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光と色の世界N  作者: 八八十
家族と決別とスタンピード
22/50

22

村長の家から出た一行はロビンの家に向かう。

村長は努めて明るい顔をして、英雄の生家を案内するようにパレントたちを連れて歩く。


「ごめんください。」


ロビンの家のドアをノックしてドアが開くと、雪崩れ込むように家の中に入っていく。

中には、今にも泣きそうな男の子と、宥める両親の姿があった。


「パドレさん、パレントさん!」


「全て話は聞いています。私に任せて、両親と一緒にいてください。いいですか?私たち、村長を含めて、私たちは味方です。忘れないでください。いいですね?」


「うぐ、はい!」


ロビンは涙を拭って両親から聞いたことを話し始めた。


「俺らがいない間、殺されかけたって聞いた時、俺どうしたら良いかわかんなくて。とーちゃんたち村長に相談したって。そしたら村長が鑑定人と話してくれて、でも解決できなくて。村長も一気に立場が悪くなった時に俺らがこの村に着いてホッとしたって言われて。何でこんなことになってんだよ!とーちゃんたちが死ねば俺はこの村に縛り付けられるって何のことだよ。」


少年の目から大粒の涙が溢れて止まらない。


「両親を殺し、不慮の事故と見せかけ、デポプに必ず帰ってくるよう、悲劇の英雄にロビンとセシリアを仕立て上げ、また村の再興をはかる、無属性がいなければこの村は完璧でいられる、と言ったところでしょうか。浅はかな考えです。実行するところ、この村の連中には愛想が尽きますね。」


パドレは少年の頭を撫で、落ち着くまで待った。


「次はセシリアですね。セシリアの家に女の子はいますか?」


「あ、はい。今日はあちらの家に行っています。」


「わかりました。お二方、ロビンを信じてください。ロビン、魔法を。テレパシーを。」


「あ、はい!光の黄、テレパシー!」


『よくできました。この状況でも自分を失わずにいられるのは君の強みです。何かありましたらテレパシーで呼びなさい。こちらも状況は伝えますので。』


あくまで自然に、平然と、ロビンとその家族は振る舞うようにして、家を出て行く4人を見送った。

セシリアの家へと向かう。

ここで焦っては元も子もなく、だがしかしセシリアの精神が侵されていない事を祈り、家の前でドアをノックする。


「どうぞ。」


男の声が中から聞こえるが、出迎えるつもりはないようにドアが少し開いただけでそこから大きく開くことはなかった。

村長がドアを開ける。

泣きじゃくる女の子と何が起きているのかわからない様子のさらに小さな女の子、人間不信を絵に描いたように怯える大人が2人、そこにいた。


「うっ、うぐっ!」


「しっ、セシリア、それからそこの2人も。全部知ってるわ。この子の保護が優先と思ったけど、全員必要ね。私はここに残るから、あなたたちでエクシルの父親のところに行ってちょうだい。」


「任せるよ。」


パレントは額に人差し指を当てた。

連絡はテレパシーで、というように。


「このままあの家に行っても大丈夫でしょうか。」


「そこを最後にしたのは、村長がお考えのことを避けることはできないと思ったからです。ここからが本番ですよ。」


「は、はい!」


しっかりしなければ!と聞こえてきそうなほど村長の顔に気合いが入る。

最後の家、追放された子どもの親の家に向かう。


「どこに向かっているのですか?村長。」


「ああ、こちらの方々がこの村の者全員とお会いしたいとおっしゃられるので、案内してるんだ。」


「そうかい。先生方、ゆっくりしていってくれよ。」


うまいことやるものだ、そしてチョロい、パレントの心が感心して毒づく。

最後の家のドアを叩く。


「おーい、ここを開けてくれ。」


返事がない。

ドアを触ると、鍵がかかっていなかった。

そっとドアを開け中に入ると、外からわからないように鍵が壊されていた。

焦らず家の中に入り、狭い家の各部屋に、目当ての人を探して回る。

ベッドのある部屋で、椅子に座り何かを呟き続ける男がいた。


「もうずっと、彼はこんな感じです。」


村長は壊れた男を憐れむように、背中を撫でる。


「おいお前、息子のエクシルのどんな苦境に立たされても自分を見失わずに必死で生きているぞ。お前は、どうなんだ。」


パレントが男に詰め寄るように男の胸ぐらを掴む。


「エクシル、エクシル、エクシル?・・・エクシル!」


男がパレントに縋り付く。


「息子は無事ですか!?あの日、俺は何も声をかけられず、村八分を恐れて目を背けた。息子は、息子は!」


「父親がそんなに弱くてどうする。息子と、娘を連れて一緒に村を出れば良かった。泣きたいのは息子の方だ。」


男は自分を取り戻すように、涙を流し、謝罪の言葉を連呼した。


『聞こえますか?もうこの村には用がありません。すぐに出たいので村の入り口に集まれますか?』


『行けるわよ。』


『パドレさん、俺らも大丈夫だ。』


『ロビンは頼もしいですね。任せましたよ。』


パドレは男たちに声をかける。


「行きますよ。息子さんの待つ村に。」


「ああ、だが、ここには妻が眠って。」


「死人は帰ってきません。生きている者に目を向けなさい。全くだらしがない。やはりエクシル君は別格です。あなたに全く似ていない。こんなあなたのことを父と呼ぶ彼が、惨めで可哀想で心が締め付けられます。それでも、私は彼のためにあなたを連れ出します。私は彼と約束しました、彼との約束は果たします、あなたの事情など、この際関係ない。」


パドレが無理矢理にでも男を部屋から連れ出そうとする。

抵抗をしているわけではないが、これから村と対峙し、数少ないこの冒険者たちに命を預けると思うと、男は足がすくんで動けない。

だが、迷宮で足がすくんで動けなくなったものを救出してきたパドレにとって、男を動かすことなど造作もないことだった。

男を家から連れ出して、村の出口にそのまま向かおうとする。

ロビンたちとリタたちも途中で合流し、大所帯となった一行はあからさまに村の中で目立つ。

案の定、村の鑑定人が一行を呼び止めた。


「そんな大勢で何処へ行くのです?村長。」


「私たちはこの村を出る。お前はやりすぎだ。この村はお前のものではない。だが、勇気が私にはなかった。排斥しようとしているなら、私の方から出ていくよ。未練はない。」


「はは、出ていく?そんなことは許されないだろう。村長なのだぞ?村はどうするのだ。」


「私がどうこう言って、私の意見を聞き入れる村ではないだろう。そちらが好き勝手するなら私も好きにさせてもらう。」


鑑定人が不敵に笑い、村人たちが鑑定人のそばに集まってくる。


「集まってくれたならちょうど良い。ここらで一網打尽にしてくれる。手練れの冒険者であろうが、その丸腰の奴らを庇って、どこまでできるか。見物させてもらおうか。」


村人が各々の武器を構え、冒険者たちに狙いを定めた。


「無属性はもちろん、無属性を庇う者、家族、友人、全ての者は死んでも誰も咎められない。そうだろう?君たち。」


「あんたの歪んだ思想には反吐が出るよ。悪いが私たちはこんなところでこんな奴らに遅れを取るなどありえない。存分に暴れて、させて、なんだ?」


ゴゴゴゴゴゴゴ・・・


不意に地鳴りが響く。

パレントは、音が村の近くにあるゲートから出ていると気がつく。

突然ゲートから無数の魔獣が飛び出してきた。


「これは!」


「スタンピードです!ロビン!皆にテレパシーを!早く!」


魔獣の大群が村を襲う。

あまりにも突然すぎる出来事に冒険者たちと対峙していた村人と鑑定人は、身動き一つできずにいる間に大群に飲まれてしまった。

牙で突かれ、角で突かれ、爪で裂かれ、目の前で人が四肢を引き裂かれ見るも無惨な形で飛ばされ散らされる。


『迎え撃ちますよ。ご両親と村長は私とパレントの後ろから離れないでください!』


パドレとパレントを魔獣たちが襲う。初級と評された迷宮にいるはずのない、上級の魔獣が溢れる。

少年と少女が戦った、クルーエルホルンの姿もあった。


『この迷宮にあいつがいるなんて聞いたことないぞ!』


ロビンが必死に矢を放つ。

当たれば良い、当たって魔獣の足が止まれば、大群に飲まれそいつはただじゃ済まされない、そう考えたロビンは出鱈目に矢を放つ。

セシリアもロビンと同じように考え、魔力が絶えるまで魔法を使い続けた。

ゆっくりとゲートの大きさを歪めながらくぐる大きなものを、パレントが見た。


『あれは!パドレ、とりあえずあれだけでも止めないとまずいぞ!』


『あれ、とはあの大きな。』


『聞いたことがあるだろう。私も以前、クレスやジェーンなどと組んで迷宮攻略をしていた時に出会った魔獣、ブレイズノーズだ。』


『あれが!!ブレイズノーズですって?!特級の魔獣ではないですか!出てきたのは、1体だけのようですね。』


パレントが迫り来る魔獣を薙ぎ倒し、切り刻みながらも目の前に出てくる大きな魔獣に戦慄する。

ブレイズノーズ、見た目は象と似ており、2本の牙を口の端から生やしており、牙は前にカーブを描き、鋭く尖っている。

長い鼻から耳、背中、お尻と硬い大きなウロコのような皮膚に覆われ、ミスリル以外の武器では弾かれてしまう。

足は短く太いが、その外見からは想像できないほど、身軽で速い。

短く見える足もその体の対比から見えるだけで、足の長さは大人の男の身長と同じくらいである。

長い鼻で薙ぎ払い、近づけばその足で踏みつけにされる。

遠間であっても鼻から吹く炎で焼き尽くす。

攻守に優れた魔獣として恐れられている。


『リタ!君が防衛の要だ!親たちを守れ!ロビンとセシリア!君らはリタの援護だ!迫る大群を蹴散らせ!私とパドレであの象を叩く。それまで、持ち堪えろよ!』


パレントの珍しく真剣な表情が、周りのものたちを不安にさせる。

澄まし顔のパドレですら、額から汗を流すほどの焦りと恐怖を感じている。


『腹を括れ!生きるために!』


魔力の出し惜しみはなしだ!


矢ももうすぐ尽きそうな頃、ロビンは何も持っていない手で弦を張り、あたかも矢を放つように弦を弾いた。


「光の黄。マジックショット=バーン。マジックショット=ライトニング。」


飛んでいく2つの魔法の矢。

バーンに当たった魔獣はその身に一気に炎が燃え広がり、ライトニングに当たった魔獣は感電して電気を帯びている。


感電、そうだ!


セシリアは水魔法を唱えた。


「光の青。フルード!」


セシリアの前に発生する大量の水が魔獣たちの足を止めさせ、押し流す。


「光の黄、マジックショット=ライトニング!ライトニング!ライトニング!」


ロビンは出鱈目にいかづちの矢を放つ。

水にぬれた魔獣たちに矢が当たるとたちまちに伝搬し、大群の行進を一時的に止めた。


『やるな、君の弟子は。』


『ええ。』


魔獣の背をけりブレイズノーズと相まみえる手前まで来ていたパレントは、背中を預けた子どもたちの健闘ぶりに感嘆の声を漏らす。

だが、パドレは真の功績者はリタであると思っていた。

リタは、スタンピードに襲われてからずっと、結界を張り魔獣の侵入を防ぎ、セシリアの水の侵入も防ぎ、結界の内側にいる仲間の攻撃を遮らないよう、魔力を多量に消費することをいとわず、絶えず結界の調節を行っていた。

これほどまでの実力を16歳という若さで手に入れたことに、どれだけ過酷で劣悪な環境下に晒されてきたか、想像もできない。


『やはり、ブレイズノーズが最後のようだ。群れが途切れたよ。』


魔獣の群れに遅れて、ブレイズノーズの体がゲートから完全に現れた。


『一気に叩きましょう。』


パドレが身体強化の魔法を一気に二人にかけた。

ブレイズノーズの足、腹のウロコの鎧が無い場所を叩く。

一発一発が重く、遠く離れたリタたちにも、パドレの叩く音が届くほどだった。


「色の黒、ハールロック!」


パレントの唱えた岩石がブレイズノーズの顔、目に飛び掛かる。

パレント自身はパドレと同様、足を重点に切り刻んでいく。


迫る最後の大群が、後ろから迫る魔獣たちに踏みつけにされ肉塊と化した魔獣たちの山を避けるように荷方向に分かれた。

ちょうど、リタたちのいる場所を合流地点とするように、群れが集まってくる。


群れが途切れたって言ってたな!


「サジタリウス!」


光が空に舞いあがる。


「セシリア、もう一回さっきの水!直前まで引き付けて、やってくれ!」


「わかった!直前まで、引き付ける・・・。」


セシリアは静かに、魔獣の足音を聞いた。

徐々に大きくなる足音を、目から入る情報よりも信じ、待った。

音が最高潮になる瞬間は。


「今!光の青!フルード!」


水の塊が魔獣を押し流し、肉塊の前に集まった。


「光の黄、マジックショット=ライトニング!ライトニング!ライトニング!」


ロビンは、自然回復で補ったありったけの魔力を水にぶつける。

魔獣たちは感電し、動かなくなった。

空から光の柱が落ちてくる。

感電した群れ、肉塊を貫き、弾き、魔獣の体をバラバラにしていく。

サジタリウスの地面を穿つ轟音とともに、ブレイズノーズが足を地面についた。

パレントとパドレ両名から与えられたダメージが蓄積し、その巨体を地面に転がすことに成功した。

弱点は顔。

パレントとパドレが顔に飛び掛かろうとしたそのとき、ブレイズノーズは自分の顔に炎を放つ。

ブレイズノーズはウロコの鎧で体を焼かれることが無い。

2人はブレイズノーズの攻撃をまともに食らってしまった、かのように思われた。

2人とも傷ひとつ無い。

なぜ自分の体が守られたのかは2人ともわからない、だがこの機を逃してはならない。

ブレイズノーズの両目にパドレの拳が突き刺さり、額にパレントの刃の長い剣が突き刺さる。

ブレイズノーズの頭の骨を貫いた剣は脳に達し、痙攣をおこして、やがてその痙攣も収まった。


『前回は倒し方がわからなくて苦労したけど、わかっていると案外簡単にやれるものだね。』


『ええ、しかし私たちが無傷でいられるのは、やはりあなたでしたか。リタ。』


『少しは感謝しなさいよね。こっちの結界を一時的に解除してそっちにしたんだから。もう魔力が無いわ。はー、疲れた。』


リタは帽子を手で押さえ、天を仰ぐ。

匿われた者たちは、風で淡い茶色の髪を靡かせて憂いのような顔をにじませるリタの姿が、とても神秘的で女神のような神々しさを見ていた。


「噂など、取るに足らないものですね。私はリタに対する考えを改めたいと思います。」


「私も、そうするよ。」


冒険者たちはスタンピードを誰も欠けることなくしのぎ切ったのだった。

ロビン

種族:人間

武器:弓、ナイフ

属性:(LIGHTS)

才能:射撃(SHOOT)

絶技:サジタリウス

従属:セイヒョウ(不在)

魔法

・スピードアップ ・テレパシー ・マーキング ・マジックショット(=バーン =ライトニング)


セシリア

種族:人間

武器:杖

属性:(LIGHTS)

才能:叡智(WISDOM)

絶技:白い風?

魔法

・リカバー ・アクアアーマー ・アイシクル ・ウォータースラッシュ ・フルード


リタ

種族:人間

武器:杖

属性:?

才能:?

絶技:?

魔法

・リカバー ・ハイ=リカバー ・生命力残し ・結界


パレント

種族:エルフ

武器:剣 (ナイフ)

属性:(COLORS)

才能:?

絶技:?

魔法

魔法全般で攻撃魔法が得意 ・リカバー ・ハールロック


パドレ

種族:エルフ

武器:己の体

属性:(LIGHTS)

才能:?

絶技:?

魔法

身体強化全般で効果が絶大

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