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最弱の不死者<イモータル>  作者: ネツアッハ=ソフ
不死身の男
7/52

不死者の苦悩

テラの苦悩は重い。伊達に永くは生きていません。

 「テラ、起きましたか?」


 テラが目を覚ますと、目の前にはマナが居た。


 どうやらずっと膝枕されていたらしい。日はもう沈みかけている。


 少しずつ思い出してくる。テラは負けたのだ。


 「少し、一人にしてくれないか?」


 「でも・・・」


 「頼む、一人にしてくれ」


 テラの声はとても弱々しい。


 マナは躊躇いつつも、結局その場を後にした。


 その場に一人、練兵場に残るテラ。


 力なく地面に横たわっている。


 「分っているさ・・・、僕は弱い」


 テラの声が風に流される。


 テラの瞳が闇より暗い色を宿す。


 「死にたい気分だ・・・」


 テラの心が軋む。


 「何で、僕は生きているんだろう」


 また心が軋む。


 痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。


 心が痛い。


 暗くなり始めた練兵場でテラは呟く。


 「死にたい」






 その後、テラが部屋に戻ると、其処にはマナが待っていた。


 「あー、何で此処に居る?」


 「テラとお話がしたくて・・・」


 「話?」


 テラはきょとんっと首を傾げる。


 そんなテラに構わず、マナは話し始める。


 「テラの思い、苦しみを私に話して欲しい」


 「っ!?」


 テラの表情が僅かに歪む。


 その表情に、マナは悲しい気持ちになる。


 「お母様が言っていた事、貴方の死にたい気持ちと何か関係があるのですか?」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 言えない。言いたくない。


 これ以上マナに甘えたくない。


 マナに依存したくない。


 「私じゃテラの生きる理由になりませんか?」


 「!?」


 「私は構いませんよ。テラなら・・・」


 マナは優しく微笑みながら言った。それだけで。


 それだけでテラは救われる気がした。


 しかし。


 しかし、それでも。


 「ごめん、僕は君に甘えたくない」


 テラはマナを突き放した。


 マナは悲しい顔をする。


 「本当に、ごめん」


 「テラは、私に頼ってくれないんですね・・・」


 そう言って、マナは部屋を出て行った。


 最後に見えたその顔は泣いていた。


 マナは頼って欲しかったのだ。


 もっと甘えてほしかったのだ。


 だけど、テラにはそれが出来ない。


 それをしてしまえば、今までの自分を否定してしまう気がしたからだ。


 「儘ならないな、本当に」


 胸が痛い。抉られたように痛い。


 けど、何故か涙は出てこなかった。


 こんなに悲しいのに。


 こんなに痛いのに。


 こんなに辛いのに。


 こんなに苦しいのに。


 この世界に来てから、心が揺さぶられる事が多くなった。ここまで心が痛むのは何千年以来か。


 「寝よう、今日はもう」


 笑えない。


 今日はもう笑える気がしない。


 もう何も考えたくない。






 次の日。


 「ドラコさん、今日も良いですかね?」


 テラはへらへらと笑いながら腰の剣をぽんっと叩く。


 その笑みを見て一つ嘆息した後、ドラコは苦笑した。


 「ああ。構わねえぞ」


 そうして、テラとドラコは再び剣を交えるのだった。


 練兵場の中央にテラとドラコの二人は向き合っていた。他の騎士達は二人の決闘の観戦をしたいらしく、訓練を中断して練兵場の隅に寄って此方を見ている。


 剣を構え、向き合う二人。先に動いたのはテラだった。


 「ふっ!!」


 一気に距離を詰め、大上段に切り掛かる。


 しかし、ドラコはそれを最小の動きでかわすと、剣の柄でテラの腹部を叩く。


 「ぐっ!?」


 腹部に強い衝撃を受け、一瞬息が詰まる。


 その隙を突き、テラの背に回し蹴りを叩き付ける。


 それだけで、テラは数メートル吹っ飛んだ。


 「それで終わりか?」


 「まっ、まだまだ・・・」


 テラは剣を杖にヨロヨロと立ち上がり、ドラコに再び切り掛かった。


 だが、その一撃は軽く受け流され、体勢が崩れた所を一閃。


 「があっ!?」


 今使用している剣は訓練用に刃を潰している為、切れる事はない。


 しかし、叩き付けたダメージはあるので、テラはそのまま崩れ落ちる。


 圧倒的実力差。


 最初から相手にすらなっていない。ドラコはテラを冷たく見下ろす。それが、悔しい。


 「まだ、まだ・・・・・・・・・」


 それでも尚、立ち上がり向かっていく。


 ・・・・・・・・・


 一方、マナは暗く沈んだ顔で王城の中を歩いていた。


 昨日、テラに突き放された事がかなりショックだったのだ。


 「私、そんなに頼りないのかなあ・・・・・・・・・」


 マナは只、テラを救いたかっただけなのだ。


 苦しんでいる彼をほっとけなかっただけなのだ。


 しかし、その想いの裏には純粋な好意と愛情が入っている事を彼女はまだ知らない。


 その時―――


 「おい、流石にこれ以上はヤベエよ!!」


 「二人とも、もう止めろ!!」


 練兵場からざわざわと騒ぎ声が聞こえてきた。


 何事かと思い覗いてみると、其処には驚くべき光景があったのだ。


 ぼこぼこに叩きのめされながらも立ち向かうテラと、叩きのめすドラコの姿があった。


 「テラ!?」


 マナは驚き悲鳴を上げ、テラに駆け寄る。


 しかし、それをテラは片手で制し、まだ立ち向かおうとする。


 「ま・・・だ、まだ・・・・・・・・・」


 「もう止めて!其処までして戦う必要なんてないじゃないの!!」


 マナはテラに抱き付き、必死に止める。


 それをじっと見詰め、ドラコはテラに問い掛ける。


 「何故、其処までして強さを求める?お前は強さの先に何を求める?」


 「そん、なの・・・知らないっ・・・。僕、が強ければ・・・せめて、誰、にも迷惑を掛けずに、いられた筈・・・なのに・・・・・・・・・」


 息も絶え絶えにそう言うテラ。


 身体の傷は再生する。


 彼ほどの不死性なら、すぐに身体に残ったダメージも消え去るだろう。


 しかし、ダメージを受けた記憶はすぐには消えない。


 その記憶が疲労として蓄積するのだ。


 今、テラの身体、精神にはかなりの疲労が蓄積している。


 かなり危険な状態だろう。そんなテラにドラコが何か言おうとしたその時―――


 「それは違うよ!!」


 「・・・マナ?」


 涙目のマナがテラを睨みながら言った。


 「誰にも迷惑を掛けずに生きていられる人なんて居る筈がない!!それに、テラはもっと人を頼って良い筈だよ!?」


 「・・・マナ」


 必死に縋り付くマナに、テラは悲しげな顔をする。


 果たして自分に人を頼る事が出来るだろうか。


 今まで人を頼れず、ずっと孤独だった自分に・・・。


 「本当の強さとは、テラの言う様な事ではなく、他人を頼る事が出来、他人からも頼られる人の事を言うと思うけどな」


 それだけ言ってドラコは去って行った。


 他の騎士達もその場を去っていく。


 残されたのはテラとマナの二人。


 「テラ・・・」


 マナはテラの顔を覗き込む。


 その瞳は少し濡れていた。


 誰も居ない練兵場で、見詰めあう二人。


 テラは意を決した様に口を開く。


 「もしも、もしもマナが良ければ、君を生きる目的にしてもいいかな?」


 「っ!?」


 マナの息を呑む音が聞こえた。


 静かに返答を待つテラ。


 数秒間の沈黙の後、マナは言った。


 「はい、よろしくお願いします」

注意。まだ、主人公は救われていません。

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