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光と色の世界N  作者: 八八十
差別と陰謀と契約・後
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ここは帝国から国をひとつ越えて王国に向かう北から南へと伸びる街道。

街道のそばで緩やかな夜風に撫でられた背の高い草原が波打つ。

王国の関所を越えて半日ほど馬で揺られた先の場所に、隊列を組んで馬をゆっくり進ませる武装した集団がいる。


このままでは、まずい。

至急合流、報告をあげねば。


「全隊止まれ。」


平原には跪いた女と横たえられた女がいる。


「その者らは、どうした、作戦は成功したのだろうな。」


「はっ、申し訳ございません。あの者が暴走して作戦を無視したため失敗に終わりました。」


馬に乗った大きな男の眉が釣り上がる。


「続けろ。」


「はっ、王都に被害は出ておりますがご要望の壊滅状態にはあらず、また王も健在であり貴官が足を運ばれましても即時降伏せしめるものではございません。一度、帝国に帰還されることを提案いたします。」


男は馬から降り、女の首を掴んで上に引っ張り上げた。

苦しそうにもがく女を見て舌なめずりをしながら様子を窺っている。


「貴様らはとても稀有な魔法と才能を併せ持っている。それがなければ即座に首を刎ねていたところだ。しかし、先の壊滅状態ではないということはどういうことだ。」


男が女を地面に放り投げ、地面に転がったがすぐに跪いた格好を取った。


「ぐほ、がは、はっ、申し上げます。得体の知れない子どもに人智を超えた能力で止められました。あれは、他人の技を自分のものにしてしまうものです。現にかの者の技である屠龍を使っておりました。」


「ほう、また興味をそそられる存在がいるものだ。」


馬を降りた男が隊列に向き直る。


「全隊、今日はここで野営をしたのち、帝国へと引き返す。さて、我々は疲れている。ここまで娯楽もなしに進行してきた。このまま引き返すのも味気ない。今すぐ奉仕に取り掛かれ。」


「っく!」


「どうした、できぬとでも?」


女の首に剣先が当たる。

女が悔しそうに、だが命令に背くことができず、徐に服を脱ぎ始めた。


「これはこれは帝国の将校殿。」


「!何者だ!!」


帝国兵が各々の武器を抜く。


「おやおや、その物騒なものは収めてください。こちらは丸腰ですよ?」


「もう一度問う、何者だ。」


帝国の将校は至って冷静に突然現れた謎の男に言葉を投げる。


「この王国内にある小さな村の村長ですよ。」


「貴様、どこかで。」


「はて、お会いしましたかな?」


村長と名乗った男が帝国の将校に悠然と歩きながら近づく。


「どうしてここに?」


はだけた女が服を抱えながら村長に尋ねた。


「詳しいお話は割愛しますが、そこの女を追跡していたのですよ。どのような手段でどこまで行こうが、死ぬまで追いかけられるのですよ。その者をね。」


村長が寝ている女を指さす。


「貴様、まさか・・・!!」


「さて、このまま帝国に帰るのはちょっと物足りない、ということでしたね。ならば気分も爽快日頃の鬱憤も晴らせる素敵な場所へと私がご案内いたしましょう。」


「貴様こそなぜ帝国を裏切った!白い砂漠に追放されたのでは?!」


「おや、あなた方の行き先を見事ご名答いただきましたね。さあ、行きましょうか、白い砂漠の真ん中に。」


「前人未到の未開の地だぞ!魔獣も特級が雑魚だという。」


「そうですか、でも私には関係ありませんね。行くのはあなた方ですから。光の空、投下。どうぞ良い旅を。」


男たちの足下に黒い穴が開き、馬もろとも落とし込んで穴が閉じる。

村長が女の方に歩み寄った。


「貴様、あの時の。くそ、ここまでか。」


「そうですねここまでです。あなたが王国を裏切った理由教えてくれませんか。」


「・・・。」


「そうですか。汚れた仕事は儲かりますからね。ちなみに兄弟たちは元気ですよ。」


「っ!なぜ?!」


「これは本当にたまたまですね。野営をしていたところに来たのですよ。何日も食事を口にしておらず、中には病気の子供もいましたか。そうですね、今頃は私の村の大切な子供たちが病気も治して一緒に食事でもしているのではないでしょうか。聞けば年の離れた姉を探している、と。その耳につけているもの、一緒のものをつけている一番大きな弟さんがいましたのでピンと来ましたよ。」


「弟たちは、無事なのか?」


「それは自分の目で確かめてください。このまま連れて行っても良いですが、ひとつ約束をしていただけませんか。」


女が服を着てその身を整える。

村長の顔をまっすぐ見つめた。


「断る選択肢はない。なんだ。」


「はい。私の愛する村の発展に尽力していただきたいのですが、よろしいですね?そこの女性と一緒に。兄弟たちも村で引き取りましょう。」


「それだけか?」


「村の発展を舐めてもらっちゃ困りますよ。やることは沢山あります。まずは国王陛下に謁見し村にお越しいただくための約束を取り付けることから始めましょうか。」


「そ、それは。」


「ふふ、難しいでしょう?ですが約束です。頑張ってくださいね。それじゃあ行きましょうか。子供たちの元に。その女性は私が担ぎましょう。光の空、転送。」


村長と名乗った男がいまだ熟睡中の女を担ぎ、黒装束の女と共に空間魔法で飛んだ。

誰もいなくなった草原に聞こえるのは、風に靡いて擦れ合う背の高い草の音だけだった。



「うわ、村長!何だよいきなり出てくんな!びっくりすんじゃねーかよ、まったく。おい、おめーらうめーか?まだあるぜ!」


村長と子どもとの距離が近く、そして敬わなくてもこの大人は笑って接している。


「ロビン君、村長は悲しいですよ。そんなぞんざいに扱わないでください。」


あの男のエルフは、この村長と行動を共にしていた男。

警戒しなければ。


「ん?村長、その女性は・・・、うーん、なるほど。村長も隅に置けませんね。」


「パレントさん、わかっているなら茶化さないでください。」


!近づく影!


「ねーちゃん!」


元気に弟が私のもとまでかけてきた。


「なんだこいつらのねーちゃんか、良かったな!病気もセシリアとリタさんにかかればすぐ治っちまうぜ。」


病気が治った?

治すのに莫大な金がかかると言われた病気だぞ?

それをか?


「あ、ああ。ただいま。」


「何だねーちゃん泣いてるのかよ。だらしねーな。」


こんなに、こんなに奇跡が起こっていいのか?

私は、私はこの国の王を裏切ったんだぞ?


「さあ、私も仕事をしましたし、早速食事にしますかね。」


「村長、これ美味しい。」


あの子は、かの者を屠った。


「さすがエクシル君、わかってますね。」


「そこの女の人、エリザ様に仕えてた人だよね?」


やはりわかっていたか、報いは受けるつもりだ。


「村長が連れてきたならもう大丈夫だね。あの男に無理やりやらされてたんでしょ?」


・・・いや、違う。私は。


「そこに寝ている女性と一緒で、洗脳が解けたようだよ。」


村長、なぜそんな嘘をつくんだ。

私にそうしてもらう価値など。


「あー、おかえりー、ちゅー。」


む、起きたか。


「ちょ、いきなり。」


「あれー?ご主人様じゃないー?でも、ご主人様より柔らかくて美味しい?あなたは誰?」


「ゼコンの村の村長、キエフだ。」


「新しいご主人様?」


「うーん、そうなるかな。」


「わかったー何すれば良いの?」


「みんなと一緒に食事かな。」


「わかったーちゅーはー?」


「え?ちゅー?」


「そう、ちゅー。ぷはーうまいーじゃあ食べてくるねー。」


何をしているんだ、しかしこの性格と順応の速さは見習うべきか?

く、見せつけてくれるな。


「私も食べで良いか?」


「構わないよ。早くしないとなくなってしまうよ。ところで君たち名前は?」


「ルエットだ。」


「ボクねライム、17歳だよ。ルエットよりお姉さんなんだー。これおいしーね。そんちょーが作ったの?」


ライムめ、警戒心のかけらもない。


「そんちょーこれちゅーの次においしいね。また作るときはボクにも言ってね。ボクの魔法マリオネットで量産しちゃうから。そういえば魔道具の反応がないなー。ボクが寝ちゃってた間にこわれちゃったかな?また作ればいっかー。」


ライム!余計なことを!!


「ボクね、人形とか無属性の人を操るのが得意なんだー。でもそれでね、両親に気味悪がられて16歳になったときに家から追い出されちゃった。食べるものも何もなくてもう死んじゃうかなー、て時に前のご主人様に会ったんだー。助けてくれたおれーにちゅーしてたんだけど、それ以上のことはしてくれなかったなー。とーぎじょー?で見た無属性の人たちの戦いが今日もあって、今回は無属性同士で戦わせるから操れって言われて操ったんだー。ボクの魔道具があれば何人でも操れるよ、凄いでしょ。でも殺し合いは嫌なんだー。とーぎじょーでお金集めするって聞いたからやったけど、どうなったのかな?知ってる?」


あいつ、そんなことをライムに吹き込んでいたのか。

私の兄弟以外は手を止めてライムの話に耳を傾けている。


「そうか、それは残念だったね。イカサマとバレてその、前のご主人様とやらは捕まったよ。もう戻ってくることはないのではないかな。」


嘘だ、やつはそこの子どもが。


「そーなんだー。またひとりぼっちになるところだった。そんちょーありがとー。おれーのちゅー。」


「ライム、あまり子どもにそういうのを見せるな。」


「んー、ぷはー。やっぱりおいしー。はーい。じゃみんな見てないところで続きしようね。」


「ロビン、わたくし。」


「ん、じゃあちょっと行ってくる。」


どこへ、まさか?!王宮へ?!


「ロビンはついて行くの?」


「仕方ねーだろ。離れた隙に魔獣に襲われてたなんでやだろ。用を足してる間に見張れるのは俺しかいないだろ?」


なんだ、そう言うことか。

ん?いや、女の子の様子が少し違うようだな。

他の女子も、か。

私もあれをあまり見てると別の欲求があらわれて抑えるのが大変だが。

それと、少しは村長も自重をすればいいものを。


「なんだかまた眠たくなっちゃった。おやすみー。」


なんだ?また寝てしまったのか。


「早いな。」


「ええ、パレントさん。起きてから寝るまで嵐のようでしたね。しかし、過去は辛いものだった。人肌が恋しいのでしょう。今は好きにやらせておくのがいいかもしれません。」


私も、ライムの過去の話は初めて聞いたかもしれない。


「結構満更でもない顔ですがね。村長。」


「そんな、あははは。ふう。」


村長の過去も気になるところだが、帝国出身であることは間違いなさそうだ。

裏切ったとも。

私と同じ、ライムもきっと同じ扱いだ。

私は生きたい、兄弟たちと一緒に。

そのためならなんだって。


「なんだよ村長真っ赤じゃねーかよ。」


少年が戻ってくるなり村長を茶化すような態度を取った。


「村長、さっきからキスされすぎて顔が緩んでるのよ。」


「気持ちよさそうだったよね。」


「エクシルぅ、気持ち良くなりたくない?」


「セシリアちゃん、弟さんたちがいる前で、あっち行きましょ。」


エクシル、ロビン、セシリア、リタか。

エクシルが両腕を掴まれて引きずられていくな。


「あっと、待って、助けてロビン!」


「いや、頑張れ。」


「ロビっ!!むっ。」


「はえーよ、もうちょっと理性を保てよ。」


「お?ねーちゃん笑ってら。こいつら面白いもんな!」


長らく忘れていた。

楽しい、安心、嬉しいという感情。

希望という言葉。

それが今一気に押し寄せてくる。

もう壊されたくない、手放せない。

一緒にいるには何をすべきか、私の中で覚悟が決まった。

キエフ

種族:人間

階級:?

武器:?

属性:(LIGHTS)

才能:追跡(FOLLOW)

絶技:?

魔法

・空間転移 ・転送 ・投下


ルエット

種族:人間

階級:?

武器:?

属性:(LIGHTS)

才能:?

絶技:?

魔法

・空間転移 ・転送


ライム

種族:人間

階級:?

武器:?

属性:?

才能:?

絶技:?

魔法

・マリオネット

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