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光と色の世界N  作者: 八八十
家族と決別とスタンピード
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スタンピードは近隣の町や村にもそれなりの損害を与えていた。

デポプからほど近いクルシオンの町では、ユニオンのある町ということが幸いし、冒険者が善戦して防壁を少し破壊されるだけで収まった。

少し距離のあるゼコンの村もスタンピードの余波に見舞われたが、警備とセイヒョウによって村に一切の損害はでなかった。

もちろん、エクシルも防衛に参加したが、警備とセイヒョウの暴れまわる姿をただ見ているだけにとどまった。

スタンピードを退け、クルシオンの町に滞在し、ユニオンでひと通りの報告を済ませたパレントとパドレは、二人して酒場に出向いた。


「今回のスタンピードの調査報告が楽しみですね。燃える谷にも通ずるものがきっとあるでしょうから。」


その後、ユニオンは、デポプの再建は不可能と判断し、同時にデポプの迷宮の評価をパレントとパドレの報告と調査隊の調査結果より初級から特級へと格上げした。

調査隊編成から報告まで、次のスタンピードが起きないよう早急に進められ、わずか3日で報告がまとめられた。

隠し通路や新しいポータルの出現など、この迷宮はいまだ成長途中であることが判明したのである。

また、調査途中においても迷宮内に魔獣が所狭しと繁殖しており、調査隊の手でいくつかの階層を殲滅してはいたが、どの階層にも夥しい数の魔獣の数が観測された。

そこで、スタンピードが発生する仕組みについて、ひとつの説がとなえられた。

通常、魔獣はポータルを越えることは無いが、一定数に達すると、魔獣もポータルを越えられるようになる。

どこの階層でも魔獣が一定数を越えた時、ゲートが開放状態になり魔獣の大行進が始まる。

迷宮における魔獣の最初の発生は解明されていないが、迷宮内でも繁殖しその数を増やすことは知られている。

またゲートを越えて魔獣がやってくることも。

現在の最有力説として、ユニオンは迷宮内の魔獣の数的管理を各支部に通達した。

パレントたち一行は、ロビン、セシリア、エクシルの家族の体調を慮り、クルシオンにて5日の滞在を決めていた。

スタンピード鎮静化の立役者である5名は、ユニオンに出向けば冒険者をはじめ、受付からも熱烈な歓迎を受けた。

また、鎮静化の功績より、リタは史上最年少でミスリルに、ロビンとセシリアは史上最速で銀に昇格となった。


「断ったら今後昇格できなくなるし、エクシルの昇格の時に手伝えなくなっちゃったね。」


「そうだなー。まあ仕方ねーよ。」


そんなロビンとセシリアの心配をよそに、エクシルはゼコンの村の警備と鍛錬に励んでいた。


「もう教えられることはない、体を作れ、飯はいっぱい食べろ。」


警備との鍛錬の内容が変わる頃、冒険者たちが家族を引き連れてゼコンの村に帰還した。



パレントさんたちが村に父さんと妹を連れて帰ってきた。


「父さん。」


「ああ、エクシル、エクシル!すまない。すまなかった!」


僕を抱きしめてくれた。

父さんの細くなった手足を見て、僕は悲しくなった。


「村は?」


「無くなった。魔獣に襲われて。でも、エクシル、お前を仲間だと言ってくれた人たちに助けられた。お前のおかげで、こうして会うことができている。本当にありがとうございます!」


「迷宮から魔獣の群れが飛び出してきましてね。あれはこの私でも慌てました。ですが、無事、ここまで送り届けることができました。私の任務はこれで完了というわけです。」


そんな大変なことが。

あ、だから魔獣の群れがやってきたのか。

あれ、スタンピードだったんだ。


「エクシルぅ。ごめんね。」


「なに?」


セシリアがプレートを見せてきた。

銅から銀に変わってる。

セシリアもロビンも。

パドレさんもスタンピードを鎮めて昇格したんだ。

みんな昇格するのは当たり前だ。

何で謝ったんだ?


「おめでとう。何で謝るの?」


「エクシルの昇格の時、俺ら手伝えなくなったじゃんよ。」


そんなこと?

僕は2人が色んな人に認められて嬉しいよ。


「気にしないでよ。」


プレートの色を気にする2人の後ろから偉そうにリタさんが歩いてくる。

僕の前で前屈みになった。

プレートで顔を扇いでる。


「どおう?エクシルぅ。私のプレートの色、すごいでしょう。」


なんだか自慢げだ。

色々僕に話してくれたことを思い返して、心から凄いと思った。


「凄い!リタさんも、おめでとう。」


リタさんの頑張りを思うと自然に笑顔になった。

自分のことのように嬉しいな。


「あ、な、何よ。からかい甲斐がないわね。」


顔をプレートで隠してあっち向いちゃった。


「エクシル君、良かった。生きていたんだね。」


村長だ。

僕にパンと地図とお金をくれた。


「村長、あの時はありがとう。リュック、まだ持ってるよ。」


あ、泣き出しちゃった。

ロビンとセシリアの父さん母さんもいる。

自分の子どもが凄いと嬉しいんだろうな。


「にーにー。」


「ステラ、元気にしてたか?」


「うん。でもにーにーいなくちゃや。」


ステラが足に抱き着いてきた。


「感動の再会の途中ですが、私はちょっと行くところがありますので。」


パドレさんが食事処、研ぎ屋、宿、道具屋と村民に声をかけて回ってる。

またパドレさんが僕たちのところに、村の人たちを連れて戻ってきた。


「この村には長がいないのですね。それでいて統率がとれている。珍しい村ですね。」


研ぎ屋のおじさんが頭をかきながら話し始めた。


「そうなんだがな、時々ここをお偉いさんが通りがかるとき、面倒なんだよな。そこの新顔はここに住むのかい?」


「ええ、できれば私からもお願いしたく思います。デポプの出身者で、エクシルのお父様と妹さん、ロビンのご両親、セシリアのご両親、村長、です。デポプは先日スタンピードが発生し、壊滅してしまいました。行くところがない者たちです。いかがでしょうか。」


村の人たちがざわざわしてる。

研ぎ屋のおじさんが話をするみたいだ。


「まず、ここを通り過ぎる村だから村民ってのが少ない。小さな村であること、冒険者というやつらを相手に商売することが嫌でなければ、歓迎する。特に村長、いや元村長か。あんたにはここを通りがかるお偉いさんたちの世話ってのをしてもらいたいんだが。どうだ?」


「ええ。何なりと。私でよろしければ。」


「じゃあ決まりだ。あとで家づくりだ。この村の村長やってもらうんだからな。」


「え?ちょっとそれは、いきなり。」


村長は村長のままなんだ。


「頼んだぜ。それとロビンとセシリアのご両親。あんたらはここに不満が無いようなら、歓迎する。若い夫婦はあまりこの村には来ないからな。それに、ロビンやセシリアが帰ってくる場所がここだと言うならさらにな。」


「「はい、お願いします!」」


ロビンたちも安心できるといいな。

ここの人たちと早く仲良くなれると、いいな。


「さて、問題はあんただ。エクシルの父親、だったな。妹は無条件で歓迎するが、あんたはダメだ。あんた、エクシルに何をした?何をしてやった?俺らはな、エクシルが無属性だからと言ってどうのするつもりはない。この村の子だと思っている。その子を無下にするようなやつはこの村には置いておけねえ。」


「でも、おじさん。」


研ぎ屋のおじさんが僕に手を突き出して、大きく手を開いた。

ちょっと待てってこと?


「だが俺らもそこまで鬼畜じゃねぇ。俺たちに認められたきゃ、警備の仕事をやってくれよ。この村を守ってくれ。自分の力で、その手で信頼を勝ち取ってみろ。それができなきゃこの村にあんたを住まわすつもりはない。」


「・・・いかがですか?お父様。」


「どうぞ、よろしくお願いします。」


父さんがすごい頭を下げてお辞儀をしてる。

僕からもお願いしなきゃ。

父さんの隣に立って、同じようなお辞儀をした。

何かざわざわ人の声が聞こえる。

泣いてる人もいるみたい。

もう、頭を上げてもいいかな。

ゆっくり頭を上げると、研ぎ屋のおじさんが何度も頷いてた。

父さんも頭を上げた。


「あんた、エクシルに助けられたと思って精進してくれ。」


「はい!」


またお辞儀した。

父さんの返事も元気が出てきたみたいで大きかった。

警備のおじさんが父さんの前に来た。


「鍛錬を私とやってもらう。エクシルはこの年で私が教えたことを全て習得してしまった。あとは体力づくりだけだ。あんたは、どこまでできるかな。」


父さん、この警備のおじさんが凄い強いけど、そんな細い体で大丈夫かな。


「父さん、無理しないでね。」


「はは、大丈夫だ。心配するな。この村なら大丈夫。さあおいで、エクシル、ステラ。父さんはここでお前たちにかっこいいとこ見せなきゃいけない。応援していておくれ。」


「うん!」


「おとーちゃがんがえ。」


「さて、これで一件落着ですね。安心して燃える谷へのと向かえます。出発は、明日にでもしましょうかね。」


「新しい住人の歓迎を食事処でやろうと思ってんだ。こういうめでたい日は大勢の方がいいだろう?」


「ではお言葉に甘えましょうか。」


家族と再会して、生きてて良かった。

新しい村で新しく始めよう。

でも、父さんは強くなるまでなんて待ってられない。

僕は、冒険者だ。

早く幼馴染に追い付かなきゃ。

師匠と同じように、世界を見て回るんだ。

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