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最弱の不死者<イモータル>  作者: ネツアッハ=ソフ
不死身の男
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王国アストラル

主人公のトラウマ・・・

 ナナシの森を抜ける少し前の事。


 「そう言えば、マナとアルフレッドって何でこの森の中に居たんだ?」


 「あー、実は俺達、森の中に住み着いた盗賊を討伐しに来たんだよ」


 なんでも、ナナシの森には数ヶ月前から盗賊の集団が住み着いていたらしい。だが、このナナシの森は狩り場にもなっている。


 このままでは狩りが出来ないと苦情が来ていたらしい。


 なら、騎士団を派遣すれば良いという話になってくるのだが、此処でも問題が出てくる様だ。


 魔王が動き出したのだ。


 魔王アザトホート。


 嘗て召喚された召喚者であり、全能に近き者の異名を持つ魔物の王。


 その魔王が動きを見せたのだ。今や、どの国も魔王との戦いに備える事に必死で他に兵を割く余裕は無いらしい。


 しかし、自らの国の民が困っているのを見過ごす事など出来ない。


 それ故に二人は国王である父親に黙って盗賊の討伐にでたらしい。その結果、あっさりと囲まれ、あの様な窮地に陥ったのである。


 と、言うか・・・


 「え?二人ってお姫様と王子様だったの?」


 「「あっ」」




 王国アストラル、王都カイル。


 公平な統治を謳い、自然に囲まれた豊かな国である。


 そんな国で現在、テラは―――


 多数の騎士達に囲まれ、剣や槍を突き付けられていた。・・・何故?


 「貴様っ、殿下や姫様に何をしたっ!?」


 「いや、何もしてないけど」


 「とぼけるなっ!姫様の御怪我は貴様が負わせたものであろう!?」


 「いや、だから何もしてないって・・・」


 暴走する騎士達はテラの言う事を全く聞こうとしない。どころか、マナやアルフレッドが慌てて止めに入っても耳にすら入らず、そのまま玉座、王の許へと連行されて行った。


 そして、テラは王の前に突き出される。


 目の前には王と王妃。


 王の名は、スカーレット=クルツ=アストゥル。


 黄金色の髪に澄んだ青い瞳、筋肉質な身体をしている。


 王妃の名は、マリア=クルツ=アストゥル。


 薄い桜色の髪に金色の瞳、すらりとしたしなやかな身体をしている。


 騎士から話を聞いたスカーレットは、鋭い目付きでテラを見た後、威厳の籠った声で問う。


 「貴様が我が娘、マナに手傷を負わせたと言うのは本当か?」


 「そんな事実はありません。むしろ、僕が二人を盗賊から助けたくらいです」


 「何?盗賊だと?」


 スカーレットは怪訝な顔をする。


 そんな彼等にテラは事情を説明する。


 三十分後、事情を聞き終えたスカーレットは額に青筋を浮かべて騎士に命じる。


 「二人を連れて来い!!」


 その後、連れて来られるマナとアルフレッド。


 きょとんっとする二人にスカーレットは怒号を浴びせた。まさか怒られるとは思っていなかった二人は呆然としつつ小一時間怒られるのであった。






 その日の夜、テラは城の客室に居た。だが、その雰囲気は何処か何時もの彼とは違う。


 その顔には何時ものへらへらとした笑みは無く、瞳は闇より暗い。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 部屋に入ってからずっとテラはこんな様子だった。


 少し時を遡る。


 ようやく王の怒りが治まり、マナとアルフレッドはようやく説教から解放された。


 疲れた顔で溜息を吐く二人をテラは苦笑しながら見ていた。そんな時。


 「テラさん、でしたか?」


 今まで静かに見ていた王妃、マリアが声を掛けてきた。


 「はい?なんでしょう?」


 周囲がざわつく中、テラは何時ものへらへらとした顔で答えた。


 そんな彼をじっと見詰めながらマリアは口を開く。


 「貴方は如何してそんなに笑っていられるのですか?」


 「・・・・・・・・・え?」


 テラは思わずへらへらとした顔を固まらせた。


 流石に意味が分らなかったのだろう。彼女は問い直す。


 「言葉が足りませんでしたか?失礼しました。貴方は如何してそんなに死にたい気持ちを抱えながら笑っていられるのですか?」


 「っ!?」


 テラの顔が驚愕に染まる。


 そして、次第に青褪めて来る。


 それに気付いたマナは不思議そうな顔でテラの顔を覗き込む。


 「テラ?」


 「なっ、何の、事かな?」


 何とか言葉を発する物の、その言葉は震えている。明らかにテラは動揺していた。


 マリアは少し悲しげな顔をしながら言った。


 「私の瞳は心を覗く魔眼なのです。その能力で貴方の過去、心の中を覗きました」


 「っ!?」


 もはやテラの動揺は決定的だった。その顔は恐怖に歪んでおり、身体は小刻みに震えていた。


 周囲の者達はその余りに異常な光景に放心していた。


 只一人、マナだけがテラを庇う様に立った。


 「お母様!私の命の恩人に何をっ!!」


 娘に睨まれ、マリアは思わず苦笑する。


 「別に彼を苛めている訳じゃないのよ。只、彼の在り方が酷く歪だったから問いたくなっただけ」


 そう言って、マリアはふっと優しい笑みを浮かべた。


 「貴方もごめんなさいね。悪気は無かったとはいえ、あんな事を言って」


 「いえ、良いです、別に・・・」


 テラは未だに震える声で言った。


 マナはそんなテラを心配そうに見ている。と、其処でスカーレットが言葉を掛けてきた。


 「取り敢えずテラよ、今日はもう疲れただろう。客室を用意するので、今夜は私の城で泊まって行きなさい」


 その言葉にテラは頷き、ふらふらと玉座の間を後にした。


 そして現在、用意された客室の中でテラはもう何度目かになる溜息を吐いた。


 その時―――


 コンッコンッ


 ドアをノックする音が部屋に響いた。


 慌てて気を引き締め直し、ドアを開ける。其処に居たのはアルフレッドだった。


 「風呂、空いたぞ?今の内に入っとけよ」


 「ああ、分かった。ありがとう」


 そう言って、テラは風呂の場所を聞き、其方へと歩いて行った。


 テラが行った後、アルフレッドはにやりと笑みを浮かべた。






 風呂に着いたテラは脱衣所で服を脱いでいた。


 (貴方は如何してそんなに笑っていられるのですか?)


 頭の中にマリアの言葉が響き、容赦なくテラの心を抉る。


 (今は考えちゃ駄目だ。風呂で疲れを癒そう)


 さっと頭を切り替え、テラは風呂の扉を開けた。


 「えっ?」


 聞こえてきたのは此処には居ない筈のマナの声。


 そして、目の前には此処には居ない筈のマナの姿があった。


 上気した肌。豊かな胸。程良くくびれた腰。


 その扇情的な姿に大抵の人は欲情するだろう。いや、間違いなくするだろう。


 しかし、テラは顔をさあっと青褪めさせ、呟いた。


 「謀られた」


 「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」


 悲鳴と共に頬に強烈な平手をくらう。


 暗転。


 「で、なんで風呂を覗くっていうか堂々と入ってきた訳?」


 「すいません、僕も謀られたっていうか、騙されたんです」


 現在、テラはマナの前に正座で謝っている。


 場所は脱衣所。もちろん二人とも服は着ている。


 「騙された?誰に?」


 「アルフレッドにです」


 「・・・・・・・・・はあっ、兄さんったらまだイタズラ癖が治ってなかったのね」


 マナは頭を押さえて溜息を吐く。


 どうやらアルフレッドはかなりのイタズラっ子でもある様だ。


 もう子供ではないけど。


 「まあ、考えてみれば私なんて覗く程の価値も無いか」


 その言葉から分かる通り、マナは自分に自信が無い。実際は世の女性達が羨む程のスタイルを誇っているのだが、残念な事に、彼女にそんな自覚は無いのだ。


 ・・・この時何故、こんな事を口走ったのか?それは無意識下でとある事実にマナが勘付いているからなのだが、それを二人とも知らない。


 「そんな事は無いよ!!」


 ぼそりとマナの呟いた言葉にテラは即座に否定する。


 突然立ち上がり、両肩をがしっと掴んできたテラに、マナは目を見開く。


 「マナは女性としてとても魅力的だよ!其処は僕が保証する!!」


 「っ!?え?あっ、でも・・・」


 「でもじゃないっ!君はとても美しい!!」


 マナは顔を真っ赤に染めてあうあうと呟くしか出来ない。


 その後、我に返ったテラはマナと共に顔を真っ赤にし、少しの間その場で悶絶するのであった。


 そして―――


 「どうなってんだ?これ」


 その光景をアルフレッドは呆然と見ているのだった。

さて、次回は王都の話になります。ではではっ。

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