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最弱の不死者<イモータル>  作者: ネツアッハ=ソフ
不死身の男
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チルドレン

今回は王都と子供達の話です。

 化け物―――


 僕は化け物。


 思い出される記憶。化け物と罵られ、石を投げ付けられ、退治と称して命を狙われる毎日。


 切られた。射られた。刺された。殴られた。撃たれた。焼かれた。毒を盛られた。


 様々な方法で殺され続け、その度に心は擦り減っていった。


 痛い。苦しい。辛い。悲しい。


 何で僕がこんな目に?


 嫌だ。やめて。


 そんな嗤いながら僕を殺さないでっ。そんな憎しみの籠った目で睨まないで。


 ダレカ、ボクヲタスケテ!!?


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 其処で目を覚ました。


 頬をつうっと流れる雫に気付く。


 慌ててその雫を手で拭い、へらへらと笑う。


 「ずいぶんとまあ、懐かしい夢を見たもんだね。はっはっはっ」


 今日もテラは仮面を被り、へらへらと笑い続けるのだった。






 玉座の間―――


 朝食を食べ終えてすぐにテラは王の許に呼び出された。


 玉座の間に入ると、其処にはスカーレット王と王妃マリア、そしてマナとアルフレッドに数名の騎士達が居た。


 「何か僕に御用事でも?」


 へらへらと笑いながら王に問い掛けるテラ。その余りにも軽率な態度に、側近の騎士達は剣の柄に手を置いた。


 それを片手で制し、スカーレットは言った。


 「どうやら調子は戻ったらしいな。用件は他でもない、テラのこれからの事だ」


 「これからの事?」


 テラはきょとんっと首を傾げる。


 そのわざとらしい反応にスカーレットは嘆息する。


 「テラよ、この城で働くつもりはないか?」


 「はい?」


 思わず問い返す。流石にこれは予想外だったのだろう。


 素できょとんっとしていた。


 「テラをマナの騎士に任命したい。それとも不服かね?」


 「いえ、働く場所が出来るのは嬉しいんですが、僕、正直言って弱いですよ?」


 そう、テラはお世辞にも強いとは言えなかった。熊に勝てたのは不死性のお陰だし、盗賊に勝てたのは半ば不意打ちのお陰だ。


 只のチンピラよりは強いだろうが、鍛え上げた兵士や騎士には勝てないだろう。


 まあ、もっと不死性を前面に出し、戦い方を考慮すれば勝てる可能性も無くはないが・・・。


 「其処は問題無い。広い練兵場がある上、騎士長のドラコに訓練を付けさせる」


 「しかし、それなら他の騎士に任せた方が早くないですか?」


 「テラが良いとマナ本人が言うておるのだよ」


 マナの方をちらりと見ると、露骨に目を逸らされた。心なしか少し頬が赤い。


 テラはややげんなりとする。


 「頼まれてはくれんか?」


 「・・・・・・・・・分かりました、引き受けましょう」


 不承不承ながらもそれを引き受ける。






 王都カイル―――


 王城を中心に円形に広がる都市で、東西南北に西洋風の街並みが広がっている。


 東は工業区。西は一般住宅区。南は商業区。北は高級住宅区である。


 現在、テラとマナの二人は西区中央通りを歩いていた。


 街には落ち着いた雰囲気が漂っており、ときどき子供達の遊ぶ姿や世間話をする大人の姿が見えるくらいだ。


 「落ち着いた良い町だね」


 「でしょう。私もこの町が大好きなんです。」


 マナはとても良い笑顔でそう言った。


 テラはゆっくりと町を見渡す。


 とても良い町だと思った。マナがこの町を大好きだと言った気持ちが良く分かるというものだ。


 テラの顔はいつものへらへらとしたものではなく、実に穏やかな微笑みを浮かべていた。


 (ここなら僕も虐げられずに済むのかな)


 ふと、そんな事を考えた。


 つうっ


 頬を伝う雫。


 「テラ?泣いてるの?」


 言われて気付く。その目から涙が溢れていた。


 慌てて涙を拭うが、次から次へと溢れて止まらない。


 マナはどうすれば良いのか分からずに困惑する。


 その時。


 「お兄ちゃん、何でないてるの?」


 声の聞こえた方を向くと、其処には三人の子供が居た。


 男の子二人に女の子一人の計三人だ。


 三人の子供達はテラに不思議そうな目を向けている。


 「ああ、大丈夫だよ。ちょっと感傷に浸っていただけだから」


 そう言うと、テラは涙を拭い、へらへらといつも通りの笑みを浮かべた。


 その後、テラとマナは子供達と一緒に近くの公園に来ていた。


 子供達はそれぞれジャック、メナス、レイラと言う名前らしい。


 鋭い目付きのクールな男の子がジャック。


 黒髪眼鏡の理知的な男の子がメナス。


 褐色肌の活発な女の子がレイラだ。


 この子供達は普段、情報収集をして暮らしているらしい。


 子供だからこそ入り込める場所から色んな情報を集め、それを売る事で生計を立てているらしい。


 (なんだか、ベイカー街遊撃隊みたいな子供達だな)


 ベイカー街遊撃隊―――


 かの名作"シャーロックホームズ"に登場する子供達で、ホームズの協力者。


 ホームズや警官ですら潜入出来ない場所に潜り込み、情報を仕入れて来るスペシャリスト。


 ホームズ曰く「スコットランドヤードの警官一ダースより有用」らしい。


 「でも、そんな危険な仕事をしてて大丈夫なの?」


 マナが子供達の身を案じる。しかし、子供達はにっこりと笑い大丈夫と言った。


 「大丈夫、ばれる様なヘマはしないから」


 それにしても、こうして見ず知らずの人物にべらべら喋っている事から見ても、かなり危ういと思うのだが・・・。

 それでも、こうして生きている以上、腕は確かなのだろう。


 なら―――


 「なあ、君達、僕に雇われる気はないかい?」


 「テラ!?」


 マナが驚きの声を上げる。子供達を雇うなど一体何を考えているのだろうか?


 だが、テラはマナに笑みを向けただけで、また子供達に向き直ってしまった。


 「君達が僕に雇われるなら、僕は君達に僕の知る技術の全てを与えよう。もちろん、君達が生きていくのに必要な賃金も用意しよう」


 「・・・・・・・・・お兄ちゃん、一体何ができるの?」


 子供達、特にジャックがテラを値踏みするように見て来る。


 しかし、その視線をテラはへらへらと笑いながら受け流す。


 「これでも僕は見た目よりもずっと永く生きていてね、生きる術は知り尽くしているのさ」


 そう言ってテラは子供達の方を見る。


 つまり、テラはこう言っているのだ。


 ―君達に生きる術を教えてあげよう―


 「お兄ちゃん、本当に生き残る為の技術を教えてくれるの?」


 「うん」


 「お金もちゃんと払ってくれる?」


 「約束しよう」


 そう言うとようやく子供達はにっこりと笑った。




 その後―――


 テラはマナに連れられて人気の無い場所に来ていた。


 「テラ、貴方一体どういうつもり?」


 「どういうつもりとは?」


 「子供達を使ってどうするつもり?」


 そう言ってマナはテラを睨み付ける。


 返答次第じゃ只ではすまさないと言う事だろう。


 テラは少し肩を竦める。


 「別に何も。只、僕は子供達を死なせたくないだけさ」


 「と、言うと?」


 マナはまだ不信な目を向けている。


 テラはふうっと嘆息する。


 「僕達はあの子達の境遇を知らない。けど、ああいう子供達は大抵他の生き方を知らない。なら、僕達はそう言う子供達を上手く導いてやる必要がある」


 マナははっと目を見開いた。


 テラは言っていた。生きる術を教えようと。


 「その為にわざわざあの子達を雇おうと?」


 「その通り」


 テラはそう言ってまたへらへらと笑う。


 そんなテラを見て、マナは思った。


 テラは私が思っている以上に優しくて凄い人なんだと―――


 ちなみに、後々その子供達は宮廷情報局なる物を立ち上げることになる。


 が、それはまた今は関係の無い話である。

主人公はけっこう色々考えています。では、次回は練兵場での話。ではではっ。

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