?
あれ?何かが違う感じになってない?
「いやいや、俺殺してないから!」
「けど、あなたがもっと速く来てくれなかったから、父さんと母さんは死んだ!」
次の瞬間矢が大量に上から振って来た。
「げっ!」
ほとんど無防備だった俺は太ももに矢が突き刺さる。
「痛!」
「許さない!」
今までと違い、エミナの攻撃は更なる激しさを増した。
八方向から飛んでくる矢は避けにくかった。しかも傷を負っている状態だったので、体力的にもかなりギリギリの戦闘だった。
「お前のせいで!」
「・・・・」
エミナは泣いていた。
俺は思った。
彼女もまた、俺と同じなのだと。故郷を潰され、家族を失い、その仇討ちの為に力を磨き、その報いを受けさせる。
戦争被害者の一人に過ぎなかった。
・・・あの涙・・・サシャと一緒だな・・・。
サシャ・・・。
胸に着けているペンダンを強く握った。
こんな所で死ねるか!
「奥義!『千本桜』!」
エミナの放った矢の後ろから大量の矢が飛んできた。名の通りだと千本はありそうだ。
「死ねええええええ!!」
俺は右手を突き出した。
「我、その力を持って暗黒を射る『破邪と輪廻の弓』」
すると巨大な弓が俺の目の前に出現し、それを引き絞って放った。
その瞬間幾つもの矢が飛び出してきた。その矢はエミナの放った矢と相殺し合った。
「無駄よ!私のこの技は千本もの矢が飛ぶのよ!」
確かにこのエミナの矢の数は凄まじかった。
だが、だが!
「千本か・・・しかし、俺の技を誤ったな」
矢と矢のぶつかり合いは俺が徐々に優位になった。
「なっ」
「俺の技は・・・一万本だ」
俺の矢は一気にエミナの矢を全て潰し、エミナに容赦なく降り注いだ。
矢が飛び終わった。
俺はエミナの元へ行った。
矢は全てエミナの周りに刺さり、命は取らなかった。
「帝国の殲滅作戦は俺のいた村を人を皆殺しにしたんだ。あんたが思っている事と俺が思っている事は違わない。人は死ぬのは簡単だ。けど、生きるのはもっと難しんだ。俺はあいつらの為に生きるって誓った」
そう、それ以外俺には何もないのだ。
空は次第に明るくなり、太陽が顔を出した。
周囲は日光が照らし始めた。
エミナは太陽が眩しいのか分からなかったが、手で目を隠していた。
「私は・・・ただ、両親を・・・」
朝日は俺達を優しく包み、睡魔へと誘った。




