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光と色の世界N  作者: 八八十
差別と陰謀と契約・中
34/50

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敷いた風呂敷が広過ぎたかもしれない

次の日、窓の外のガヤガヤ声に目を覚まし、ペタペタとなにかを触ってしまった。


「興味ある?」


リタさんの声が聞こえる。

今僕が手に触れているのは、強く揉んでしまったものは。


「ああん、エクシル、ダ・イ・タ・ン♪」


むぎゅってなった。

力一杯の腕と大きな胸が僕の呼吸を苦しくさせる。


「あら、ごめんなさい。危うく溺れちゃうところだったわね。」


解き放たれて僕はすぐに起き上がる、はずだった。

今度はセシリアが自分の胸を僕に押し付けるようにして、ベッドに押し倒すように抱きついてきた。


「胸はこれから成長するもん。この胸がないときの私も楽しんでね♪」


セシリアが良くない方向に精神的に強くなってる気がする。

リタさんの影響がすごい。

こういう時はなすがままが一番。


「外、どうなってる?」


セシリアの服でもごもごと話すと、何故か顔を赤らめた。


「食べたいの?」


何を?!

セシリアが両頬に手を当てて恥ずかしがる仕草をする。

まあ、可愛いからいいか。

セシリアからも解放されて、ベッドから降りて窓の外を眺めると、そこから街の様子を見渡すことができた。

朝も早いはずなのに多くの人が街中を歩き回っている。


「今日が祭りの初日。」


「そうねー。新しい月の始まり、護衛の本番ね。」


後ろから僕の胸の前に腕を回してリタさんが答えた。


「さて、洗面室はあるのかしら?昨日そのままで寝ちゃったから。あそこかしら?セシリアちゃんも、行きましょ。」


部屋の中にまたドアがあって2人して中に入っていく。


「わー、すごい。」


「水だけじゃない、お湯も出るわよこれ。」


「きゃはは、冷たーい。」


「きゃ、やったわねー!」


中から女子の声が漏れてくる。

一体何やってんだ。

床がべちょちょになってなきゃ良いけど。

そう言えば僕の服もボロボロだ。

パレントさんに買ってもらった服も焼けたりして穴だらけ。

よく王宮の人たちは普通に僕に話してたな。

服を脱ぐと、セシリアやリタさんの魔法のおかげで傷が残ってない。

2人には感謝しなきゃ。

素振り棒は半分くらいで燃え残ってる。

絶技、昨日覚えたけどあの武器を持ってないと使えないだろうな、盾も。

マジックバッグが欲しくなってきた。

その前に服だ、服を探そう。

下着だけになって部屋中探し回ったけど、寝るときに着る服以外何もない。

とりあえずその服を着て、ベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。

また寝てしまいそう。


「出たわよー。」


洗面室の方を見ると、タオルを巻いたリタさんが出てきた。


「あ。」


タオルが落ちる。


「なーんてね。ちゃんと着てましたー。ねえ、興奮した?」


下着は着てた、だよね。

結局服着てないのと一緒な気が。


「赤くなってるー、かわいー。」


背中ツンツンしないで。


「ガウンに隠れてないで出てきなさいよー。」


ガウンか、顔だけ出したら目の前にセシリアがいた。

下着の、下だけきたセシリアが立っていた。


「セシリアちゃん?」


時が止まったようになる僕とリタさんをよそに、セシリアはガウンの中に潜り込んできた。


「あー、エクシルも裸だったんだ。筋肉、柔らかい。この胸の筋肉も、あ、これ、ちゅ。」


僕はガウンから飛び出してセシリアから全力で離れた。

両腕で胸を隠すようにしながら。


「セシリアちゃん。どうだった?」


「うん、ちょっとしょっぱい。」


「体、拭いてくる!」


洗面室に逃げ込んでドアを勢いよく閉めた。

ふう、これで一安心・・・。

洗面室は大きな鏡と水を出す口が2つある。

こっちが水で、こっちがお湯、あっち!

棚があって、その中に新品のように真っ白な、新品かも、タオルが入っている。

小さいタオルを濡らして裸になって全身を拭く。

あーさっぱり。


「8歳の割にいい体よね。」


「うん、おいしかったよ。」


何見てんのー。


「ちょっっと。」


ドアが閉まって顔が消えた。


「あとちょっとで前側も見えたのに、残念ね。」


「前側、昔見たことあるけど、その、ロビンより大きかったよ。もしかしたら今はもっと・・・。きゃっ。」


なんか、ごめん、ロビン・・・。

とにかく下着しかないのは問題だ。

コンコン、と出入口のドアから音がした。


「みんな、時間ですよ、起きていますか?」


村長だ!入ってこないのは、彼女らがいるからか。


「おい、お前たち、また一緒にいるのだろう。この部屋が最後だからわかっているが。護衛なら主人よりも早く起きて支度をするものだ。全く。」


「今着替えてるから待ちなさいよー。見ないでよ?」


「誰が貴様の着替えなど覗くか!まったくけしからん!」


「スカイル様!僕、服ない!」


「ん?エクシルか、そういえば貴様は昨日の戦闘で服が服の役割を果たしていなかったな。おい、子供用の服を持ってくるんだ。」


良かった、けどロビンと一緒の格好かな。

仲間がいて良かったー。


「着替えたわ。入っていいわよ。」


リタさんが中からドアを開けて外にいる人たちを中に招き入れた。


「まったく、貴様のその服はどうにかならんのか。」


「あら、これから護衛につくのにちょうど良いじゃない。相手は男なのでしょう?あたしの色仕掛けで惑わせてやるわよ。」


「ふん、私より年下の貴様がその貴族のお眼鏡に叶うとは思わないがね。」


年上だったんだ、スカイル様。


「殿方の趣味なんて千差万別よ。そんなことより、聞いたでしょ。」


「ああ、ドアは閉まっているか?よし。まだ確定したわけではないが、まさか無属性の使用人を使おうとはな。我々に対して何もできないだろうに、何を企んでいるのか。そこのエクシルのような稀有な才能を持っているなら話は別だが、ここ王宮の使用人は、使用人として働く才能を審査してから雇い入れている。戦闘の才能など持ち合わせている者はいない。」


これだけの広さだし、部屋の数だから、仕事は手早くできないとダメだろうね。

使用人としての才能か、聞いてみよう。


「どんな才能なの?」


「悪いが全て覚えてはいない。だがメリーの才能が最たるものだろう。掃除や整頓、身の回りの世話、細かいことに気がつく配慮深さ、いろいろあるな。無属性は才能を多く持つから、審査は厳正だ。ひとつでも戦闘向きの才能があると弾かれる。」


「お召し物をお持ちしました。」


スカイル様についている使用人が服を持って戻ってきた。

やっぱり、これじゃなきゃダメ?


「これは私が昔来ていた・・・。これを此奴に着せろと?おい、これ!・・・いや待て、これは面白いかもしれない。おい、そこの、私が着替えさせてもいいか?」


「え?はぁ、ええ、構いません。」


スカイル様は服を乱暴に掴むと肌着とズボン以外をベッドに放った。


「直立不動だ。まずは上から着せるぞ。」


手をあげて肌着を着る。

え?これ全部やるの?ズボンとかシャツは自分で着られるよ?


「スカイル様。」


「ん、なんだ。」


手は止めてくれない。


「自分でできるよ。」


「そんなことはどうでもいい。」


えー。

僕はその一言で諦め、着せ替え人形に努めた。


「最後にこのブレザーを着て。よし、次は頭だ。綺麗な黒髪だな。セットもしやすい。できたな!うわははは。私の幼い頃にそっくりではないか!なかなか男前だぞ?貴様、大義であったな、下がって良いぞ。」


使用人が部屋から出て行った。

はあ。

肩はギチギチしてて動きにくい。


「服に合わせて靴も・・・。この靴は・・・どこで購入したものだ?」


靴まで!?


「ニルスだけど、靴はこれで!動けないと護衛できないから!」


「ニルス、あの雑貨屋のような、物が所狭しと陳列してある店か?」


「あ、うん。そうだけど。」


急に声色が変わったな。


「貴様は運のいいやつよ。あそこの店主は気に入った者にしか物を売らん質だ。その隣の防具屋もそうだ。昔はよく通ったが、今は門前払いを受けてしまう。何故そうなったかは分からんが、あそこの品は良いものだ。靴は変える必要はない。よし、これで王妃殿下もご安心なさるだろう。ん?インシグニアがあるではないか。その服を着て居ればこれは必要ないだろうが、持っておけ。」


スカイル様が上機嫌だ。

空色のブレザーに白いズボン、ブレザーの中には白いシャツ。

フリフリがないからまだ良いか。

いんしぐにあ?をもらってポケットに入れる。

念のためプレートも持っていく。


「王子様・・・。」


「全然似てないじゃない。でもこれは、国の宝よ・・・。」


「村の彫刻はこの姿のエクシル君にしようかな。」


ゴクリ、セシリア、リタさん、護衛の男の人の唾を飲む音が聞こえる。

護衛の人を見上げると、目を逸らす、セシリアも、リタさんも、逸らす。

スカイル様は、腰に手を当てて顎を片方の手で撫でながら、まじまじと僕を観察してる。

村長も、スカイル様とあまり変わらない感じ。


「行こうよ。」


「おっとそうだったな。その服は私のお下がりだが、幼少の頃私もこのように見えていたかと思うと、なんとも誇らしく清々しい気分だ。陛下による祭りの開催宣言は宮殿前広場で行われる。我々が急に広場に現れては民が驚いてしまうだろうから、王宮を出る扉の前に飛ぶぞ。」


すっかり熟練した魔法使いのそれだ。


「エクシル、その武器は置いていけ。今から行く場所には似つかわしくない。闘技場でその武器を見ているはずだ。民を恐怖に陥れてはならん。」


これから楽しい祭りなのに恐怖はダメだ。

スカイル様そういうところはしっかりしてるよな。


「みなしっかり掴まれよ。光の空、転送。」


僕らは王宮の外につながる大きなホールの真ん中より後ろ側、ちょうど王様が真ん中にいるところの真後ろに飛んだようだった。


「陛下、お待たせし申し訳ございません。」


「ん?おお、スカイルか、余も今しがたここに着いたばかりだ。」


転移先に人がいて場所が重なったらどうなるんだろ。

そんなことよりエリザ様は、王様の隣にいた。


「エリザ様。」


僕の呼びかけに応じてエリザ様が振り向いた。

斜めにつば広のヒラヒラの帽子をかぶってる。

全身金色?

走って僕たちはエリザ様の護衛の隣に向かう。


「・・・その服は?」


エリザ様が扇で口、というか顔半分を隠した。


「スカイル様に着せてもらった。」


・・・あれ?反応がない?もしかしてすごく怒ってる?


「背中も、お見せなさい・・・。」


もしかして、スカイル様が着ていた頃を思い出しているのかな。

よく見えるように後ろ向きになって、腕を伸ばしたりして服をよく見てもらうことにした。

前に向き直っても、まだ扇で顔を覆ったままだ。

王様もこっち見た。

王様もびっくりした顔してる。

王様も濃い茶色の服に金色の何かをたくさんつけた服だ。

これ、本当に着て良かったのかな。

スカイル様を見ると、あからさまに悪い顔してる、このやろー。


「ちょっと、通せ。エクシル、それは?」


「スカイル様が。」


「お主に着せたのか?」


「うん。」


「まったく困った奴め。これは王子の鑑定式の時に着た服でな。懐かしいが。これだともうひとりどこからか王子が湧いたと騒ぎになるやもしれんぞ。」


うげえええ、そんな由緒正しい服だったの?!

スカイル様を睨みつけようとした先には、もうどこにもいなかった。

こんのー。


「構いませんわ!」


エリザ様?


「そのまま、わたくしの護衛としてそばにつけます。この者が護衛と見えるよう剣を。」


「はっ。」


護衛の女の人が走ってどこかに向かう。

宣言の時間大丈夫かな。

あ、帰ってきた。


「これは、昔王子殿下が、使用していた、練習用の剣だ。」


かなり息が上がってる。


「ありがとう。」


剣をベルトに通して走ってきた女の人の隣に並ぶ。

何か視線を感じる。

上を見上げると、護衛の女の人がこっち見てる、エリザ様も今見てたな。

2人ともすぐに逸らした。

そんなに変なのかな、嫌だなこれで人前に出るの。


「それでは、始めようではないか。」


王様を先頭にして歩き始めて、大きくて重そうな扉が開かれていく。

外の光が眩しい。

だんだん目が慣れてくると、たくさんの顔がこちらを向いて、まだかと急かすような顔をして待ってる。

王様が陽の光に照らされて、キラキラの服がさらに光り輝く。

その光に気がついた人たちから、声が波紋のように前から奥へ、どんどん大きくなっていく。

歓声に手を振って挨拶する王様。

スカイル様マリー様も手を振ってる。

ロビンは色は緑なんだけどまた昨日とは違った服を着てる。

ブレザーって言ってたっけか。

開会宣言のためにみんなかっこよくしてるんだな、分からないけど。

エリザ様は振ってない。

ああ、僕だけすごくキョロキョロしてる。

ちゃんと前向いて、護衛ですよを前に出さなきゃ。

王様が街の人よりも少し高い位置にある広場の舞台の上、真ん中に立った。

立ったままでやるのかな、椅子ないし。

王様が手の平を街の人に向けて腕を上げた。

歓声が前から順に聞こえなくなる。

すごい、静かになった!


「これより!建国700年の祭祀の始まりをここに宣言する!」


うわああ、とさっきよりも大きな歓声が沸き起こる。

街の人の何人かは僕のことを指差してた、服のことかな。

宣言は王様のさっきの一言で終わり。

また王宮の方に歩いて戻る。


「次は何するの?」


護衛の女の人に聞くと、


「貴族の方々とのご挨拶だ。ただ笑顔で頭を垂れて居ればよい。いやまて、お前はそのまま微笑んでいればよい。」


なんで。


「その、なんだ、お前は絵になるからな。まったくどういう生まれならそんな顔になるのだ。」


白い顔が赤くなっていく。


「エクシル、その者の言うとおり、貴族との挨拶の際はわたくしの傍で微笑んで手を振っていてください。それだけ構いません。護衛はこの者らに任せて。よいですか?」


「は、い。」


「どうしました?歯切れの悪い。」


「それだけでいいの?」


「ええ。それだけで構いません。」


何か考えでもあるのかな。


「うん。わかった。エリザ様の言うとおりにする。」


護衛の人と歩く場所を代わって、エリザ様のそばに移動する。

王宮の出入口の扉の中に入り、ホールで一列に並んで誰かが入ってくるのを待った。

しばらくして扉から誰かが入ってくるのが見える。

扉から差し込む光でホールの中に入ってくるまで顔がわからない。

僕には全員知らない人だから良いんだけど。

笑顔と手を振るのを忘れずに、エリザ様の隣で挨拶をする。

1番最初の人を皮切りに、どんどん人が入り口から押し寄せてきた。

王様がひとりひとりに挨拶をして終わった者から使用人が王宮の中へと案内していく。

子ども連れ、と言ってもマリー様より歳上が多くて僕くらいか下は全然いない。

最初の時より列の動きがだんだん鈍くなってきた。

僕の前を人が通るたびに、僕の顔を2回見る。

中には王様の挨拶そっちのけで僕を見てる女の人までいた。

不安だ。

ようやく列に終わりが見えてきた。

最後まで気を抜かず、笑顔で乗り切った。


「よくできましたね。これで舞踏会の話題は其方で持ちきりでしょう。」


え?それはどういうこと?


「舞踏会では子ども自慢が必ず始まります。なんと退屈な時間であるか。ですが今日は其方のこと。どこの子か、誰の子か、どうしてわたくしの隣で笑顔で手を振っているのか。退屈な貴族たちの話など、そういった噂話が好物ですからね。それにしても、精巧に作られた人形のようね、とても美しいわ。」


美しい?初めて言われたからあまりピンと来ない言葉だ。


「王妃殿下とのお役目、ご苦労であった。」


護衛の女の人だ。


「あ、うん。あの、美しい?」


自分の顔を指差して聞いてみた。


「あ、ああ。おそらく王宮に仕える男日照りの女兵がお前を見たら、獣と化すだろうな。」


敵が増えるじゃん!


「着替えたい・・・。」


「まあ、そうだな。おい、ちょっと来てくれ。」


女の兵が別の兵を呼んだ。

この女の人は、護衛から外れた人じゃないか。


「こやつを着替えさせたい。兵舎に着替えがあるはずだ。使用人も連れていけ、着ている服はスカイル様のものだから丁重に扱うようにな。」


「了解。さあ、いくぞ。」


昨日のこと、やっぱり何か思うことはあるよね。

なんだか視線が冷たい気がする。


「セシリア、リタさん。エリザ様をお願い。」


「私も行きたい。」


セシリアも昨日の人だと気が付き、不安にかられたようだ。

女の兵を見上げる。


「取って食うわけじゃないさ。すぐに終わる。王妃殿下の護衛を優先してくれ。」


僕はセシリアを見つめて、大丈夫というように頷くと、セシリアもそれに応えるように頷いた。


「待ってるわよ、エクシル。」


王様たちが歩き始め、王宮の奥へと消えていく。


「また昨日のように陛下に怒られてはかなわないからな、さっさと済ますぞ。こっちだ。」


さっさと歩いていってしまう。

大人の足でしかも大股、こっちは走らないと追いつかない。

急いで追いついて、とても自然にこの女兵の右手に手が伸びて握った。

瞬間、とても驚いた顔をしたけど、すぐに前を向いてさっきよりも少し遅めに歩いてくれるようになった。


「昨日とは別人だな。」


「変かな。」


「何を言う。その格好のまま社交場に出れば、その容姿だけで何人もの婦女子に求婚を迫られるだろうな。」


それって外面だけ良ければなんだって良いってことか。


「その容姿を受け継いだ子息令嬢が生まれれば、貴族の格も上がるだろうな。格上から求婚されればその貴族は安泰になるだろうしな。」


そういう目的もあるのか。

エリザ様の自慢話のこと、マリー様の相手にどうかって、貴族から何度も同じ話を聞かされてうんざりしてたのかも。


「先の女兵も言っていたが、私も奴も、男日照りの女兵だからな、お前も気をつけるんだな。」


いきなり何言いだすのさ。


「昨日でお前のひととなりは理解したつもりだ。陛下はああ言ったが、あの陛下に物怖じせずに抗議をしたお前には感謝しているよ。」


「取って食べたりしない?」


「はは、しないさ。元より私には心に決めた人がいる。これが揺らぐようでは本当に兵士失格だな。」


誰だろう。


「心に決めたって、陛下のこと?」


「いやそうではない、忠義や忠誠の話ではないよ。私はスカイル様をお慕いしている。・・・なぜこのような話になった。ん?どうした?」


驚きすぎて足が止まった。

スカイル様を好きっていう人がここにいた。


「兵と王子って。」


「ああ、結ばれることはないだろうな。だが私はそれで良い。あのお方の剣となり盾となる。お役に立てることができればそれでいい。身分が違いすぎるしな。叶わぬこい滝登りさ。」


女の人が笑う。

少し、影のある笑いだった。

スカイル様、今のこと全部聞いてたらいいのに。

でも僕がこの女の人にできることは、ない・・・。


「名前、なんていうの?」


「私か?ノーラだ。」


一度戦った仲、昨日の敵は今日の友、ノーラさんに何かしてあげたい。

兵舎に向かう中ずっと考えたけど、やっぱり何も浮かばなかった。

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