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最弱の不死者<イモータル>  作者: ネツアッハ=ソフ
不死身の男
6/52

ドラコ=ラース

騎士長の登場。

 暗闇の中、マナは立っていた。


 「此処は、何所?」


 言葉を発してみても何故此処に居るのか、そもそも此処は何処なのか分からない。


 次第に心細くなってくる。


 その時―――


 「マナ」


 自分を呼ぶ声に振り返ると、其処にはテラが微笑みながら立っていた。


 マナは思わず嬉しくなってきた。


 「テラ!」


 マナがテラに駆け寄ろうとした、その時―――


 突然、テラが抱き付いてきた。


 「え?テ、テラ!?」


 突然の事に困惑するマナ。


 思わず振り解こうとするが、逆に強く抱き締めて来る。


 マナは顔を真っ赤にする。


 「マナ、好きだ。その身体も、精神も、魂も、君の全てが好きだ。愛してる」


 テラは強く、けど優しく抱き締めながら愛の言葉を囁く。


 その言葉は何処までも真っ直ぐで、心の中にまで染み込んできた。


 マナは更に顔を赤くする。


 そんなマナの顔にテラの顔が近付いてくる。


 唇と唇が触れる、その直前―――






 目が覚めた。


 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 数秒間思考停止した後、ボフッと顔を上気させる。テラからの愛の言葉、強く優しい抱擁。


 そして―――


 例え、夢だとしてもこれは恥ずかしい。


 マナはその後、小一時間ほど、悶える事になる。


 午前七時頃―――


 「ううっ・・・」


 マナは真っ赤な顔で呻きながら、王城の廊下を歩いていた。未だに夢の中の事が頭の中をぐるぐると廻っているのだ。


 擦れ違う人達は何だか不思議そうな顔をしている。


 だが、何時までもこんな調子ではいられない。


 今からそのテラを起こしに向かうのだ。


 マナは頭を振って夢を忘れようとする。


 そうこうしている内に、テラの部屋の前に着いた。


 ―君の全てが好きだ。愛してる。―


 「・・・・・・・・・」


 またもや顔を真っ赤に染める。


 これではいけない。


 何とか気を取り直してドアをノックする。


 「テラ、起きてますか?」


 何の反応も無い。


 もう一度ノックする。


 「テラ?」


 やはり、何の反応も無い。


 不審に思い、ドアを少し開けて中を覗いてみる。


 中は王城の中では割とシンプルなデザインの部屋であった。


 その中にある木製の簡易なベッドにテラは寝ていた。


 マナはほっとしてテラに近づく。其処で異変に気付いた。


 「ううっ・・・、やめて、僕を殺さないで、そんな目で見ないでっ・・・」


 「テラ!?」


 異常なまでにうなされるテラに、マナは慌ててテラを起こそうとする。


 その時、テラの目がばちっと開き、飛び起きる。


 荒い息を整えると、その目がマナの方を向く。


 「マナ?」


 「テラ、大丈夫?」


 マナがテラの顔を心配そうに覗き込む。


 事情を察したテラは心配をかけまいと笑う。


 「はっはっはっ、恥ずかしい所を見られてしまったね」


 しかし、その笑みも笑い声にも力は無く、とても弱々しかった。


 その笑みに、マナの心はズキリと痛む。悲しい気持ちで胸が張り裂けそうになる。


 気付いたらテラを抱き締めていた。


 「えっと、あの、マナ?」


 「無理しなくていいんですよ?辛い事があるのなら、何時でも相談に乗ります」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 テラの腕がマナの身体に回される。少しの間、テラとマナは互いに抱き締めあう。






 現在、テラは練兵場に居た。


 結局テラはマナに何も打ち明ける事なく、そのまま朝食を済ませ、練兵場の隅で只管剣を振っているのだった。


 そんなテラをマナは悲しげな顔で見ている。


 「・・・・・・・・・」


 剣を振りながら、テラは考えていた。


 マナになら自分の全てを打ち明けても良いのではないか。


 マナならこんな自分を受け入れてくれるのではないか。


 マナなら―――


 (っ!いや、駄目だ。これは僕が背負っていくべき業だ。今更人に背負わせることは出来ない)


 頭を振って雑念を払う。


 -だが、マナなら喜んで受け入れてくれるだろう?――


 (っ!?)


 唐突に頭を過った言葉にテラは顔を顰める。


 確かにマナならテラの過去を知っても受け入れてくれるだろう。


 聖女の如き優しさを持つマナなら、こんな自分でも喜んで抱き締めてくれるだろう。


 しかし、それとこれとは話が違う。


 受け入れてくれるからと言って、何でも頼って良い訳ではない。


 何より、テラは甘えたくないのだ。


 マナに依存したくない。


 しかし―――


 「随分としけた顔で剣を振っているじゃねえか」


 突然聞こえてきた声にテラは其方を向く。其処には燃える様な真紅の長髪と瞳の騎士が居た。


 騎士長ドラコ=ラースである。


 普段は快活な笑みの似合う温和な騎士なのだが、一度怒ると誰も手が付けられなくなる暴れん坊と化す。


 その事から付いた二つ名が憤怒の龍である。


 実際、激怒した時の彼の戦闘力は龍に匹敵するらしい。


 「何か用ですか?ドラコさん」


 「少しだけ、ヤリあわねえか?」


 ドラコは剣の柄を少しだけ握り、笑みを向ける。


 如何やら訓練と言う名目で、テラと剣を交えようという魂胆らしい。


 「別に構いませんけど・・・」


 「決まりだな。じゃあ早速やろうぜ」


 ドラコはそう言ってにかっと笑った。


 マナの方を見ると、おろおろとしていた。


 正午、十二時頃―――


 其処には地に伏したテラと無傷で余裕そうな表情のドラコが居た。


 「テラ!?」


 マナがテラに駆け寄ってくる。


 テラは傷こそ無いものの、そのダメージはかなりの物だ。


 「その再生能力は流石だな。剣筋も悪くはない。そこらのチンピラよりは強いのだろう。だが、それだけだ。鍛え上げた兵士には勝てん」


 「そん、な事・・・、分かって、いる・・・」


 息も絶え絶えに、それでもテラは言った。


 自分は弱い。どうしようもなく弱い。それ故に幾度となく危機に陥った。


 それでも生き残れたのは、単に不死性と死ぬ気で手に入れた三つの特技があったからだ。


 それでも、テラは弱いままだ。


 そんな事はとっくの昔に理解している。


 「理解だけでは現実には敵わない」


 ドラコは残酷な現実をテラに叩きつける。


 現実は非情だ。決して思い通りになんかなりはしない。


 分かっている事だ。けど、分かっているだけではやはり意味がない。


 絶望の中、テラの意識は暗転した。

現実は残酷だ・・・。

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