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光と色の世界N  作者: 八八十
差別と陰謀と契約・中
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エリザ様のもう1人の護衛も女の人だった。

髪の毛短くて最初見た時男の人かと思った。

エリザ様は今謁見の間の椅子に座ってる。


「揃いましたわね。闘技場での成績上位の者が去ってしまったのは痛手ですが、わたくしの護衛は手厚くて助かりました。さあ、わたくしの部屋に参りましょう。」


エリザ様は立ち上がって、護衛の人と、どこから現れたのか女の使用人、メイドって呼んでた、と一緒にエリザ様の部屋に向かった。

メイドの人、黒い服と黒い長いスカートの上に白いエプロンみたいなのをして、頭に白い帽子みたいなのをかぶってる。

結構広くて結構歩く。

この広い場所をあんな重そうな服を着て歩いているのだから、足とかムキムキになりそう、僕はそんな想像をしてた。

ひとつのドアの前で止まった。


「ここです。中に入りましょう。」


こんな女の人しかいないところで僕が入っても良いんだよね?後で何か言われないよね?

お邪魔します。

ここは、応接室?同じような作りで壁が白くて、真ん中にテーブルがひとつ置いてあって、それを囲むように長椅子が2つと、椅子がひとつある。

エリザ様は椅子に腰掛けて、僕らに長椅子に座るように促した。

すると手を叩いた。

うわ、どこからきたのか誰かいる。

その全身黒ずくめの人がテーブルに何か置いた。


「では早速、其方たちがわたくしたちを狙う者たちかどうか、答えてちょうだい。」


え?今?

僕たちは顔を見合わせて。


「ううん。」「「いいえ。」」


エリザ様や他の人たちもテーブルの何かを見てる。


「違うようね。では本題に入ります。スカイルの件ですが、まだ大々的に王宮内に注意喚起はしていません。ですが、この女の兵とわたくしのこの諜報員は存じておりまして、調査もさせていただいております。この者らはわたくしとの契約で、わたくしに背くような行為はできないようになっています。契約が破られた、破られようとしている場合には、その者を死に至らしめる魔法をかけているのです。」


契約魔法の使い方っていろいろあるんだな。


「その者らの調査の結果、スカイルの言うとおり、不穏な動きをしている貴族がおりまして、今日既に王都に入り闘技場で観覧しておりましたようです。その貴族は奴隷を使った見世物をいたく気に入っておりまして、奴隷を擁護するような立ち位置の我らを排除して、あわよくば王としての地位を獲得しようとしているのです。その貴族と王は腹違いの先代の子。王が止めた奴隷と魔獣の仕合は、もともとはあのような残酷な光景を見ても耐えうる精神力をつけるためのものでした。戦乱の中、奴隷だけではない、一般の民もあのように残酷に殺されるのを目の当たりにしても動じない、強い王であるように、と。王には兄弟が何名かおりましたが、やはりあの凄惨な光景に耐えられず、王とその兄弟だけが残りました。王が何故王となれたのか。その兄弟は、光景を愉しんでいたからです。人が死ぬ現場を愉しむなど言語道断。その兄弟は王族から絶縁されたのですが、貴族の婿に入り王宮に届く地位にまで戻ってきました。その貴族は、明日の舞踏会に出席します。そこで何か、よからぬことを企んでいる、と言うところまで調べがついております。企みには協力者がいてその面も割れてはいるのですが。」


リタさんが難しい顔をしている。


「その貴族と協力者を追放することはできないのかしら?陛下の権力で。」


「まだ何もことを起こしていない者を追放しては、その他貴族からも反感を買い王族は孤立して政に支障をきたすでしょう。それにその協力者は無属性です。我々の権威は失墜、貴族たちの権力争いに民は巻き込まれて内紛が生じる、内紛に乗じて周辺諸国に狙われる、と懸念しております。」


何か悪いことをしてからじゃないと、こちらからは何も動けないのか。


「毒とかは?」


「我々の食事は、食べる前に必ず解毒の魔法をかけてからいただきますので、食事からの毒殺はまずあり得ません。ですが、舞踏会では立食の形を取りますので、そこに毒を盛ることはできるでしょう。この解毒の魔道具を明日は王につけてもらうこととなっていますが、このひとつだけしか用意することができませんでした。スカイル、マリーにも渡したかったのですが・・・。」


エリザ様の不安がこちらにも伝わってくる。

髪の短い女の人が悔しそうにエリザ様の言葉に続いた。


「暗殺その他闇討ちではなく、その貴族が、またはその手の者が公の場で王に直接仕掛けさせる方法を考えなくてはならない。」


片手で顔を半分隠しすように手を当てて、悔しそうに歯を食いしばってる。

なんとなく全身黒い人もそんな雰囲気だ。


「捕まえて尋問は、ダメね。契約魔法をかけられていては何か言う前に死んでしまうわね。王族が全くの被害者、という構図にならない限り何も解決しない。頭が痛いわ。」


リタさんも頭を抱えてるな。

パレントさんはこのことを言ってたのかな。

そうなると、もう誰がどうなってるのか気がついてるのかも。

王様が人のいる場所で攻撃を受けなきゃいけないんだから。


「護衛がいてもいいの?」


「ある程度、向こうもこちらが気が付いていることはわかっているだろう。護衛がいない方が不自然だ。」


女の人が答えてくれたけど、こちらが気が付いていることをわかっているのに、多くの人の前で王を攻撃させる?

僕ならどうするかな。

舞踏会は様子見で他の機会に当たるかな。

もっと他の方法があるのかも。

エリザ様の顔色、あまり良くないみたい、辛そうだ。


「殿下、少しお休みされてはいかがですか?祭りの準備に諜報とご多忙でしたから。」


黒い人が気遣ってる。

声からして女の人だ。


「ええ、そうね。これからと言うときに倒れてはいけませんね。今日はもう休ませてもらうわ。」


エリザ様が立ち上がって、ふらついた!危ない!

兵の女の人が抱えてくれて床に倒れなくて済んだけど、大丈夫かな。


「今日は私とこの者が護衛する。貴様らも部屋に戻って明日に備えてくれ。」


大丈夫、大丈夫です、そう言ってるけどふらつくエリザ様を、女の人たちが連れて部屋から出て行った。


「あたしたちも戻りましょ。」


「私、あの部屋の場所わかんないかも。」


「僕も。」


「げっ、じゃあ。」


この広い王宮で3人、迷子になった。

とりあえず廊下に出て見回してみたけど、廊下をどっちに行っても同じ風景に見える。

飾ってある絵が違うけど。

そういえば、あの部屋から謁見の間まで空間転移で来たんだった。


「謁見の間に兵がいるはずだから、なんとかそこまで戻りましょ。」


リタさんの言葉にセシリアと一緒に頷いて、来た道だと思う方向に歩き始めた。

少し歩いた曲がり角で、運良くメイドが通りがかった。


「あ、あの!」


メイドが立ち止まる。


「謁見の間にはどう行けば。」


メイドは直立不動のまま何も言わない。

しばらくお互い見つめ合う時間があって、珍しい赤い髪だなとか、目が切長だな、首に何かつけてるけど服の中に入っててどんなのかわからないな、とか思ってると、はたと気がつく。


「もしかして、喋れない?」


メイドはお辞儀して足早に立ち去ってしまった。


「あ、行っちゃった。」


ここで働いている人は奴隷だった人。

喋れなかったりする人もいるんだろう。

メイドが来た方に向かってみる。

するとまた、今度は男のお爺さんだ、また運良く出会うことができた。

道を聞くとわかりにくいからついてくるように言われた。


「あの、ここのメイドで喋れない人いる?女の人なんだけど。」


「はて、そのような者はおりましたかな?最近新しい者が増えましたからな。その中にいたかもしれません。ですが、喋れないと言うのはなぁ。耳が聞こえない、会話ができない者はメイドではなく、他の下働きを任されるものですがなあ。極端な恥ずかしがり屋ですかな。」


急に怪しくなってきた。


「リタさん。」


「ええ、協力者、かもね。でもこんなわかりやすく、普通にいるものなの?お粗末すぎて訳がわからないわ。」


「エクシルぅ、女の人の特徴、覚えてる?」


「うん、赤くて肩にかからないくらいの髪に切長の目、身長はリタさんよりも少し低いくらい。」


顔は鮮明に覚えてる。


「ああ、その子なら。」


え?知ってるの?


「喋れますよ。やはり最近の新人ですな。私と同じ無属性で奴隷上がりの子ですよ。首飾りをとても大事そうにして誰にも触らせなかったですな。ここの者は何かしら心に傷があるものばかりです。あの首飾りもお守りか何かなのでしょうな。」


・・・なーんだ、ただの恥ずかしがり屋さんか。


「はあ、なんかどっと疲れたわ。ねえ、謁見の間はまだかしら。」


「ええ、もう少ししたら、ほら、兵が見えますでしょう。あそこが入り口です。」


はあ、やっとここまで帰ってきた。

前からマリー様が通りがかった。

ロビンは、いないようだ、メリーも、護衛の人が後ろにいる。

やっと知ってる顔に会った。


「あら、爺やじゃない、ご機嫌よう。」


「ご機嫌よう、お嬢様。お友達を連れて参りましたぞ。迷っておられたようですな。」


「そう、それはご苦労様、あとはわたくしに任せてちょうだい。」


「はは、それでは私はこれで。」


マリー様の横を通り過ぎるようにお爺さんが歩いて廊下の角を曲がっていた。

マリー様が険しい顔をしてるな。


「爺や、なぜ、この者たちがわたくしと関係がある者だと知っているの?」


え?!


「この王宮でわたくしたちのことを知っているのは、王族についている使用人たちだけよ。そしてその使用人たちには、お母様がかけているような魔法がかけられて、王族たちの部屋の中のことはそとに漏れないようになっているのに。爺ややその他の使用人たちにはまだ話していないはずなのに。」


それじゃあ、いやでも何年もこの王宮にいるような人が協力者?!

それだとエリザ様との話に食い違いが。


「マリー様、ここは一度お部屋に戻られた方がよろしいかと。ロビン、様、も、今回のことを話せばわかっていただけるかと。」


ん?そっちはそっちで何があったのさ。


「ロビンがどうしたの?」


「あまりにもわたくしが離れないものですから、すごいお怒りに。その、大きい方の用を足すにもついて行こうとしまして。」


護衛の人と顔を見合わせて、今回ばかりは意見が一致してお互いにため息をもらした。


「ロビンの説得に一緒に行くよ。」


「ありがとう、ござ、ひっく。」


あーあ、泣いちゃったよ。


「マリー様。」


セシリアが珍しく話しかけてる。


「うぐ、ひゃい。うう。なんでしゃう。」


「ゼコンの村にみんなで行くときに、ロビンのこと、お話ししてもいいですか?何が好きとか、どんな事すると怒るとか、苦手なものとか、そんなお話です。」


「!!!ぜ、じぇひ!!」


「えへへ、だってお友達ですから。困っていたら助け合うものです。」


セシリアが胸を張ってマリー様を慰めてる、いや慰めてるのか?


「あら、じゃああたしも混ぜてよね。マリー様、セシリアちゃん。」


女の子たち?が手を取り合ってる。

ああ、なんだろう、一つの大きな一枚岩が見える。

ロビンのところに行って部屋の前で僕が呼ぶと、すんなりドアを開けてくれた。


「・・・何の用だよ。」


椅子に座って机に片肘ついてこっちみてる。

俺は怒ってますよ、の意思表示がすごい、びんびん伝わってくる。

セシリアの後ろにマリー様隠れちゃった。

マリー様のが背が高いから全然隠れられてないけど。


「聞いたよ。マリー様のこと、許してあげてよ。」


「本当に、ついてきたんだぞ?セシリアがついてきたら嫌だろ?」


「うん。」


「それと一緒だよ。」


うーん。

マリー様がロビンから離れていても大丈夫にするには、もう思いつくものはアレしかない。


「契約の魔法、してもらったら?」


「契約ぅ?」


「うん、本当は16歳にならないとダメらしいけど、魔法自体はかけられるみたいなんだ。」


「何でお前がそんなこと知ってるんだよ。」


おっとさすがロビン、鋭い。


「それは、リタさんやセシリアに魔術書読ませてもらってるから。知ってるよ。」


「ふーん。それで、それとこれとどんな関係があるんだよ。」


「将来結婚するって契約を結べば、マリー様も落ち着くんじゃないかと思って、何が確かなものがないと不安なんじゃないかな。」


ロビンのブスっ面がさらに酷くなった。

でもマリー様がいるから嫌とも言えないのか、はーっ、と長いため息をついて、立ち上がってこっちにくる。


「別にマリーのことは嫌いじゃねーよ。物事には限度があるって話だ。抑えられんならそれに越したことねーよ。」


後ろを振り返ると、セシリアの後ろのマリー様の顔が明るい、いや眩しい。


「そ、それならもう怒りませんか?」


「ああ、で、何すんだ?」


「セシリア、お願い。」


セシリアがマリー様に耳打ちして、うん、期待してた反応が返ってきた。

顔を真っ赤にして俯きながらロビンの前にやってきた。


「それじゃあ、始めます。護衛の方も秘密にしてください。光の青、コントラクト。」


護衛の人から、ああ、それね、て反応が返ってくる。

もっと止めるかと思ったけど、マリー様のことを気にかけてのことだろうな。

それかよっぽど酷かったか。


「わたくしマリーは、ロ、ロビン、と、こ、こ、婚姻、の、契約を結びます!」


ロビンに抱きついて唇を重ねた。

ロビンは驚いて目を見開いて、でもマリー様を抱き止めて何もしない。

・・・長い。

ゆっくりと離れる2人。

マリー様はすっと真剣な表情になり、少しロビンから離れる。

ロビンとマリー様は向かい合った。


「わたくしマリーは、ロビンを愛し、一生添い遂げることをここに宣言します。よろしくお願いしますね、ロビン。」


「ああ、望むところだ。」


2人とも顔が凛々しくなった気がする。


「ロビン、お話があります。そこにお座りになってお聞きください。」


「メオトなんだろ?敬語はいらねーよ。」


ここまで効果覿面とは。


「この王宮に、スカイルお兄様の言うとおり、何者かが入り込んでいます。先程わたくしが小さい頃からここに仕えている爺やが、その不穏な存在であることがわかりました。非常に残念ですが。ロビン、思った以上に多くの者が入り込んでいるようです。お願い、わたくしを守って。」


「ああ、わかった。マリー、メリーを頼むぞ。」


空いた口が塞がらない。

護衛の人も一緒の顔してる。

小さな王様と王妃様がここにいる、そんな感じ。


「あ、明日さ、舞踏会でその、エリザ様が言ってる貴族の人くるから。今は待って。」


ロビンが今にも動き出しそうだったから止めておかないと。

ふー、なんだ、2人ともキスひとつで全部変わったぞ。

僕も変わった気がするけど、外から見るとこんな感じなのかな。

ちょっと恥ずかしい。


「それじゃあ、また明日ね。」


いてもたってもいられなくてたまらず部屋の外に出た。


「ふうー。」


「あたしたちもあんな感じ?」


「私たちとちょっと違う気がする。」


「マリー殿下の成長を目の当たりにできて嬉しいのですが、複雑です。すみません、部屋まで案内いたします。」


マリー様の護衛の1人が、僕らが宿泊する部屋まで送ってくれた。

内側から鍵がかけられるので、鍵をかけて、3人とも固まってベッドで眠りについた。

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