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「無名の先祖を、歴史に名を残す男にする。――俺は、本能寺の結末を変える。」  作者: 最強の素人


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第14話 初めての指揮

前方から。


怒鳴り声が聞こえた。


新七が足を止める。


少し先。


街道の真ん中で。


荷車が二台、止められていた。


その周りに。


数人の男がいる。


商人らしい男たちは。


少し離れたところで固まっていた。


新七が低い声で言う。


「数を見ろ。」


一人の男が答える。


「六……いや、七人ほど。」


新七は周囲を見る。


道は狭い。


片側は林。


反対側には浅い川。


逃げ道は多くない。


「五人、右へ回れ。」


「はっ。」


「残りはわしと来い。」


男たちが動く。


俺も後ろからついていこうとすると。


新七が振り返る。


「玲央。」


「はい。」


「そこにおれ。」


「でも。」


「動くな。」


いつもの新七じゃない。


声が低い。


俺は止まった。


新七たちは。


ゆっくり前へ出る。


相手の男たちも気づいた。


「何者じゃ!」


一人が叫ぶ。


新七は答えた。


「織田家の者じゃ。」


空気が変わる。


男たちが顔を見合わせる。


一人が刀に手をかけた。


新七は動かなかった。


「荷から離れろ。」


「うるさい!」


男が一歩前へ出る。


その瞬間。


林の方から。


新七が回していた五人が姿を見せた。


相手の顔色が変わる。


前。


横。


逃げ道を塞がれた。


新七が言う。


「逃げてもよい。」


男たちが新七を見る。


「じゃが、荷は置いていけ。」


少しの沈黙。


相手の一人が。


ゆっくり刀から手を離した。


「行くぞ。」


その声で。


男たちは一斉に走り出した。


誰も追わない。


俺は思わず声を出した。


「追わないんですか?」


新七が振り返る。


「何のためじゃ。」


「捕まえなくていいんです?」


「荷を守るのが役目じゃ。」


新七は商人たちを見る。


「怪我人は。」


「おりません。」


商人の一人が頭を下げる。


「助かりました。」


新七は頷くだけだった。


派手じゃない。


誰も斬っていない。


でも。


荷は守った。


怪我人も出なかった。


それでいい。


しばらくして。


男たちは配置に戻った。


俺は新七の横へ行く。


「すごかったですね。」


「何がじゃ。」


「ちゃんと指揮してました。」


新七が俺を見る。


「当たり前じゃ。」


「前なら。」


「前なら何じゃ。」


「もうちょっと慌ててたかも。」


新七が俺の頭を軽く叩いた。


「余計なことを言うな。」


でも。


少し笑っていた。


その日の夕方。


城へ戻る。


新七は。


すぐに信長のもとへ報告に向かった。


俺も後ろにつく。


「街道にて、荷を奪おうとする者がおりました。」


信長が新七を見る。


「それで。」


「七人ほど。」


「斬ったか。」


「いいえ。」


信長の目が少し変わる。


「逃がしたのか。」


「荷を守るのが役目にございました。」


部屋が静かになる。


新七は続けた。


「追えば、こちらにも怪我人が出たかもしれませぬ。」


信長は何も言わない。


俺まで緊張する。


しばらくして。


信長が笑った。


「よい。」


新七が顔を上げる。


「はっ。」


「役目を違えぬのは大事じゃ。」


信長が新七を見る。


「よくやった。」


新七が深く頭を下げた。


「ありがたきお言葉。」


その言葉を聞いた瞬間。


俺まで嬉しくなった。


信長が。


今度は俺を見る。


「玲央。」


「はい。」


「お前は何もせなんだか。」


「今回は何もしてません。」


信長が笑う。


「珍しい。」


またそれか。


俺は少し笑った。


「新七さんがやったんです。」


信長の目が。


新七へ戻る。


「そうか。」


その一言だけだった。


でも。


今までとは。


少し違った。


新七が。


信長に。


一人の家臣として。


ちゃんと見られ始めている。


馬廻。


まだその名を名乗るには早い。


でも。


信長の目に。


久世新七という男は。


確かに残り始めていた。

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